64.友情と恋情と愛情と
ショウリュウの都、とある店にて。瑞葉とハクハクハクが菓子を販売している一角で立ち止まっている。しかし彼女らは何かを選んでいるわけでは無い。ハクハクハクは真っ赤に染まった顔を両手で覆い、瑞葉はそんな彼女を呆然と見つめている。
「……え、あ、ロロ、を、好き……、え?」
直前に為されたとある告白を未だに瑞葉は飲み込めないのか混乱したようにぶつ切りの言葉がはみ出ているだけだ。おそらく、彼女にとってそれは考えたことも無い事だったのだろう。
二人がほんの僅かにだが落ち着きを取り戻すまでにかかった時間はここには残すまい。ハクハクハクの頬の赤みが少しだけ引いて行った頃に瑞葉はようやく彼女の言葉の意味を理解していた。
「……えっとわかるよ。わかるよ? いや、違うな、ちょっと待ってね」
しかし意味を理解したとてそれに対して何を言えばいいのかまでは分からない。結局頭の中は混乱し彼女は渦巻く水流の中で思考という一片の浮き草を掴もうとしているに過ぎない。要するにろくに頭が回らないと言うだけの事だが。
「……あー、うん。そう……。つまり私はね、これがその、ほら、要は仲間だもんね、好きだよね、みたいなことじゃなくて、その……。恋愛的な、ってことだよね?」
改めてそう問われるとハクハクハクは顔を真っ赤にして、しかし確かに頷いた。
『私、ロロ、の、事が、好きなの』
そう言ったハクハクハクがいつからロロを好きになったのかと問われれば難しい。そんなことは彼女自身だってわからないのだから。しかし自分に再起の機会を与えてくれた人で、ちょっと無鉄砲で馬鹿な所はあるけれど優しくて一緒にいて楽しい、そんな人とおおよそ一年も過ごしていれば好きになることもあるということだ。
瑞葉としても理屈として、恋愛を理屈で考える事の是非はともかく、そういう背景があるからそうなるのは納得できるというものである。ただ。
「……なぜ私にそれを?」
わざわざそれを自分に告げた理由に関しては分からなかった。まあ冒険者として三人で活動しているし言っておいてもらった方が色々と気を遣える場面もあるというものだが。
そこまで考えて瑞葉は気付く。
「あ、分かった。要は手伝って欲しいって事でしょ?」
「え?」
「ロロがハクの事どう思ってるかそれとなく聞けばいいかな。それとも二人きりになる時間を作ろうか? なんなら今からこっそり私だけ帰っても良いけど」
「……え? あ、あの……、違くて」
「違うの?」
間違いないと確信していた瑞葉としては何とも肩透かしを食らった気分だ。しかし困惑しているのはハクハクハクの方も同じだった。
「……あの、瑞葉ちゃん、も、ロロの事、好き、なんじゃ?」
「え?」
彼女は瑞葉も自分と同じ想いを抱いていると思っていた、なんなら確信すらしていた。そして自分よりもずっと長い時間を共に過ごしている最も手強い相手だと思い込んでおり、本人は気付いていなかったが時に嫉妬すらしていたものだが。
「いや、私別にロロの事そういう風に思った事無いよ」
瑞葉はロロに恋愛的な感情を持ったことなどない。
「……そうなの?」
「家族みたいなもんだとは思ってるけど、別にそういうのは無いなあ」
そもそも幼い頃から家こそ違えどずっと一緒にいるせいかほとんど姉弟のような気分なのだ。はっきり言えばこれまでもこれからも彼女がロロに対して恋愛感情など抱く余地は無いと言える。
「その、瑞葉ちゃんも、そうだろうから、一言、ね、言っておかないと、って」
「……まあ、その、応援はするよ」
ハクハクハクの決意は空回りしたようだが、二人にとってこのことが色々と心境に変化をもたらした事は事実である。
とりあえずこの場ではそんな会話があったことをロロには悟られぬよう二人共心の奥にそれを仕舞っていたようだが。
