砂漠の恐怖
大量殺人犯・爆弾魔として指名手配されている俺は、ついに砂漠へやってきた。
俺の嫌いな水から、もっとも離れた砂漠で、俺は満足しながらも死ぬことができると思っていた……
幼い時には、怖いものなんか何もなかった。
いや、怖いものだと知らなかったし、知りたくもなかったんだろう。
今じゃ、海水や淡水問わず、俺は水が一番怖い。
ここは何処か?
砂漠さ。
水というものから一番離れた土地と言うなら、やはり砂漠だろう。
俺の持つ水筒だけが、水という概念を持つ。
腹は減り、喉は乾いているが、今の俺に怖いものはない。
命というものが軽い、砂漠という土地ではあるが、俺にとっちゃ天国だ。
水から逃げて、逃げて逃げて逃げ出して、今、俺はここにいる。
「まあ、ここまで来りゃ、幻影も幻聴も何もない暮らしができそうだ……ははは、幽霊だって?呪いだって?こんな砂だらけの土地に、そんなもの、あるものか!」
水筒の残りをゴクンと飲み干し、俺は歩き出す。
さて、俺の残り時間はどれだけある?
しかし、悪夢に苛まれる時だけは、これで永久に無くなった。
「ざまーみろい!爆弾魔?大量虐殺犯?そんな事知るか!俺の死ぬときは、俺が決める!」
そういう俺の踏み出した足が、不意に沈み込む。
抜こうとしても、抜けない……
数分後、俺の体は砂の中。
呼吸困難で死ぬかと思ったが、なかなか死ねないようで……
俺の体は、なおも砂の中へ沈んでいく。
しばらくして気がつくと(気絶してたようだ)俺の体が半分、砂から抜け出している。
数分後、数mの高さから落ちると、そこは……
「ここは……砂漠の地下にあるって言われる幻の湖、地中胡?」
水がある、たすか……違う!
【おまえも こい。いっしょに こい……】
「いやだ!いやだ!嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダァァァ!」
俺は真っ黒い水の中へと引きずられていく……
幼少期、夏キャンプに家族で行って、俺は無謀にもボートかは湖の中へ飛び込んだ。
泳げもしないのに、俺は無敵だと自分勝手に思い込んでいた。
助けに来てくれた父親に、俺は無我夢中でしがみつき、父親は身動きが取れず……
気がついたら、父親はしがみついた俺のせいで水死。
俺は逆に、同時期に助けに飛び込んだ消防団員に助けられていた。
あの声が、また耳に……
ああ、父さんの声だったのかぁ……