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逃げた神々と迎撃魔王シリーズ 

ルーネのぼうけんたん 〜 まほんのせかいを歩こう 〜

作者: モモル24号
掲載日:2025/01/12


 ルーネはアルラウネのお姫(ひめ)さまなんだよ。錬生術師(れんきんじゅつし)カルミアと、鉱石細工師(ドヴェルガー)ノヴェルのつくった田園の魔本(エデン)の森(もり)のなかで、マンドラゴラのこどもたちと楽(たの)しく暮(く)らしているの。


 アルラウネやマンドラゴラはお花(はな)の妖精(ようせい)のお仲間(なかま)なんだよ。ルーネはマンドラゴラの子供(こども)たちに囲(かこ)まれて、みんなでなかよくたのしく、お歌(うた)をうたって踊(おど)るのが大好(だいす)き。



 悪(わる)いおっきな邪竜(じゃりゅう)さんを魔王(まおう)さまや、アストやカルミアがやっつけてくれたから、ルーネの暮(く)らす森(もり)も安心(あんしん)になったんだよ。


 アストはね、女(おんな)の子(こ)なのに強(つよ)くて、偉(えら)いんだよ。カルミアと仲良(なかよ)しでいつもいっしょなんだ。


 カルミアはね、錬生術師(れんきんじゅつし)だから、素材(そざい)と魔力(まりょく)があればなんでもつくれるんだよ。でも筋力(きんりょく)がないから、重(おも)たいものが運(はこ)べなくていっつもゼーゼーしてるの。


 ルーネが運(はこ)ぶのをいつも手伝(てつ)だってあげるんだ。ルーネはね、カルミアが大好(だいす)きだから、喜(よろこ)んでくれると嬉(うれ)しいの。


 今日(きょう)はね、みんなで森(もり)の探検(たんけん)に行(い)くことになった。魔王(まおう)さまが魔本(まほん)に魔力(まりょく)を使(つか)ったんだって。


 だからカルミアが、霊樹(れいじゅ)を新(あた)らしく植(う)えるから候補地(こうほち)を探(さが)してってお願(ねが)いされたんだよ。


 調査(ちょうさ)しないと魔力(まりょく)だまりから魔物(まもの)が出(で)てきて危険(きけん)なんだって。カルミアのためにルーネは役(やく)に立(た)ちたい。だから頑張(がんば)って候補地(こうほち)を見(み)つけるね!



「‥‥ブリオネ、ラゴラ戦隊(せんたい)を集(あつ)めてね」


 カルミアが作(つく)ってくれた手乗り人形(タイニー・ドール)戦隊(せんたい)を率(ひき)いるブリオネはルーネの友達(ともだち)で、お花(はな)の妖精(ようせい)さんなんだよ。ルーネの呼(よ)んだマンドラゴラの子供(こども)たちといっしょに戦(たた)ってくれるんだよ。


「私(わたし)もついていくよ」


 ドライアドのドローラも小枝人型(ツウィッグ・タイプ)の姿(すがた)でいっしょに来(き)てくれることになったんだ。


「みんなそろったのかね。ならば僕(ぼく)について来(き)たまえ」


 みんなが集(あつ)まると、手乗り人形(タイニー・ドール)と同(おな)じ大(おお)きさになったアストがやって来(き)た。


「アストも行(い)くの? カルミアに怒(おこ)られないの?」


 アストが偉(えら)い女王様(じょうおうさま)になったから、忙(いそ)がしくてネコの手(て)も借(か)りたいと、猫人(バステト)まで働(はた)らかせようとしていたのに、いいのかな。


「忙(いそ)がしいのはカルミアだけだからよいのだよ」


 アストがそういうならいいや。ラゴラ戦隊(せんたい)のマンドラゴラの子供(こども)たちを先頭(せんとう)に、ルーネたちは森(もり)への冒険(ぼうけん)をはじめた。


「ルーネ、みて。アカネシアンの花(はな)があるよ」


「へへん、こっちはリュウガソウみつけたもんね」


 楽(たの)しそうなマンドラゴラの子供(こども)たち。危険(きけん)な調査(ちょうさ)なんだよってルーネが教(おし)えてあげたのに、忘(わす)れちゃったみたい。



「ギュワワラァァァ────!!」

「ギャラアァァァァァァ!!!!」

 

 森猪(ウッド・ボア)が突進(とっしん)して来(き)て、大騒(おおさわ)ぎになった。もう、だから言(い)ったのにぃ。ラゴラたちはおっちょこちょいで、すぐに調子(ちょうし)に乗(の)るの。


「ふむ。身体(からだ)を小(ちい)さくすることで、猪一頭(いのししいっとう)狩(か)るのも大事(おおごと)だな」


 アストがひとりだけ楽(たの)しそうにつぶやく。アストはわざわざルーネたちと同(おな)じ小(ちい)さな身体(からだ)にしなくてもよかったと思(おも)う。


 ────バンッ!