三人はそれぞれ帰路に就く。
ロロはおよそ一か月ぶりに見た我が家の戸を普段と変わらぬ様子で開いた。
「ただいまー」
時は夕暮れ、すぐに夜の闇が訪れる。家の中では彼の父であるナバスが夕食を作っていて、戸を開けるとその匂いが漂って来た。ロロがそのまま家の中に入ると台所に立っているナバスが振り向いて彼の顔を見る。
「……帰ったか」
普段と変わらぬ言葉を聞きロロは頷いた。
「うん、色々お土産買って来たぜ」
「そうか」
そのまま机に土産を置くとロロは一旦部屋に荷物を置きに行く。ナバスは火にかけているスープを味見してもうしばらく煮込めば完成と決め込んだようだ。その場を離れ土産の中身を見に行く。
荷物を置いたロロが戻って来た時には机の上に買ってきた土産が綺麗に並べられていた。それを見て彼は椅子に座り一つ一つ指を差して説明を始める。
「こっちが楼山の都で買ったやつで、こっちが翼獣の町。これはさっき帰って来てから買ったやつ。瑞葉が土産をたくさん買っておかないとって言うからついでに買ったんだ」
「見覚えがあるわけだ」
土産にまつわる話をロロが喋り出す。翼獣の町ではどんなものがあったのか、最終的にこれに決めたのは色んな人の助言を聞いたのだとか、楼山の都では一緒に依頼をこなした冒険者が色々とおすすめしてくれたとか、そんな話が雑多に繰り出されるのをナバスは時折相槌や質問を挟みながら聞き続けていた。
そしてその話が一段落ついた頃、ナバスは固定され吊るされているロロの腕を見た。
「……腕の怪我はどうだ?」
「あー、これね。今はもう痛くはないぜ。まあ流石に変に力が入ったりするとあれなんだけど……」
「そうか無理はするな」
「うん。これはさ、クビナシトラって魔物と戦ってて、まあ、ちょっと一発貰っちゃって」
「翼獣の町で戦ったと聞いている」
「あ、知ってた? ミザロ姉の手紙に書いてあった? まあそうなんだよ。ちょっと油断したというか……、こっちも何頭か斬ってやったんだけどな」
「……怖くないか?」
「何が?」
「魔物と戦うことが」
冒険者の中には一度の大怪我で戦いに恐怖を感じそのまま引退する者も珍しくは無い。魔物や獣と戦うことは命懸けだ、しかし実際に死ぬかもしれないという怪我を負うまではそれを意識するのは中々難しい。人と言うのはいつだって無意識に自分は大丈夫だと思い込んでいるものだ。
だからナバスは尋ねた。自身の選択に後悔は無いのか、と。
「怖いよ、魔物と戦うのは」
故に当然のようにそう返事が来たのは少々意外だったらしい。仮にそういう答えが来るとしてももう少し言い辛そうにするかと思っていたのだ。
しかし。
「怖いのなんて当たり前だって。そりゃこんなに怪我したのは初めてだけど今までだって何回もこれぐらいの怪我はしてたかもしれないしな。周りが助けてくれたりさ、今までが運が良かっただけ」
ロロはそう言ってこれまでに自分が死ぬかもしれないと思った時の事を幾つか挙げる。
彼は恐怖を感じないわけでは無い。恐ろしい敵を恐ろしいと知っていながら立ち向かう事が出来るだけで。それは間違いなく得難い才能であろう。
ナバスはそんなロロの言葉を黙って聞き続けていた。
「……何か変な匂いが」
不意にロロがそう呟く。
「……む」
そしてナバスは思い出す。鍋を火にかけていたことを。慌てて台所に向かうがもう遅い。
「すまん、焦がした」
「あー、まあ大丈夫だって」
ロロはそう言って鍋の中身を掬って口の中に。そして若干の間を置いて彼は渋い表情を見せた。
二人と別れたハクハクハクはしばらく町をぶらついていた。頬のほてりが収まるのを待っていたのだ。そして十分にそれが収まったと判断してから彼女が居候する古物商へと向かう。実に一か月もの間空けていたものだから店主の岩次がどう出迎えて来るのかは分からず少しだけ不安を覚えていたようだが、流石に道端で一夜を明かすわけにもいかず完全に暗くなる前には店の裏口へと辿り着く。
