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逃げた神々と迎撃魔王シリーズ 

ルーネのぼうけんたん 〜 まほんのせかいを歩こう 〜

作者: モモル24号


 ルーネはアルラウネのお(ひめ)さまなんだよ。錬生術師(れんきんじゅつし)カルミアと、鉱石細工師(ドヴェルガー)ノヴェルのつくった田園の魔本(エデン)(もり)のなかで、マンドラゴラのこどもたちと(たの)しく()らしているの。


 アルラウネやマンドラゴラはお(はな)妖精(ようせい)のお仲間(なかま)なんだよ。ルーネはマンドラゴラの子供(こども)たちに(かこ)まれて、みんなでなかよくたのしく、お(うた)をうたって(おど)るのが大好(だいす)き。



 (わる)いおっきな邪竜(じゃりゅう)さんを魔王(まおう)さまや、アストやカルミアがやっつけてくれたから、ルーネの()らす(もり)安心(あんしん)になったんだよ。


 アストはね、(おんな)()なのに(つよ)くて、(えら)いんだよ。カルミアと仲良(なかよ)しでいつもいっしょなんだ。


 カルミアはね、錬生術師(れんきんじゅつし)だから、素材(そざい)魔力(まりょく)があればなんでもつくれるんだよ。でも筋力(きんりょく)がないから、(おも)たいものが(はこ)べなくていっつもゼーゼーしてるの。


 ルーネが(はこ)ぶのをいつも手伝(てつ)だってあげるんだ。ルーネはね、カルミアが大好(だいす)きだから、(よろこ)んでくれると(うれ)しいの。


 今日(きょう)はね、みんなで(もり)探検(たんけん)()くことになった。魔王(まおう)さまが魔本(まほん)魔力(まりょく)使(つか)ったんだって。


 だからカルミアが、霊樹(れいじゅ)(あた)らしく()えるから候補地(こうほち)(さが)してってお(ねが)いされたんだよ。


 調査(ちょうさ)しないと魔力(まりょく)だまりから魔物(まもの)()てきて危険(きけん)なんだって。カルミアのためにルーネは(やく)()ちたい。だから頑張(がんば)って候補地(こうほち)()つけるね!



「‥‥ブリオネ、ラゴラ戦隊(せんたい)(あつ)めてね」


 カルミアが(つく)ってくれた手乗り人形(タイニー・ドール)戦隊(せんたい)(ひき)いるブリオネはルーネの友達(ともだち)で、お(はな)妖精(ようせい)さんなんだよ。ルーネの()んだマンドラゴラの子供(こども)たちといっしょに(たた)ってくれるんだよ。


(わたし)もついていくよ」


 ドライアドのドローラも小枝人型(ツウィッグ・タイプ)姿(すがた)でいっしょに()てくれることになったんだ。


「みんなそろったのかね。ならば(ぼく)について()たまえ」


 みんなが(あつ)まると、手乗り人形(タイニー・ドール)(おな)(おお)きさになったアストがやって()た。


「アストも()くの? カルミアに(おこ)られないの?」


 アストが(えら)女王様(じょうおうさま)になったから、(いそ)がしくてネコの()()りたいと、猫人(バステト)まで(はた)らかせようとしていたのに、いいのかな。


(いそ)がしいのはカルミアだけだからよいのだよ」


 アストがそういうならいいや。ラゴラ戦隊(せんたい)のマンドラゴラの子供(こども)たちを先頭(せんとう)に、ルーネたちは(もり)への冒険(ぼうけん)をはじめた。


「ルーネ、みて。アカネシアンの(はな)があるよ」


「へへん、こっちはリュウガソウみつけたもんね」


 (たの)しそうなマンドラゴラの子供(こども)たち。危険(きけん)調査(ちょうさ)なんだよってルーネが(おし)えてあげたのに、(わす)れちゃったみたい。



「ギュワワラァァァ────!!」

「ギャラアァァァァァァ!!!!」

 

 森猪(ウッド・ボア)突進(とっしん)して()て、大騒(おおさわ)ぎになった。もう、だから()ったのにぃ。ラゴラたちはおっちょこちょいで、すぐに調子(ちょうし)()るの。


「ふむ。身体(からだ)(ちい)さくすることで、猪一頭(いのししいっとう)()るのも大事(おおごと)だな」


 アストがひとりだけ(たの)しそうにつぶやく。アストはわざわざルーネたちと(おな)(ちい)さな身体(からだ)にしなくてもよかったと(おも)う。


 ────バンッ!


