その8 チビとネコはもどる
これでおしまいです。よろしくお願いします。
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チビとネコは今年の「やさしい人」を見つけるために、彼らが住む異世界から、この私たちの世界へ来ました。
いろいろと遊び……、探しまわった結果、「サンタクロース」とすることに決めました。
東京の都心部の12月24日のお昼すぎ。
この日は、めずらしくすごく寒いようです。
「寒いけど、さすがに雪はないよな~」
「雪が降るところはいいよね~。ホワイトクリスマスだから」
チビとネコは道路の上に、ふわふわと浮き、歩道を歩く人間の会話を聞いていました。
「やっぱり寒くして、雪をたくさん降らせる人間が『やさしい人』なのかな?」
「チビさん、それはどう考えても、『すごい人』です」
ですが、雪がたくさん降るところは、いいだけでなく、雪かきをはじめ、大変なことも多いのです。
チビとネコには、車がびゅんびゅん当たるように通りすぎています。
これは彼らが「くねひと」という、私たちの世界では見えず、話す声も聞こえず、何もさわれないおばけみたいな存在だからだよ。
みんなはまねしないでね!
あるトラックがチビとネコに通りすぎます。
そのとき、チビとネコは自分たちの住む、異世界へ戻るじゅもんをとなえました。
「「つーりゅっく!」」
2
チビとネコは異世界に戻りました。
この笑顔の2匹が歩いていると、「でかゴリラ」という大きなくねひとがションボリしていました。
それに気づいたネコがたずねます。
「でかゴリラさん。どうしたんですか?」
「おで、お館様にすんごい怒られただ」
別のくねひとがあらわれて、チビとネコに説明をします。
「こいつ、人間の世界へ行ったんだ。おまえたちも行ったんだろ? お館様に怒られるかもしれないぞ」
「「えっ!?」」
チビとネコはびっくりです。
そして、でかゴリラと同じく、ションボリします。
「おまえを見つけたときは、怒られなかったのになぁ~」
チビがそう言っていると、「ガラ~ン、ゴロ~ン」と大きな鐘の音が鳴りました。
「お館様が今年の1番の『やさしい人』探しを決めるぞ~!」
ひときわ大きなくねひとが、お館様の前にくねひとたちの集合をつげました。
3
お館様は長い白いひげと、白い衣装を着た人間のような老人です。
「では、今年のもっともやさしい人を、ワシに紹介せよ」
くねひとたちはいろいろと紹介していきます。
チビとネコの番になります。2匹は怒られるんじゃないかと、ちょっとビクビクしていますが、チビが勇気を出して言いました。
「オレとネコが紹介するのは、『サンタクロースさん』です!」
お館様はそれを聞いて、ふしぎそうな顔をしています。そして選んだ理由を問います。
チビはあのすべてがつながったことを理由としてあげました。
「ふ~む……。サンタクロース……。まぁよい。それと人間の世界に行くのは注意せよ。ごくまれにワシらが見え、さわれる場所があるからな」
チビとネコはお館様に怒られなくて、ホッとしました。
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結果として、チビとネコが選んだサンタクロースは「やさしい人」に選ばれませんでした。
お館様が選ばれた人について説明をしています。
「盲導犬、聴導犬、介助犬などの引退後の療養施設を運営している代表か。うむ、その者が行っているクラウドファンディングをより人間社会に知らしめ、期日までに目標金額を大きく超えて達るようにしよう」
チビもネコも聞いていて、まったくわからずさっぱりです。
どうやら人間の生活のお手伝いの仕事をしてきた犬たちが、おだやかにすごせる施設をもっとよくしたい人が選ばれたのです。
クラウドファンディングとはきふにちかいのですが、「リターン」とよばれる行ってる人から、お金を出した人に、プレゼントがとどきます。
こういったクラファンのリターンはたいてい税控除の証明書です。
ようするに国におさめるお金が少なくてもいいものがとどくんだって。
5
お館様はこの人の活動がうまく進むことを願って、持っている杖をふり強化魔法をかけました。
こうして、この年の「やさしい人」探しはおわりました。
とぼとぼと歩くチビとネコのうしろ姿を見て、お館様はつぶやきます。
「あやつら、ワシらが人間の世界で言うところの『サンタクロース』だと知らずにいたのか?」
そうです!
お館様は本物の「サンタクロース」!
くねひととは、このお館様のお手伝いをする、「使い魔」たちなのです!
サンタさんがサンタさんを「やさしい人」に選んだら、おかしいですよね。
犬。どうぶつはおしかったよ。
来年もがんばろうね、チビとネコ!
みんなもチビとネコをおうえんしてね!
チビとネコの大冒険 おしまい
チビとネコの大冒険。
読んでくださって大変ありがとうございます。
このコンビは私のお気に入りなので、公式企画の冬の童話祭に関係なく、ジャンルが「童話」か、あるいは「ローファンタジー」で、このコンビ(と「でかゴリラ」)の物語を定期的に書いてみたいな~、と思っています。
それにしても2024年度の各テーマは難しかったです!
なぜか私は「季節縛り」までやっていましたからね。
今年(2025年)はひょっとしたら、自主企画等の参加も控えて、春夏秋冬の公式企画のみの投稿だけという、さびしい投稿状況となるかも知れません。
なので、テーマが書きやすいものでありますように、と願っています。
2024年度の公式企画。
私の春夏秋冬の全作品を読んで下さった、物好きを通りこして、もう奇矯な方々には、特にお礼を申し上げます。
本年もよろしくお願いします。
大野 錦
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