彼女はゆっくりと扉を開け中へ入り棚に置かれたベルを鳴らした。それは彼女が帰った事を示す合図だ。それからとりあえず荷物を置くべく寝泊まりする倉庫の方へ向かう。
倉庫の掃除は居候が始まってからというもの彼女の仕事だ。それは冒険者として働き始めても変わらず数日空けると倉庫の荷物には埃が溜まっていたものだ。一か月も経っていることだし寝る前に軽く掃除をしておかないと、などと思っていたのだが。
「……なんか、綺麗?」
まるで近々に掃除でもされたかのように埃の無い机に荷物を置くと、彼女は倉庫の中を掃除用具を持って一通り見て回る。
「岩次さん、自分で掃除したのかな……」
ここはあくまで店の倉庫だ。店主は古物商として商品の管理を怠るわけにはいかないし、時にここへ荷物を取りに来ることもあるだろう。思いの外綺麗な倉庫の荷物を見て、これは偶然私が帰る直前に掃除がされたに違いない、そうハクハクハクは納得する。
「……お土産、置きに行こう」
彼女が岩次と顔を合わせることはあまり無い。店の表に彼女が出ることは無いし、互いにわざわざ話をするようなことも無い。岩次が倉庫に荷物を取りに来た時やハクハクハクが食事を取りに行った時に鉢合わせる場合がほとんどで、後は偶に何かしらの連絡事項で声を掛けるぐらいだろう。
だから今日も彼女は特別岩次に声を掛けるつもりは無く、お土産も手紙を添えて部屋の前に置いておけばいいだろうと考えていた。
ふと、彼女は台所の前で足を止める。その視線の先には鍋を振るっている岩次の姿があった。前までの彼女であれば決して声を掛けることなど無く、ただしばらくその姿を見つめた後にその場を去っていただろう。
しかし今日は。
「岩次、さん」
料理をするその背に呼び掛けた。それは岩次が驚き振り返ってしばらく唖然とした表情で見つめるぐらいには初めての出来事である。
「……何かあったか?」
「えと、その。お、お久しぶりで……、その、お土産を」
「土産?」
「……あの、一か月、いなかったから……、お土産……」
「……ああ。ちょっと待て」
岩次は火を止めるとハクハクハクの方へずかずかと歩いて来る。その様子に何か気に障ることでもしただろうかとハクハクハクは少し緊張していた。
「それが土産か」
「あ、そ、そうです」
「そうか」
土産は包装された箱に入っている。岩次はそれを受け取るとほとんど間を置くことなく雑に包装を破く。ぽかん、とするハクハクハクを尻目に彼は箱を開けると中身を改め。
「饅頭か? 旨そうだな」
と言ってその中の半分を取り残りをハクハクハクに返した。
「え?」
「何だ? 大喰らいのお前にはそれじゃ足りんか?」
「あ、いや……、その、全部あげるつもりで……」
「お前は食ったのか?」
「え? あ、一応、その、あ、味見で、お店で一個……」
「ならもう一個もらおう」
岩次はそんな風に土産を半分ずつもらい残りはハクハクハクに返す。
「食事はもう少ししたら出来る。ちょっと待ってろ」
そして夕食の準備へと戻って行った。ハクハクハクは終始ぽかん、としていてどうしていいかもわからずただ岩次の言葉通りにしようとその場で立っている。
「そこで待つなら座ってろ。椅子があるだろう」
「えぁ、は、はい」
飛んで来た声にも素直に従いすぐさま椅子を探してそれに座る。
美味しそうな料理の匂いが漂い始めハクハクハクの鼻孔をくすぐる。これまでに彼女は岩次の料理している様子をこっそり覗くことはあっても、台所でそれが終わるのをじっと待っているという事は無かった。それ故になんだか不思議な気分ではあったが、彼女はふと気付く。考えてみれば今までずっと自分は岩次の事を避けていたのではないかと。ろくに話しかけることも無く、自分は居候なのだからと遠慮して関わり合いを持とうとすらしない。
