その7 チビとネコ、またサンタさんにあう
その7です。よろしくお願いします。
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チビとネコはけっきょく誰が1番「やさしい人」なのかを決められず、あいかわらず空にうかんでふわふわしています。
もう、25日まで、あと数日です。
ですが、この東京というところは、この日も晴れていて、とくに今のお昼の時間は、あまり寒くありません。
もっとも、くねひとであるチビとネコは、暑さや寒さを感じないのですが。
ネコが何かを見つけたようです。場所を指さします。
「チビさん、見てください。ほら、あそこの白いところ」
「……んっ? あれは雪か? それにサンタさん?」
その場所ははじめに行ったクリスマスマーケットやどうぶつえんよりも、小さい公園ですが、それでも多くの人間がいます。
「あそこに行ってみるぞ!」
チビとネコはピューと、とんで行きました。
2
大きなどうぶつが、雪の上で、乗りものをひっぱっています。
その乗りものにはこどもが入っています。
あの赤と白の服のサンタさんが、この大きなどうぶつをいたわるように、近くにいます。
「はい、今日のお昼はあと1組です。しばらくトナカイのお休みとなります」
サンタさんが言っています。
この公園で行われていたイベントは、トナカイがひく、そりに乗る体験なのでした。
トナカイのそりが体験できるところは、わざわざ雪をたくさん降る地域からはこんできたんだって!
お昼のさいごのこどもがそりを乗りおえると、サンタさんはトナカイをつれて、トナカイのお休み場所に行ってしまいました。
「トナカイさんっていうんですね。シカさんににてるけど、もっと大きくて角がすごいですね」
どうぶつえんでシカを見たネコがびっくりしています。
「あぁ、オレたちにもあんなにすごい角をもったヤツはいないよな」
チビはじぶんの黒い角をさすりながら言います。
「ここはサンタさんがこどもたちを楽しませているところのようですね」
3
ネコの言うとおり、ここは北海道のトナカイ牧場からきた、トナカイのそりが体験できるイベントです。
このサンタクロースの姿をした人は、この牧場の飼育員さんなのですが、もちろんチビもネコもそのようなことはわかっていません。
ごごの4時に、また5組のそり体験を行なうので、トナカイはお休み中です。
とくべつなスタッフしか入れない場所で、サンタさんの姿のままの飼育員さんが、トナカイの世話をしています。
とうぜん、チビとネコはするするとこの場所にちゃっかりと入っています。
「すごいっ! こどもたちを楽しませて、さらにトナカイさんの疲れをいやしている! やっぱりサンタさんが1番『やさしい人』なんだ!」
チビの中ですべてがつながりました!
人間はサンタさんが大好き。そしてサンタさんは人間に「やさしい」。
人間はどうぶつが大好き。そしてどうぶつの世話する人たちは、とくに「やさしい」。
なので、どうぶつを世話しているサンタさんが1番「やさしい人」!
4
「決まったぞ、ネコ! サンタさんを『やさしい人』にしよう!」
「では、もう戻るんですか?」
「夕方のトナカイさんが、そりをひっぱるのを見るに決まっているじゃないか!」
「そう言うと思いましたよ」
ネコもこのトナカイのそりイベントを見たいのは同じでした。
さて、こうしてチビとネコは人間世界を冒険して、みごとに「やさしい人」を見つけることができました。
もとの異世界に戻って、25日に、お館様に紹介です!
チビとネコは成功するのでしょうか?
それは次回のお楽のしみ!
その8(最後です)へ続きます。