表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

【髑髏の歌】

作者: もろ
掲載日:2026/07/02

フッフフーン。


鼻歌が響く。


人気のない倉庫。


コンクリートの床には血が流れ、老人の遺体が横たわっていた。


その傍らで、アキラは機嫌良さそうに鼻歌を歌っている。




ギコギコ。


ノコギリが骨を断つ。


グチャ。


肉が裂ける。


解体される。




フッフフーン。


まるで家事でもしているかのようだった。




「相変わらず気味悪ぃな」


見張り役のケンジが顔をしかめる。


「仕事なんだから仕方ねぇだろ」


アキラは笑った。


「死体は放っとけば喋る。細かくすれば黙るんだよ」


そしてまた鼻歌を歌った。


フッフフーン。


その音が、ケンジは昔から嫌いだった。


 


――数か月後。


犯罪集団の金の分配で揉めた。


「俺の取り分が少ねぇだろ!」


ケンジに掴みかかるアキラ。


「解体しかしてねぇくせに、偉そうに言うな!」


怒号が飛ぶ。


殴り合いになる。


そして。


「殺せ」


誰かが言った。


皆が頷いた。


日頃から気に入らなかった。


気味が悪かった。


アキラなら消えても困らない。


 


――深夜。


山奥。


ドラム缶の中で炎が燃え上がる。




グジュ。


グジュグジュ。


肉の焼ける音。


脂が弾ける音。


黒煙が空へ昇る。


炎の中で筋肉が縮む。


アキラの遺体が、まるで動いているように見えた。




「うわっ」


タクヤが後ずさる。


「気持ち悪ぃ……」


「ただの収縮だ」


リーダー格のケンジが吐き捨てる。




――数時間後。


残った骨をドラム缶ごと埋めた。


誰も振り返らなかった。




――翌日の夜。


ケタケタケタ。


笑い声のような音が聞こえた。


「……なんだ?」


ケンジは顔を上げる。


誰もいない。


だが。


ケタケタケタ。


また聞こえる。


音のする方を見る。


そして凍り付いた。


 


そこに頭蓋骨があった。


机に置かれている。


空洞の眼窩。


剥き出しの歯。


そして――




フッフフーン。


歌っていた。


アキラの鼻歌だった。




ケタケタケタ。


フッフフーン。


ケタケタケタ。




気味が悪い。


だが。


同時に面白かった。




ケンジは動画を撮影した。


SNSへ投稿する。




その日のうちに数万再生。


翌日には数十万。




【髑髏の歌】


ケタケタケタ。


フッフフーン。


本物か偽物か。


コメント欄は大騒ぎになった。




ケンジとタクヤは笑いが止まらなかった。


「金になるぞ」


二人は企んだ。




――三日後。


動画配信者のダイスケとユウタを雇う。


仕事内容は単純。


歌う髑髏を持って全国を回るだけ。


報酬も悪くない。


若い二人は喜んで引き受けた。




ケタケタケタ。


フッフフーン。


歌う髑髏は大人気になった。




イベント会場。


商業施設。


怪談フェス。


どこへ行っても人だかりができた。




――二ヶ月後。


ついにテレビ局から出演依頼が来る。


生放送。


全国ネット。




司会者が笑顔で紹介した。


「本日は話題の歌う髑髏に来ていただきました!」


拍手。


歓声。


カメラが向く。


だが。


髑髏は歌わなかった。


静寂。


スタジオが凍り付く。




ダイスケが焦る。


「お、おい」


ユウタも青ざめる。


「いつも歌うのに……」


その時だった。


カタ。


髑髏の顎が動く。




ケタケタケタ。


笑った。


そして――


歌い始めた。




「俺はケンジに殺された~♪」


スタジオが静まり返る。


「タクヤも一緒に俺を埋めた~♪」




司会者の笑顔が消える。




「俺たちは犯罪集団~♪ 人殺し~♪」


ケタケタケタ。




「三人埋めた~♪」


「二人沈めた~♪」


「六人解体した~♪」


ケタケタケタ。


フッフフーン。




観客がざわめく。


生放送は続いている。


全国へ流れている。


ダイスケとユウタは呆然としていた。


何も知らない。


本当に何も知らなかった。




――警察署。


テレビを見ていた刑事が立ち上がった。


「……まさか」


未解決事件。


行方不明者。


歌の内容と一致する。




捜査が始まった。


髑髏は証拠品として警察に保管された。


それでも。




ケタケタケタ。


フッフフーン。


歌は止まらない。




ケンジが逃げれば。


「今は大阪~♪」




タクヤが隠れれば。


「港の倉庫にいるぞ~♪」




ケタケタケタ。


フッフフーン。


逃げ場はなかった。


二人は逮捕された。




髑髏は裁判でも歌った。


犯罪を白日の元に曝す歌。




――刑務所。


ある夜。


ケンジは目を覚ました。


髑髏はない。


ここは独房だ。


それなのに。


耳元で。




ケタケタケタ。


フッフフーン。


ケタケタケタ。




「やめろ……」




フッフフーン。




「やめてくれ……」




鼻歌は止まらない。


昼も。


夜も。


眠っても。


起きても。


ずっと。


ずっと。




ケタケタケタ。


フッフフーン。




ついにケンジは箸を握った。


隣の独房ではタクヤも同じことをしていた。




二人は同時に叫ぶ。




「もう聞きたくねぇ!!」




ザグッ!


箸が耳を貫いた。


鼓膜が破れる。




ブシュ――


血が流れる。




世界から音が消える。


二人は安堵した。


これで終わった。


そう思った。




だが――


闇の中で。


頭の中で。


それでも聞こえた。




そして――


別の声が混じった。



 

『わしは~ お前らに殺された老人~♪』

 

ケタケタケタ。

 

『私は~ あなたたちに埋められた女~♪』


ケタケタケタ。



 

また別の声。

 

『俺は海の底~♪』

 

『私は山の中~♪』

 

『俺は豚の餌~♪』

 

ケタケタケタ。



 

歌声は増えていく。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

十人。

 

何十人も。

 

もう誰の声なのか分からない。


笑い声。


鼻歌。


恨み言。


助けを求める声。


それらは混ざり合い、いつまでも脳内に響いていた。




ケタケタケタ――


フッフフーン――


ケタケタケタ――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