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「ルドース、アカストネロス同盟軍は、なぜこんなにも強いのでしょう? シエル王。あなたはどう思っていますか?」と馬車の中で、ずっとじっとしていたアクアムがシエルを見て言った。
鋭い眼光だ。さすがは世界一ともいわれるだけのアイギスの天才剣士だとシエルは思った。
「うーん。難しいな。もちろん、いろいろと向こうも準備をして、戦争を始めたんだとは思うんだけど、じっさいのところはよくわからない。ルドース王のフィスカが歴史的にも最高クラスの天才的な軍人だから、ということくらいしか私にはわからないな。それに、そんことなら、私よりもずっとセラムのほうが詳しいだろう。なにせ、ルドースの王家の人間なんだから」と言って、シエルはセラムを見る。
「僕も、本当のところはよくはわかりません。国のことは兄がすべてをおこなっていました。でも、兄のところには、多くの人が集まっていました。才能のあるものたちが。おそらく、兄が密かに声をかけていたのでしょう。その中でもアルカンノースは群を抜いて、強い存在感を発揮していました。実際にアルカンノースは兄、フィスカの右腕となっているのだと思います」とセラムは言った。
「アルカンノース。あいつのせいで、私たちの国は。……」とぎゅっとくちびるをかみしめて、フィナは言った。
南の世界にある巨大な砂の海の海辺にある魔法国家ラタ。
その魔法国家ラタから国際的に指名手配されている、禁忌ともよばれる禁呪に手を出した、ラタ史上最高の大天才ともいわれる黒衣の大魔法使い。それがアルカンノース・タウラスだった。
アイギス王国を攻めたルドース軍を直接、指揮していたのは、そのアルカンノースだった。そして今も、アルカンノースはアイギス王国の占領軍のトップとして、アイギスの地をおさめていた。