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Bad×Endアンインストーラー  作者: Free Fly
アンインストール ~ターゲット『S・E』~
16/17

FOLDERー16 禿鬼当千


 明かりも少なく、作業時以外は手元すらも怪しい兵器庫の中には無数の兵器や装備がある。それらのほとんどは一部、あるいは全体が分解され、パーツごとに区切られてダンボールの中に収納されている。目に付くのは銃のフレーム部分であったり、大型の兵器などだけだ。


「‥‥メイ、無人兵器の出撃命令ってありましタッケ?」


 スパナや極細のドライバーなどの手入れをしていた美の耳に、馴染み深い男の声が届いた。いつもとは違ってふざけた雰囲気がない。やや硬めだ。


「‥‥出てない、わよね?」


「じゃあ、アレは何でショウ?」


 飛翔の指差す先には起動待機状態の無人兵器、ストロフィスが並んでいる。そしてその一角、軍隊のように整列していたそれらが、我先にと外へ溢れている。

 基本的に無人兵器は、指示が無ければ何の行動もしない。唯一の自発行動はエネルギー補給だけだ。その指示を出すのは、例外を除いて自分たちの役目だ。しかし、目の前には指示を出していないのに起動状態にあるストロフィス。それが示す意味は、


「お金の匂いがシマス」


「アホか!」


 真顔で言い放った飛翔をひっぱたくき、思考を巡らす。


「‥‥だからーバカになったらどうするんデス?」


「既にこれ以上ないくらいバカよ‥‥」


「‥‥‥おおっ!!そんなことよりもメイ!いいこと思いつきマシタ!ひっぱたいてくれたおかげデス!」


「え、ちょ、ちょっと‥‥」


 美の手を取った飛翔は近くにあった銃器やらを何個か持ち、唐突に走り出した。







「ふー、あっぶねー」


「お帰りー登闇くん。‥‥ところでさぁ、後ろのアレ、何かな?」


「ごーめんごめん‥‥‥ミスったみたい」


 輸送機周辺の地下格納庫が開き、そこから複数の黒い物体が飛び出した。黒一色に塗装された鉄塊はその球状の姿を変形させつつ、真っ直ぐとこちらに向かってきている。

 その様は、全長三メートルほどの蜘の大群のようだった。


「随分と素敵なお客様ねー」


「あははー笑えない冗談だー」


 ホントに笑えない。現状戦力での生存確率‥‥考える必要はないか。


「隊長ー、アレどうしますかー」


「取りあえず撒け、死ぬなよ!」


「「「了解!!」」」


 各々が得物を手にする。恐らく、この戦闘の主戦力は玲奈と雪丘だ。飛び道具を持たない三島と登闇は役に立たない。古馬などは論外だ。


「竹島さん!離陸準備頼みます!」


 アンチマテリアルライフルを組み立てる手を休めず、玲奈が叫んだ。


「もう始めてる!でも何処に?!」


「何処でもいい!離陸できなくてもいいからとにかくここを離れろ!」


 自分は自分にできることをする。戦闘に直接関与することはできないが、相手は機械だ。故に、打つ手はいくらでもある。


「美幸、あいつらの動きを止めてくれ」


「了解しました」


 酔いは消えたのか、いつもの無機質さを取り戻しつつある。


「‥‥」


 弓を大きく引き絞る。キリキリとした音はやがて小さくなり、止んだ。後、澄んだ弦音が響く。

 雪丘の持つ和弓から放たれた矢は減速することなく無人兵器の頭上に届き、散った。幾千の輝きとなったそれらは予測不能の動きで空中を這い、漆黒の鉄塊に突き刺さっていく


「今ので殲滅できたんじゃないっすか?」


 三島の言葉はすぐに覆される。蜘のような八足を貫かれた無人兵器の後ろから、更に数え切れないほどの無人兵器が湧き出てきた。しかも、先の無人兵器が全て破壊されたわけではない。


