表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bad×Endアンインストーラー  作者: Free Fly
アンインストール ~ターゲット『S・E』~
11/17

FOLDERー11 宴の中の喧騒

短くなってしまいましたが、修正版です。



「ずいぶんと遅かったねー」


「ん、チョイと野暮用でな」


 真っ先に顔を出した少女は、登闇を見るなり飛びついた。


「天恵、ようやく到着か」


 病棟から直ぐに来たらしい。まだ病院着の代わりに着ていた飾り気のない私服姿だった。


「ふふ、お腹減っちゃったからさぁ」


 登闇の周りをピョコピョコと飛び跳ねる天恵は上機嫌だ。病院のベッドから解放されて、自由に動けるのがよほど嬉しいのだろう。


「どーしてこう、俺の周りにはよく食う女が多いんだか」


「ふーん?登闇の回りにはそんなに女の子が多いのかなぁ~」


 冷やかすような声音の天恵は、目を細めた。


「‥‥それはそうと、顔合わせがあるから付いてきてくれ」


 パン!!!!

 天恵の発言を軽く聞き流した登闇は、そそくさとその場を離れようとした。だが、それを遮るように響いた発砲音に顔をしかめた。


「‥‥はぁ~、やっぱし待ってろ天恵」


「動くな、一登闇!動けばコイツを撃つ!」


 喧騒が割れ、ハーフレイヴンの軍服を着た男二人、女一人の計三人が顔を出した。先頭を行く女の手には猟銃と、人質であろう女性兵士が携帯していたハンドガン。両手に持ったそれらの一方は人質へと、もう一方は登闇へと向けられていた。

 女の斜め後ろに一人ずつ付いた男たちは、女と同じ猟銃を手に、周囲への牽制を行っている。一番厄介なのは先頭の女。所持している銃の形状からして、魔術を使用する可能性が高い。

 ‥‥ベッタベタの展開ですねーこれは‥‥


「お前ら、遠山拓人の仲間だろ?」


 大まかな分析を終えた登闇の鋭い声が飛ぶ。いくら何でも、一人で乗り込む可能性は低い。保険ぐらい用意していてもおかしくない。ただ、その保険が暴走するのは如何なもんかと思うがなぁ。


「黙れ!」


 登闇の言葉に全く耳を傾けない女は、人質を盾にジワジワと近づいてくる。この三人の腕と判断力は悪くないが、如何せんアホだな。

 直感的に動いている部分が大きいものの、訓練を積めば優秀な兵士に成長するだろう。それだけの者を仕込むんだ、遠山たちも生半可な覚悟で望んではいないようだ。


「動くな!動けば撃つと言った!」


 ポケットに手を伸ばした登闇に静止を促す声がかかる。だが登闇は止まらない。

 ‥‥目立たないよーに、目立たないよーに‥‥‥それは無理か。


「撃つんじゃないのか?」


 ポケットに手を入れたまま、互いの距離を縮める。


「撃てよ」


 更に距離は縮まる。


「撃て」


 言葉は強く、命令に。

 手を伸ばせば届く。だが、三人とも動かない。


「早くしろよ。それともさっきのは笑えないジョークか?」


 登闇は、手を上げると、指を、鳴らした。

 ドン!!!


「な!?」


 初弾とは明らかに異なった鈍い音。至近距離で放たれた猟銃の弾丸は、人質の頭部をスイカが潰れたような姿に変形させ、勢い良く吹き飛ばした。

 壁に激突した女性兵士の頭は大分変形していて、人相が全くわからない。


「体が、勝手に‥‥」


 取り残された体と、血まみれの自分を見て呆然と呟いた。強い力によって引きちぎられた首は、異様に皮が伸びている。そこからは鮮血が滴り、床に斑点模様を残していた。


「どうした?最初に言ってたじゃないか。動けば撃つ、って。それを実行しただけだろ。何を不思議がる?」


 登闇は歩みを止めない。やがて、接触するぐらい近くで、そっと声を漏らした。


「もしかして人殺したことなかった?腕はいいんだけどな~。何か足りないって思ってたんだよ」


「‥‥」


 玉のような汗を浮かべた男たちは微動だにしない。僅かに身じろぎをしたのは女だけ。


「一言で言うならそうだな‥‥狂気、だよ。それと、へっぴり腰はよくない、よ」


 女は全身の毛穴が開くのを感じた。コイツはヤバイ。いや、コイツらはヤバイ。

 軽く押された女は、為すすべもなく仰向けに倒れ、男たち共々気を失った。


「なっさけないねぇー」


 周囲の人間たちは何が起きたかわからなかった。何せ、『人質を取った三人組がひとしきり喋った後、いきなり気絶した』ようにしか見えなかったのだから。


「ハーイ、酔っ払いの寸劇はコレにて終了です。ありがとーございました」


「なーんだ、酔っ払いかぁ」


「ちぇー、つまんねぇのー」


 何事もなかったかのように場を収めた登闇は、人質の女性に何か囁くと天恵の待つ人混みに戻って行った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