 森猪(ウッド・ボア)()(つぶ)されまいと、必死(ひっし)なマンドラゴラの(あいだ)から、アストが魔銃(まじゅう)(いのしし)(あたま)()()いた。


「か、カッコいい〜〜」


 ブリオネがルーネに()きついて(よろこ)ぶ。ルーネは()ってたよ。アストは普段(ふだん)はパンツ一枚(いちまい)でウロウロして(おこ)られる変態(へんたい)さんだけど、(たた)かう(とき)はカッコいいんだよ。


「ルーネ、(きみ)魔法(まほう)(うた)でラゴラたちを安心(あんしん)させてやりたまえ」


 プルプル(ふる)えるラゴラたち。(こわ)いめにあって()いていた。


「わかった。ブリオネとドローラも一緒(いっしょ)にね」


 ようし、(うた)うよ〜。



 ゆうきをだしてワッハハーーー


 ラゴラはつよいこどもたち


 アストのためにたたかうぞ



 ルーネたちが勇気(ゆうき)()(うた)でラゴラたちを(はげ)ます。


「ピギィィィィやるよ」

「ルーネ、ありがとー」


 マンドラゴラの子供(こども)たちは、ルーネにお(れい)(くち)にした。元気(げんき)になってよかったよ。探検(たんけん)再開(さいかい)する。


 枯れ蛇(ウィザースネイク)や、(やま)リスや、はぐれ(おおかみ)がルーネたち(ちい)さな冒険者(ぼうけんしゃ)(まえ)(あらわ)られても、ルーネとブリオネのラゴラ戦隊(せんたい)はアストとドローラを(まも)るように(かこ)み、今度(こんど)()げなかったよ。


「やるじゃないか、ルーネたちも」


 アストは(みみ)あてを(とお)しても()こえるマンドラゴラの金切(かなき)歌唱(ソング)に、(こころ)(おど)らせた。ルーネたちは平気(へいき)なんだ。(ひと)(みみ)には、ラゴラたちの(こえ)はうるさく()こえるんだって。


 マンドラゴラの合唱(がっしょう)(ひと)には恐怖(きょうふ)混乱(こんらん)をもたらす(ちから)(はたら)くんだよ。いつもカルミアの呪詛(じゅそ)のような独り言(ひとりごと)耳元(みみもと)()かされているので、アストは普通(ふつう)(ひと)より耐性(たいせい)(たか)いんだって。アストは(すご)いね。


 岩熊(ロックベア)など、ルーネたちの十倍以上(じゅうばいいじょう)あるってアストが(おし)えてくれた。得意(とくい)魔法(まほう)(うた)(うご)きを(にぶ)らせて、()(こえ)(ふう)じてやっつけた。へへっ、ルーネも頑張(がんば)ったよ。


魔物(まもの)()えたようだ。ドローラ、魔力溜(まりょくだま)りの一番(いちばん)(つよ)いのはどこだい」


 みんなも頑張(がんば)ってくれたけれど、ラゴラの子供(こども)たちはさすがにヘトヘトになって、しなびてきている。魔晶石(ましょうせき)肥料(ひりょう)()ぜたおやつをあげると、また元気(げんき)になったよ。



「‥‥ありました。()(くだ)さい、あの(うつ)くしい(いずみ)を」


 ドローラが()(しめ)した水辺(みずべ)にはルーネにもわかるくらいの魔力(まりょく)(あつ)まっていて、鳥喰い(バードイーター)()ばれる巨大な蜘蛛(きょだいなくも)がまどろんでいた。