彼女にとって岩次は恩人だ、金を稼ぐこともしない冒険者になれなかったごくつぶしをずっと養い居候させてくれたのだから。その一方で深く関係を築くことをして来たわけでは無く、ただずっとその優しさに甘えていただけでもある。
今日、声をかけるという小さな一歩を踏み出した事で何かが変わったのかもしれない。そんなことを彼女は思った。
だから。
「岩次、さん」
「何だ?」
「あの、い、一緒に、た、食べてもいいですか?」
そう聞いてみた。人とより深く関わってみたいと彼女は思い始めたのかもしれない。
ただし。
「いや、俺は仕事がある」
そういう一歩が常に上手く行くとは限らない。ハクハクハクは恥ずかしそうに頬を掻いた。
とはいえ彼女らの関係はまだまだ始まったばかりなのだ。最初から上手く行くことなどあまり無く、人の考えや気持ち、関係性などと言うは長い時間をかけて変わって行くものなのだろう。何はともあれ彼女は一歩を踏み出した。この先がどうなるかはまだ分からない。
家のすぐ傍でロロと別れ瑞葉は一人自分の家の前で立ち止まっていた。手にはたくさんのお土産を持ち、どんなことがあったのか話す準備も出来ている。
それでも一か月という彼女にとってはかなりの長期間、家を空けていた。そのたった一つの事実が家に入るという行為を躊躇わせていた。
彼女は想像する、自分が帰って来た事に対して母である樹々が、義父である上代がどのような反応を見せるのか。それを何度も何度も繰り返し違う可能性を考えては自分がどのようにすべきかを考える。別に彼女は二人の事が嫌いなわけでは無いのだが、だからこそ余計な心配をかけるまいと妙に自分の振る舞いに対して気を遣っている所がある。
そして十分以上も家の前で様々な事に考えを巡らせて、ようやく家の戸に手をかける。
そしてゆっくりと戸を開いた。
「……ただいまー」
その声はか細く彼女の持つ不安を如実に表している。今の自分の声は聞こえたのか、聞こえたのならばどんな反応が返って来るのか。彼女は心臓をどぎまぎさせながらそれを待った。
まず聞こえたのは足音だ。そしてすぐに彼女の母親、樹々がその姿を見せる。樹々は瑞葉の姿を上から下まで確認するとどこか安心した風に息を吐き。
「おかえりなさい。ちょうど、もう少しで晩御飯も出来るわ」
その落ち着いた様子に瑞葉は安心し、それからようやく少しだけ緊張の糸を解いた。
「わかった。お母さん、これお土産」
「あら、たくさん買ったのね」
「折角の遠出だからね」
「じゃあ後でみんなで食べましょうか」
台所へ戻る母の姿は普段と変わらないように見えた。瑞葉は場合によっては長く家を空けたことを怒っているかもしれないと思っていたのだが、幸いにもそれは無用の心配だったようだ。ミザロの手紙が思いの他効力があったのかもしれない、そんなことを思いながら彼女は荷物を置いて家族の待つ居間へと向かう。
「上代さん、ただいま」
義父は椅子に座って新聞を読んでいた。彼は瑞葉の声に振り向きにこりと笑顔を見せる。
「おかえり。長旅はどうだったかな? 楽しかった? それとも疲れたかな?」
「どっちもかな」
彼女は上代の向かいに座ると旅の概略を話し出す。
「―――なんてことがあって翼獣の町に行ったの」
「成程ねぇ、ミザロさんが送ってくれた手紙に書いてあったけど実際に本人から聞くと色々と違うもんだね。今日は是非とも瑞葉ちゃんに旅の出来事を語ってもらわないと」
そんな話をしている内に夕飯が出来たから運ぶのを手伝って、と声がする。二人は自然と立ち上がり随分と豪華な食事の数々を食卓に運んだ。
「……誰か私が帰るって知らせてたの?」