「‥‥メインシステムに侵入、ロジックパターン解析‥‥名称判別、I.L.L-8163-ストロフィス‥‥クラック開始‥‥‥共通指令サーバー、ダウン‥‥」


 無人兵器、ストロフィスが次々と活動を停止していく。だが‥‥


「‥‥!!‥‥メインシステム、ストロフィス共に復旧!‥指揮権が移っただと?!‥‥‥指令サーバーへ再度クラック‥‥ダウン‥‥」


 再びストロフィスの動きが止まる。だが結果は変わらない。クラック、サーバーダウン、指揮権移行‥の繰り返しだ。


「こいつら‥‥」


 いくら指令サーバーを潰しても、また別のところに移る‥‥全ての機を同時にダウンさせなければいくらでも復活してくるのだろう。


「玲奈、美幸、離陸までの時間を稼げ!こいつら、ダウンしない!」


 玲奈のM82A3が待ってましたとばかりに火を噴く。人間が受けたなら一溜まりもない威力をもったそれは、ストロフィスの頭部と思しき部分を吹き飛ばし、爆炎とともに複数機巻き込んだ。

 銃本体からは十二.七ミリ弾の大型薬莢が排出されるが、マズルブレーキから噴出されるはずの発砲煙は出ない。

 玲奈の構える本体の形状はオリジナルとやや異なり、無骨な印象を受ける。反動(リコイル)の小ささといい、噴出しない発砲煙といい、何か仕掛けが施されているようだ。


「じゃあ次、派手に行くわよ!」


 多目的弾頭RaufossMk211を装填した玲奈が引き金に手をかける。

 ‥‥ドゥン‥‥‥

 鈍い音を引き連れた弾丸が、機体付近を取り巻いていたストロフィスを貫いた。弾丸に対して高い減衰効力を持つ装甲をものともせず突き進む。

 高い貫通力を持った複合弾はそのまま三機を打ち抜き、四機目に到達した時点で大爆発を引き起こした。

 固定砲台と化した玲奈は機体を中心として更に排除行動を続ける。大技を使った雪丘が復帰するまでの防衛を一人で行わなければならない。


「玲奈ちゃーん、それ、Petersburg宣言‥だっけ?ちゃんと守ってるのかなぁ?」


「大丈夫、火薬量は規定通りです。魔術で火力の底上げをしているだけですよ」


「おい!喋ってるヒマなさそうだぞ!」


 残骸を掻き分けて来たストロフィスが、輸送機にワイヤーのようなものを飛ばして巻き付け、引き寄せた。同じことをする機が増え続け、瞬く間に輸送機の動きが止まった。


「クッソ!これ以上動けない!!」


「万事休す‥‥ですか?隊長?」


「大丈夫だよ。一応、応援を要請してあるから‥‥」


 雪丘に返したのは古馬だ。

 まさか、こんな早いタイミングで手札を切る羽目になろうとは思わなかったけど仕方ないね‥‥後で大佐にどやされるかもなぁ‥‥‥


「応援?そんな短時間で誰が‥‥」


「ふむ、いささか戦力不足ではないかな?」


 聞き覚えのある声が爆音と共に降ってきた。その声の出所はストロフィスを直撃し、無残な姿へと変えた。


「‥‥」


「隊長?俺の見間違いならいいんすけど、今大将降ってきませんでした?」


「‥‥安心しろ、俺にも見えた」


 あの人、ホントに人間かよ‥‥空から降ってきたぞ?冗談は顔だけにしてくれ。


「レールガンでの射出だとやはり着地点が定まらんな。速度は申し分ないのだが」


 禿頭に上半身裸という、暑苦しい出立ちの巨躯がクレーターから這い出てきた。武装は何一つ見当たらない。

 間違いなく、道真(みちざね)彰人(あきと)その人だ。


「‥‥大将、何しにきたんです?」


 安心ていいのか呆れていいのか、その下らない問いの答えが出る前に言葉は出た。


「うむ、ちょいとレールガンで飛んで来たのだ。ピンチなんだろ?」


 ツッコミどころ満載、否ツッコむところしかないがそこには触れるまい。言っても無駄だろうし‥‥


「何も大将直々に来ることないでしょう」


「何を言うか!我が輩以外に適任はいないぞ!」


 まあ確かに、レールガンで生身の人間打ち出して無事で居られるのはこの人ぐらいか‥‥‥


「確かに適任はあなたでしょうね‥‥それじゃ、頼みますよ」


「うむ、任せろ!」


 ハーフレイヴンで上位階級に付くには二つの方法がある。まず一つ、指揮能力やカリスマ性、特殊な能力等を持っていること。そしてもう一つは、