「どうしよう。あいつはぼくらの(うた)()かないよー」


(くま)のように力持(ちからも)ちで、(おおかみ)より(はや)いんだよー」


 勇気(ゆうき)をふりしぼって()みとどまるラゴラたち。何体(なんたい)もの仲間(なかま)たちが、鳥喰い(バードイーター)には何株(なんかぶ)もやられていたから(こわ)いんだ。



「ウギャーーー!!」

「キュピーーー!!」



「みんな()げちゃ駄目(だめ)ー。あいつはバラバラになったところを(ねら)ってくるよ!」


 ルーネの(さけ)びも(むな)しく、天敵(てんてき)(おび)えてラゴラたちは()()(はし)りだしてしまう。鳥喰い(バードイーター)ネバネバする糸(いと)()きだして、マンドラゴラたちはあっさりと捕食(ほしょく)されてしまった。


 マンドラゴラの断末魔(だんまつま)悲鳴(ひめい)巨大な蜘蛛(きょだいなくも)には()いていない。


「うぅ、みんな⋯⋯」


 ようやく戦士(せんし)として(たたか)えるくらいに(そだ)ったマンドラゴラたちが全滅(ぜんめつ)し、ルーネは(かな)しくてしかたなかった。


 ルーネはアルラウネのお(ひめ)さま。だから魔力(まりょく)()きるまで、何度(なんど)だってマンドラゴラの子供(こども)たちを()べる。


 でも⋯⋯大事(たいじ)(そだ)てたラゴラたちが、()(まえ)簡単(かんたん)()われて(かな)しくないはずがないよ。


 みんなルーネには、大切(たいせつ)仲間(なかま)だから。いずれカルミアに素材(そざい)としてその身()(ささ)げることになるとしても、ルーネは(かな)しい気持(きも)ちを(わす)れない。


「カルミアが諸悪(しょあく)根源(こんげん)のように()こえるのは否定(ひてい)しないが⋯⋯ルーネ、(きみ)彼女(カルミア)約束(やくそく)したのだろう」


「‥‥うん。ルーネを(たす)けてくれたカルミアのために、ルーネは(やく)()ちたい」


「ならば引受(ひきう)けた仕事(しごと)()たしてみせたまえ」


 アストが()きじゃくるルーネの(あたま)をなでてくれた。アストは女王(じょうおう)さまだから、(うえ)()つものの責務(せきむ)(くわ)しい。ルーネにはよくわからない。でもアストが、ルーネのために(きび)しいことを()ってるのはわかるよ。


 ラゴラたちを(かじ)って(まわ)った鳥喰い(バードイーター)は、ルーネたちに(ねら)いを()えてきた。


 鳥喰い(バードイーター)()ばす(いと)は、ルーネとドローラの(つた)魔法(まほう)(ふせ)ぐ。ネバネバ(いと)はルーネたちにひっついて(から)めようとするのだ。


 しかしルーネたちの(つた)は、魔力(まりょく)使(つか)ってもっと上手(うま)(つか)まえるんだからね。


 (つた)自由自在(じゆうじざい)(うご)かし、さらに魔力(まりょく)をこめれば枝葉(えだは)をのばし、(やいば)のように()りつけ、(やり)のように(つらぬ)くことも出来(でき)るんだから。


「ブリオネ!!」


 ラゴラたちを(うし)なって(かな)しんでいたブリオネが、(つた)(から)まり(うご)きの(にぶ)った巨大な蜘蛛(きょだいなくも)麻痺花(マヒバナ)()かせてくれた。


()きべそかきながら、よくやったよルーネ。トドメは(ぼく)(まか)せたまえ」


 (つた)麻痺(まひ)で動けなくなった蜘蛛(くも)(あたま)をアストは()()いた。強力(きょうりょく)魔法(まほう)のこめられた(たま)鳥喰い(バードイーター)(うご)かなくなったよ。


