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「それではやはり、みなさんは『塔』までいかれるのですね」とファミルは言った。
美しい黒い瞳と美しい肩までの黒髪をしている王女ファミルは、じっとセラムを見ている。
「はい。塔にいって、そこで、パール女帝に謁見したいと思っています。そこで正式にエルドラド帝国の騎士として、僕はルドースと戦います」とセラムは言った。
塔とは、エルドラド帝国の中央に位置している、超巨大な建造物であり、また世界最大の工業力と人口をもつ都市だった。(帝都よりも大きい巨大都市だった)
南のオルドラド帝国と戦争をしているときから、ずっとエルドラド帝国の、いや、北の世界の連合軍の中心都市であった場所だ。(言ってみればこの世界に二つある世界の真ん中の一つだった)
ルドース、アカストネロス連合軍の奇襲によって、帝都は陥落してしまったため、 エルドラド帝国の帝位を継いだ、パール女帝は塔にいた。
そこでパール女帝はルドース、アカストネロス連合軍と戦っている。
ファミルはセラムのまっすぐな青色の瞳を覗き込むようにしてみている。
「祖国と戦うというのですね。セラム」
「祖国を開放したいんです。兄、ファイスの主張は間違っています。戦争ではなにも解決はしません。ただ犠牲を生むだけです」とセラムは言った。
アイルロシエの若き王であるシエルはセラムの言葉を聞いて、若くて、純粋な主張であると思った。いってしまえば、子供の主張だ。だけど、そのことを指摘しても、議論になるだけなので、シエルは黙っていて、にやっと笑っただけだった。
「ファミル王女。私も、アクアムもセラムと一緒に塔へ行きます。アイギスを必ず開放して見せます」と強い瞳をして、フィナは言った。