その4 チビとネコ、どうぶつえんへ
その4です。よろしくお願いします。
1
「チビさん。あの女の人が、なぜ『やさしい人』なんでしょうか?」
ネコはチビにたずねます。
「あの女の人が、たぶんこのパーティのせきにんしゃさんだ。すべてをとりしきっている。あのサンタさんをも」
東京の都心部のとある広場。
チビとネコはそこで行なわれていた、クリスマスマーケットを楽しんでいました。
チビはこのサンタさんのイベントをとりしきっている女の人を、このクリスマスマーケットのせきにんしゃだと思ったのです。
じつは、この女の人は、フリーアナウンサーで、せきにんしゃでもなんでもないのですが……。
「では、チビさん。あの女の人を『やさしい人』に決めて、もうもどりますか?」
「ネコ。25日までまだある。だから、もっと楽しそうな……、いや、ほかにもいろいろ人間を見て回ろう」
チビもネコも、人間の世界がすっかり気にいったようです。
クリスマスマーケットの会場から、チビとネコは大きなクリスマスツリーのてっぺんまでうきあがり、ふわふわととんで、どこかへ行くのでした。
「バイバイ、大きくてきれいな木さん」
2
「チビさん。もうすっかり暗くなりましたね。どうします?」
「でも、空は暗いけど、どこも明るいな~」
都会だからとうぜんですね。
ですが、ネコが何かに気づいたようです。
「チビさん。見てください。ほら、あのあたり。ちょっと暗いですよ」
ネコが指さした場所は、さっきのクリスマスマーケットよりもずっと広そうです。
「よしっ、行ってみるぞ!」
チビとネコはピューとスピードを上げて、その暗い場所をめざします。
「公園みたいだな」
ほとんどじめんにせっするところまで降りたったチビとネコは、歩くように進みますが、もしも見えていたら、2匹は宙に浮ているかんじで歩いています。
「ん? たくさんの家があるな?」
それはクリスマスマーケットのお店とちがい、大きくがんじょうで、人間が中に入れないようになっていますが、チビとネコはすりぬけて中へ入ります。
3
「うわああっ! どうぶつがたくさんいる! ここは人間がどうぶつをすてるところなんだ!」
怒りの声で叫ぶチビ。
でも、ネコは何かちがうと思いました。
「チビさん、おちついてください! これはあきらかに飼われているどうぶつたちですよ。ごはんのおきばやねるところもありますし」
「えっ! こんなにたくさんのいろいろなどうぶつを飼う人間がいるのか? それはすごい『やさしい人』だぞ!」
もうおわかりでしょう。
チビとネコは夜のどうぶつえんに来ていたのです。
スイスイとすりぬけるチビとネコは、えいぎょうちゅうでない、どうぶつたちが休む部屋まで入って行ったのです。
「よし、ここのどうぶつぜんぶを飼っている人間を探そう」
チビとネコはこのどうぶつえんの中をとおって、いろいろなどうぶつたちを見ながら探します。
「オレはゾウさんが好きだな。デカくて鼻がすごい!」
「ボクはキリンさんですね。デカくて首がすごい!」
どうも、チビとネコはどうぶつたちを見ることにむちゅうになってしまったようです。
4
「そういえば、ゴリラさんって、あの『でかゴリラ』に似てないか?」
「そうですね。顔がそっくり!」
2匹が言った「でかゴリラ」とは、2匹の住む異世界のなかまのくねひとです。
でかゴリラは背が3メートルいじょうもあって、きんにくがものすごい、見た目はこわいけど、やさしいくねひとだよ。
ちなみに、チビはだいたい小学3~4年生、ネコはだいたい小学1~2年生くらいの大きさです。
チビとネコがどうぶつえんを楽しんでいるあいだに、朝となり、飼育員さんたちがしゅっきんし、かいじょうの時間が近づきます。
もう、入口には、らいじょうの人々がならんでいます。
さて、またも人だらけになりそうです。
チビとネコが、これをどう思うか。
それは次回のお楽のしみ!
その5へ続きます。