 森猪(ウッド・ボア)に踏(ふ)み潰(つぶ)されまいと、必死(ひっし)なマンドラゴラの間(あいだ)から、アストが魔銃(まじゅう)で猪(いのしし)の頭(あたま)を撃(う)ち抜(ぬ)いた。


「か、カッコいい〜〜」


 ブリオネがルーネに抱(だ)きついて喜(よろこ)ぶ。ルーネは知(し)ってたよ。アストは普段(ふだん)はパンツ一枚(いちまい)でウロウロして怒(おこ)られる変態(へんたい)さんだけど、戦(たた)かう時(とき)はカッコいいんだよ。


「ルーネ、君(きみ)の魔法(まほう)の歌(うた)でラゴラたちを安心(あんしん)させてやりたまえ」


 プルプル震(ふる)えるラゴラたち。怖(こわ)いめにあって泣(な)いていた。


「わかった。ブリオネとドローラも一緒(いっしょ)にね」


 ようし、歌(うた)うよ〜。



 ゆうきをだしてワッハハーーー


 ラゴラはつよいこどもたち


 アストのためにたたかうぞ



 ルーネたちが勇気(ゆうき)の出(で)る歌(うた)でラゴラたちを励(はげ)ます。


「ピギィィィィやるよ」

「ルーネ、ありがとー」


 マンドラゴラの子供(こども)たちは、ルーネにお礼(れい)を口(くち)にした。元気(げんき)になってよかったよ。探検(たんけん)を再開(さいかい)する。


 枯れ蛇(ウィザースネイク)や、山(やま)リスや、はぐれ狼(おおかみ)がルーネたち小(ちい)さな冒険者(ぼうけんしゃ)の前(まえ)に現(あらわ)られても、ルーネとブリオネのラゴラ戦隊(せんたい)はアストとドローラを守(まも)るように囲(かこ)み、今度(こんど)は逃(に)げなかったよ。


「やるじゃないか、ルーネたちも」


 アストは耳(みみ)あてを通(とお)しても聞(き)こえるマンドラゴラの金切(かなき)り歌唱(ソング)に、心(こころ)を踊(おど)らせた。ルーネたちは平気(へいき)なんだ。人(ひと)の耳(みみ)には、ラゴラたちの声(こえ)はうるさく聞(き)こえるんだって。


 マンドラゴラの合唱(がっしょう)は人(ひと)には恐怖(きょうふ)や混乱(こんらん)をもたらす力(ちから)が働(はたら)くんだよ。いつもカルミアの呪詛(じゅそ)のような独り言(ひとりごと)を耳元(みみもと)で聞(き)かされているので、アストは普通(ふつう)の人(ひと)より耐性(たいせい)が高(たか)いんだって。アストは凄(すご)いね。


 岩熊(ロックベア)など、ルーネたちの十倍以上(じゅうばいいじょう)あるってアストが教(おし)えてくれた。得意(とくい)の魔法(まほう)の歌(うた)で動(うご)きを鈍(にぶ)らせて、吠(ほ)え声(こえ)を封(ふう)じてやっつけた。へへっ、ルーネも頑張(がんば)ったよ。


「魔物(まもの)が増(ふ)えたようだ。ドローラ、魔力溜(まりょくだま)りの一番(いちばん)強(つよ)いのはどこだい」


 みんなも頑張(がんば)ってくれたけれど、ラゴラの子供(こども)たちはさすがにヘトヘトになって、しなびてきている。魔晶石(ましょうせき)と肥料(ひりょう)を混(ま)ぜたおやつをあげると、また元気(げんき)になったよ。



「‥‥ありました。見(み)て下(くだ)さい、あの美(うつ)くしい泉(いずみ)を」


 ドローラが指(さ)し示(しめ)した水辺(みずべ)にはルーネにもわかるくらいの魔力(まりょく)が集(あつ)まっていて、鳥喰い(バードイーター)と呼(よ)ばれる巨大な蜘蛛(きょだいなくも)がまどろんでいた。