「ワイヤーが邪魔だな」


 常人を超越した、


「ふんっ!」


 圧倒的な強さである。


「金属製のワイヤー程度では、我が輩を止めることなどできぬ!」


 両の腕で輸送機に絡まっていたワイヤーをまとめて引きちぎり、それを自らに巻き付けて振り回す。獣が如く猛々しく、ただ単純に。

 引きずられ、巻き込まれるストロフィスは次第に増え、やがて鉄塊の暴風となる。


「ハッ!‥‥ホッ!‥‥」


 大将の腕の動きに合わせてストロフィスが宙を舞い、最後には軽く放られた。荒々しい勢いを保ったままのそれらは、後続の無人兵器をも巻き込み、そのほとんどが大破した。


「「「「‥‥」」」」


 まさに一瞬。


「これにて一件落着だ!ぬぁはははは!!」


 呆然とことの成り行きを見つめていた登闇たちを尻目に、大将は残った敵機を処理している。

 何度でも言ってやる‥‥冗談は顔だけにしろ、と。


「おくつろぎのところ申し訳ありませんが大将、後ろ見てください‥‥‥はぁ、何体いるんだよ‥‥」


 顔に疑問を浮かべた大将は振り返り、最初と変わらない表情で顔を戻した。


「あれが何か?」


「‥‥始末、お願いできますかね?」


「一食分で手を打とう」


 それって奢れってことだよな‥‥この人どのくらい食うんだろ。まあいいや。


「了解しました。請求は三島にどーぞ」


「えぇ!?俺っすか!」


「まあまあ、どうせ特別手当でがっぽり入るでしょ」


 確かに報酬はデカい。だが、それで大将の腹が満たせるかどうかは不明だ。


「殲滅戦と行くかぁ!」


 烈火のごとく飛び出し、増援らしき無人兵器に突っ込んだ。

 中には、先程のものとは別タイプが見られる。が、関係ないだろう。あの筋肉ダルマには銃器も刃物も効かないし‥‥


「あの人どんだけ食うと思う?」


「さあ?でもきっと、今回の報酬は飛ぶんじゃない?」


「ギター新調しようと思ってたのに‥‥」


「ぬぁはははは!!」


 三島の悲痛な呟きは、大将の笑い声よってかき消された。







「いやぁ、まさか我が輩ごと撃ってくるとは思わんかった。ハッハッハッ」


「対装甲弾やら鉄板ぶち抜く矢やらを食らって無傷何なんですから問題無しですよ」


 横になっていた人影が二つ、ピクリとしたが、この際無視して構わないだろう。


「大将、一つ聞きたいのですが宜しいですか?」


「うむ。構わん」


 登闇の真剣な雰囲気に気付いてか、表情が引き締まる。


「今回の任務、ハッキリ言って異常な点が見受けられます」


「‥‥ほぅ」


「まず、古馬の指示や作戦に穴が多過ぎた。それも普段ならしないミスばかり‥‥まるで‥‥」


「上から指示があったようだ、と‥‥」


「はい。その通りです」


「彼に聞いたらどうだ?」


「聞くだけ無駄というものでしょう。それよりもアナタの方が詳しそうですから」


「ふむ‥‥‥今回のは抜き打ち試験ってトコだな」


 やれやれと言わんばかりに首を振った大将は口にした。


「抜き打ち試験?どうしてまたそんなものを?」


 試験と言えば、シュミレーターを使った定期的な実力査定があるのだが、それでは全員並み以上の成績を修めている。

 シュミレーター試験はその人物に突出した力があるか否か、それを見極めるために行われるものだが、一般兵士にとっての訓練としても利用されている。登闇たちのような年少の兵にとっては、それが正規部隊に編入できる唯一の方法だ。


「最近お前たちが怠けているらしいからなぁ、我が輩と毅仁大佐が提案したのだ」


「‥‥雑用が増えたからだ!」


 と言えればどれほどスッキリするだろうか。絶対に言えないが‥‥


「そうですか‥‥」


「まあ、我が輩が手を出したとは言え、あれだけできれば十分だ!ぬぁはははは!!」


 あ、帰ったら真実に請求書頼まないと。三島宛てのやつ。







スイマセン、投稿が大幅に遅れました。

次話投稿は不明ですが、また間が空くかもしれません

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