「ミザロさんが手紙を送って来てたのよ。何日か前にこの日には帰れると思いますって。だから今日は張り切っちゃった。もし帰って来なくても保存が効くものばかりだから明日でも大丈夫だしね」
並べられた食事は一部を除いてきちんと保管すれば翌日でも食べられるものばかり。抜け目ないなぁと瑞葉は思う。
「さ、どんなことがあったのか聞かせて? 帰ってくるの楽しみにしてたのよ?」
「うん。えっと、まず楼山の都ではね―――」
瑞葉はいつものように事前に考えていた通り適度に脚色を挟みながら依頼の様子を話す。彼女の検閲によってあまりに心配をかけそうな部分は話されることは無い。例えば楼山の都では木更津とニールーの諍いに巻き込まれたことは切り取られているし、翼獣の町でのクビナシトラとの戦いも本来より小規模なものとして描かれる。流石にロロが腕の骨を折った事に関してはすぐにばれる事であるから正直に話したようだが、大きく吹っ飛ばされた点などは省略されたようだ。
「まあ、そんなことが……」
それでも心配そうな表情を見せる樹々を見て瑞葉はいっそ黙っておくべきだったかなどと考えてしまう。どうせすぐにばれるのだとしても、瑞葉はそうして心配そうにしている母の姿を見るのはあまり好きでは無かった。
「それでね、戦いが終わった後は町の人総出で宴会だったよ。私はロロが変に動いたりしないように見張ってたんだけどね、ミザロさんが外で作ってた料理を持って来てくれたの。こう、魔法でなんだけど、お皿がいっぱい宙に浮いてて凄かったんだよ」
彼女は話題を変えると身振り手振りでその時の様子を伝える。
「もう今日の料理の倍以上持って来てたんだから」
「そんなにかい?」
「ロロ君でもそんなに食べ切れないんじゃないの?」
「あ、ほとんどはハクの為だよ。他の人にも分けてたけどあの子が一番食べるからね」
「そうなのねぇ……」
瑞葉は次々と話題を出さねばと記憶を掘り起こしていたせいでその時に樹々が一瞬見せた冷たい表情には気が付かなかった。
「次の日は翼獣の谷にお礼を届けに行ったんだよ。大勢で大きな肉を―――」
夜が更けていく。少なくとも、間違いなく、表面上は彼女らは楽しい時を過ごしていた。もし瑞葉に考え違いがあったとするならば、決して樹々は察しが悪い親では無かったという事だろう。
翌日、どうせロロが腕の怪我で動けないのもあり三人の冒険者稼業は今日は休業だ。瑞葉は買い物がてら都の中心部をぶらついていた。その途中、彼女の頭にあったのは昨日のハクハクハクとの会話だった。
「ロロが好き、かぁ」
彼女自身はそれに対して嫌だとか思うことは無い。ロロの事は馬鹿だと思うし色々と問題がある部分もあると思っているが、それ以上に幼い頃から自分を引っ張って前を進む姿にはある種の憧れのような物すら抱いている。その一方で恋愛対象として見れるかと問われれば完全に否定するだろう。
「……改めて考えると私ってあんまりそういうのわからないな」
よくよく考えてみればそもそも瑞葉は誰かを恋愛的な意味で好きだと思った記憶は無かった。例えば見た目がかっこいいと思ってもそれはあくまで一般的な枠組みに当てはめた時にかっこいい部類に入るだろうと思っただけの事であり、自分自身にとってどうであるかとは若干切り離されて考えているような気さえする。
「……むむむ?」
ハクハクハクがロロの事を好きだと言うならそれを応援したいと思っていたのだが、改めて考えてみればそもそもそう言った感情に自身は疎いのだと気付きを得る。そうであれば本当にハクハクハクの助けになるようなことが出来るのだろうか。
「……ちょっと適当に話を聞いてみようかな」
そう言った事に詳しそうな、人生経験が豊富そうな人とは誰か。ついでに瑞葉にとって話を聞きやすい人物とは。
とある菓子屋の店先、瑞葉はその人物と二人で新作のお菓子を食べている。