「どうしよう。あいつはぼくらの歌(うた)が効(き)かないよー」


「熊(くま)のように力持(ちからも)ちで、狼(おおかみ)より速(はや)いんだよー」


 勇気(ゆうき)をふりしぼって踏(ふ)みとどまるラゴラたち。何体(なんたい)もの仲間(なかま)たちが、鳥喰い(バードイーター)には何株(なんかぶ)もやられていたから怖(こわ)いんだ。



「ウギャーーー!!」

「キュピーーー!!」



「みんな逃(に)げちゃ駄目(だめ)ー。あいつはバラバラになったところを狙(ねら)ってくるよ!」


 ルーネの叫(さけ)びも虚(むな)しく、天敵(てんてき)に怯(おび)えてラゴラたちは散(ち)り散(ぢ)に走(はし)りだしてしまう。鳥喰い(バードイーター)はネバネバする糸(いと)を吐(は)きだして、マンドラゴラたちはあっさりと捕食(ほしょく)されてしまった。


 マンドラゴラの断末魔(だんまつま)の悲鳴(ひめい)も巨大な蜘蛛(きょだいなくも)には効(き)いていない。


「うぅ、みんな⋯⋯」


 ようやく戦士(せんし)として戦(たたか)えるくらいに育(そだ)ったマンドラゴラたちが全滅(ぜんめつ)し、ルーネは悲(かな)しくてしかたなかった。


 ルーネはアルラウネのお姫(ひめ)さま。だから魔力(まりょく)が尽(つ)きるまで、何度(なんど)だってマンドラゴラの子供(こども)たちを呼(よ)べる。


 でも⋯⋯大事(たいじ)に育(そだ)てたラゴラたちが、目(め)の前(まえ)で簡単(かんたん)に喰(く)われて悲(かな)しくないはずがないよ。


 みんなルーネには、大切(たいせつ)な仲間(なかま)だから。いずれカルミアに素材(そざい)としてその身(み)を捧(ささ)げることになるとしても、ルーネは悲(かな)しい気持(きも)ちを忘(わす)れない。


「カルミアが諸悪(しょあく)の根源(こんげん)のように聞(き)こえるのは否定(ひてい)しないが⋯⋯ルーネ、君(きみ)は彼女(カルミア)と約束(やくそく)したのだろう」


「‥‥うん。ルーネを助(たす)けてくれたカルミアのために、ルーネは役(やく)に立(た)ちたい」


「ならば引受(ひきう)けた仕事(しごと)を果(は)たしてみせたまえ」


 アストが泣(な)きじゃくるルーネの頭(あたま)をなでてくれた。アストは女王(じょうおう)さまだから、上(うえ)に立(た)つものの責務(せきむ)に詳(くわ)しい。ルーネにはよくわからない。でもアストが、ルーネのために厳(きび)しいことを言(い)ってるのはわかるよ。


 ラゴラたちを齧(かじ)って回(まわ)った鳥喰い(バードイーター)は、ルーネたちに狙(ねら)いを変(か)えてきた。


 鳥喰い(バードイーター)の飛(と)ばす糸(いと)は、ルーネとドローラの蔦(つた)の魔法(まほう)で防(ふせ)ぐ。ネバネバ糸(いと)はルーネたちにひっついて絡(から)めようとするのだ。


 しかしルーネたちの蔦(つた)は、魔力(まりょく)を使(つか)ってもっと上手(うま)く捕(つか)まえるんだからね。


 蔦(つた)を自由自在(じゆうじざい)に動(うご)かし、さらに魔力(まりょく)をこめれば枝葉(えだは)をのばし、刃(やいば)のように切(き)りつけ、槍(やり)のように貫(つらぬ)くことも出来(でき)るんだから。


「ブリオネ!!」


 ラゴラたちを失(うし)なって悲(かな)しんでいたブリオネが、蔦(つた)に絡(から)まり動(うご)きの鈍(にぶ)った巨大な蜘蛛(きょだいなくも)に麻痺花(マヒバナ)を咲(さ)かせてくれた。


「泣(な)きべそかきながら、よくやったよルーネ。トドメは僕(ぼく)に任(まか)せたまえ」


 蔦(つた)と麻痺(まひ)で動けなくなった蜘蛛(くも)の頭(あたま)をアストは撃(う)ち抜(ぬ)いた。強力(きょうりょく)な魔法(まほう)のこめられた弾(たま)で鳥喰い(バードイーター)は動(うご)かなくなったよ。