「ルーネ、ブリオネ、ドローラ。蜘蛛(くも)魔晶石(ましょうせき)()()して、この霊樹(れいじゅ)(たね)(いずみ)(さき)(おか)()めるんだ。カルミアには(ぼく)から(つた)えておく」


「うん」


 アストはルーネの身体(からだ)ほどの(おお)きな(たね)(わた)してきた。候補地(こうほち)をみつけるのが仕事(しごと)。アストもカルミアから霊樹(れいじゅ)()える候補地(こうほち)(たね)()えるように(たの)まれていたみたい。


魔晶石(ましょうせき)がなくとも充分(じゅうぶん)(そだ)ちそうだな」


 アストはそう()いながら、()()らかされたマンドラゴラたちの亡骸(なきがら)(あつ)めてまわっていた。




「ただいま、カルミア」


「おかえり、ルーネ。霊樹(れいじゅ)候補地(こうほち)()つけて()えてきてくれてありがとうね」


「うん。でもラゴラたちみんな()っきな蜘蛛(くも)にやられちゃったの」


「そう、それは残念(ざんねん)ね。でもルーネや先輩(アスト)(まも)って立派(りっぱ)だったと(おも)うわよ」


 カルミアがアストと(おな)じようにルーネの(あたま)(やさ)しく()でて、みんなを()めてくれた。


「ドローラ。ヒュエギアと()わってルーネとブリオネと今日(きょう)(やす)みなさいな」


 (もと)のサイズに(もど)ったドローラに()れられて、ルーネの冒険(ぼうけん)はなんとか終了(しゅうりょう)したよ。





 ────ルーネがブリオネたちと(やす)んだあと、カルミアに(うなが)されて、アストがマンドラゴラたちの遺骸(いがい)手渡(てわた)した。


(ぼく)()うのもなんだが、ルーネを()かせてまで()たいものなのかね、ソレは」


「えぇ。()てよ、先輩(せんぱい)。この苦悶(くめん)絶望(ぜつぼう)()ちた表情(ひょうじょう)素材(そざい)効果(こうか)がね、断然違(だんぜんちが)うのよ」


 狂った錬生術師(マッドアルケミスト)異名(いみょう)があるだけあって、なかなかエグい採取方法(さいしゅほうほう)(おこな)う。


最高(さいこう)素材(そざい)()るためだもの。ルーネの涙の結晶(アルラウネのなみだ)まで()(はい)るのよ?」


 ルーネの好奇心(こうきしん)探検心(たんけんしん)利用(りよう)して、マンドラゴラを()いつめた犯人(はんにん)はカルミアだった。魔物(まもの)(はな)ってお膳立(ぜんだ)てしたのも彼女(かのじょ)仕業(しわざ)だったのだ。


「ルーネの宿主(やどぬし)(きみ)だからな。くびり(ころ)されて(ぼく)大切(たいせつ)護衛(ごえい)がいなくならないように()をつけたまえよ」


「ルーネは(おさな)くみえても、(かしこ)いから平気(へいき)よ。それに⋯⋯(つぎ)はもっとうまくやるわよ」


 ()くも(わる)くもルーネはカルミアやアストの仲間(なかま)だということだ。カルミアの仲間(なかま)は、素材提供(そざいていきょう)のために酷い目(ひどいめ)()い、()かされてきた。


 ルーネの(はじ)めての冒険(ぼうけん)は、宿主(やどぬし)のカルミアにとっては大成功(だいせいこう)だったようだ。

 お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
最後の最後で……。 まあ、こういうこともありますよねー。
2025/01/30 11:06 退会済み
管理
 大切な人のため頑張る姿は健気で。  困難に仲間とともに立ち向かう姿勢は周りにと勇気を与えてくれるものですね。  一方での畜産業のような切なさと割り切りは、ラストのカルミアの言葉通り、容姿や思考を超…
亡骸を手厚く葬ってくれるのかと思いきや…… ダークな真実。 こういう童話もアリだと思います! 世界観がとっても面白かったです(*^^*) 全部のキャラを絵で見てみたいなと思いました。 (ダメだ……完…
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