「ルーネ、ブリオネ、ドローラ。蜘蛛(くも)の魔晶石(ましょうせき)を取(と)り出(だ)して、この霊樹(れいじゅ)の種(たね)と泉(いずみ)の先(さき)の丘(おか)に埋(う)めるんだ。カルミアには僕(ぼく)から伝(つた)えておく」


「うん」


 アストはルーネの身体(からだ)ほどの大(おお)きな種(たね)を渡(わた)してきた。候補地(こうほち)をみつけるのが仕事(しごと)。アストもカルミアから霊樹(れいじゅ)を植(う)える候補地(こうほち)に種(たね)を植(う)えるように頼(たの)まれていたみたい。


「魔晶石(ましょうせき)がなくとも充分(じゅうぶん)育(そだ)ちそうだな」


 アストはそう言(い)いながら、喰(く)い散(ち)らかされたマンドラゴラたちの亡骸(なきがら)を集(あつ)めてまわっていた。




「ただいま、カルミア」


「おかえり、ルーネ。霊樹(れいじゅ)の候補地(こうほち)見(み)つけて植(う)えてきてくれてありがとうね」


「うん。でもラゴラたちみんな大(お)っきな蜘蛛(くも)にやられちゃったの」


「そう、それは残念(ざんねん)ね。でもルーネや先輩(アスト)を守(まも)って立派(りっぱ)だったと思(おも)うわよ」


 カルミアがアストと同(おな)じようにルーネの頭(あたま)を優(やさ)しく撫(な)でて、みんなを褒(ほ)めてくれた。


「ドローラ。ヒュエギアと代(か)わってルーネとブリオネと今日(きょう)は休(やす)みなさいな」


 元(もと)のサイズに戻(もど)ったドローラに連(つ)れられて、ルーネの冒険(ぼうけん)はなんとか終了(しゅうりょう)したよ。





 ────ルーネがブリオネたちと休(やす)んだあと、カルミアに促(うなが)されて、アストがマンドラゴラたちの遺骸(いがい)を手渡(てわた)した。


「僕(ぼく)が言(い)うのもなんだが、ルーネを泣(な)かせてまで得(え)たいものなのかね、ソレは」


「えぇ。見(み)てよ、先輩(せんぱい)。この苦悶(くめん)と絶望(ぜつぼう)に満(み)ちた表情(ひょうじょう)。素材(そざい)の効果(こうか)がね、断然違(だんぜんちが)うのよ」


 狂った錬生術師(マッドアルケミスト)と異名(いみょう)があるだけあって、なかなかエグい採取方法(さいしゅほうほう)を行(おこな)う。


「最高(さいこう)の素材(そざい)を得(え)るためだもの。ルーネの涙の結晶(アルラウネのなみだ)まで手(て)に入(はい)るのよ?」


 ルーネの好奇心(こうきしん)や探検心(たんけんしん)を利用(りよう)して、マンドラゴラを追(お)いつめた犯人(はんにん)はカルミアだった。魔物(まもの)を放(はな)ってお膳立(ぜんだ)てしたのも彼女(かのじょ)の仕業(しわざ)だったのだ。


「ルーネの宿主(やどぬし)は君(きみ)だからな。くびり殺(ころ)されて僕(ぼく)の大切(たいせつ)な護衛(ごえい)がいなくならないように気(き)をつけたまえよ」


「ルーネは幼(おさな)くみえても、賢(かしこ)いから平気(へいき)よ。それに⋯⋯次(つぎ)はもっとうまくやるわよ」


 良(よ)くも悪(わる)くもルーネはカルミアやアストの仲間(なかま)だということだ。カルミアの仲間(なかま)は、素材提供(そざいていきょう)のために酷い目(ひどいめ)に遭(あ)い、泣(な)かされてきた。


 ルーネの初(はじ)めての冒険(ぼうけん)は、宿主(やどぬし)のカルミアにとっては大成功(だいせいこう)だったようだ。

 お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
最後の最後で……。 まあ、こういうこともありますよねー。
2025/01/30 11:06 退会済み
管理
 大切な人のため頑張る姿は健気で。  困難に仲間とともに立ち向かう姿勢は周りにと勇気を与えてくれるものですね。  一方での畜産業のような切なさと割り切りは、ラストのカルミアの言葉通り、容姿や思考を超…
亡骸を手厚く葬ってくれるのかと思いきや…… ダークな真実。 こういう童話もアリだと思います! 世界観がとっても面白かったです(*^^*) 全部のキャラを絵で見てみたいなと思いました。 (ダメだ……完…
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