「これ、見た目が綺麗ですね」
目の前にあるのは蜜漬けにされた果物が寒天で固められたお菓子。見た目に派手さは無いがじっと見入ってしまう美しさがある。
「そうだろう。これから暑くなると涼し気な見た目の方が良いからな。色々と試しているらしい。評判が良ければ夏場に大々的に売り込むそうだ」
「流石牛鬼さん、いいお店知ってますね」
彼女がまず声を掛けたのは牛鬼だった。依頼が無い日は宿に行けば大抵は彼がいる。そして瑞葉は彼と都の美味しいお菓子の情報について共有する仲で、他の冒険者に比べて声がかけやすい。歳もそれなりにいっている彼は人生経験も豊富であるはずで今回の相談に関して間違いなく適した人材だ。
彼が恋人か或いは伴侶となる人物と一緒にいる姿を見たことがない事に関して瑞葉は目をつぶっているようだが。
「それで、相談と言うのは?」
「実はですね」
そこで初めて、ハクハクハクがロロを好きだ、などとばらすのは流石に気が引けるというか不誠実ですらあると思い至る。彼女が相応の覚悟を持って瑞葉にその事を話したのは確実で、逆に言えば他の者は知らないはずだ。勝手にばらすのは流石に悪い。
そこで。
「昨日こっちに戻って来たんですけど、そこでちょっと、ミザロさんがですね、崎藤さんの事を、ほら、あれじゃないですか」
「……あれ、とは好いているということか?」
ミザロをだしに使うことにした。実際、それも彼女の頭の中には結構な衝撃として残っているものであれこれ考えるきっかけになってもおかしいものではない。直後にそれ以上に衝撃な事が起こっただけで。
「はい。新しい従業員のキララさんと話しているのを見て初めて気付いたんですけど」
「何だ、知らなかったのか? 宿に出入りする者はかなりの者がとっくに勘付いていたはずだが」
「お恥ずかしながら……」
ミザロさんってわかりやすかったのか……。瑞葉は改めて自身がそういった話に疎い事に気が付き息を吐く。
「まあ、その、それでちょっと気になって。人を好きになる……、恋するってどんなものなのかなぁ、と。ほら、流石にミザロさんに直接は聞けませんから」
ロロ辺りならば何も考えずに直接話を聞いてしまいそうなものだが流石に瑞葉にその度胸は無い。というか普通は二等星の雲の上の冒険者に対してそれを聞ける者など居ないのだ。実際、彼女が崎藤を好いているという事実を認識している者は大勢いるが、それを面と向かって聞いた者は竜神などの彼女と対等に話し合える者ぐらいだ。
それはそれとして牛鬼は瑞葉の問いを聞き、何か言う前に一旦菓子を切り分けてそれを口に含む。それは彼自身の遠い記憶を呼び起こす為に時間が必要だったからだろう。
「……古い、話になる。あれは確か十五の頃だったか。同級生の女子に恋焦がれ必死に彼女に並び立とうとしたものだ」
「……牛鬼さん今幾つでしたっけ」
「五十は超えた」
「じゃあ三十年以上前の事じゃないですか」
「……彼女はクラスで一番の人気者で多くの者が恋焦がれていたのだ。勉強が得意な者もスポーツが得意な者も内気な者も勝気な者も……」
「牛鬼さんはその人と一緒になったんですか?」
「いや、結局あれは……、そう、目立たぬ地味な男と一緒になっていた」
「……牛鬼さんは、その、競争に負けた?」
「いや、勝負の地平にすら立っていなかった」
瑞葉は言葉の意味が分からず首を傾げる。
「……どれだけ恋焦がれようとそれだけでは意味が無いのだ。相手に相応しい者になろうと自分を高める事は大切だ。だがそれは前提に過ぎん。愚かにも、自分が誰よりも目立ち前に出ていれば彼女が自分を好きになると誤解していたのだ」
「よくわかりませんが……」
「要するにだな、人を好きになってもそれが相手に伝わらなければ意味が無いという事だ……。自分がそれを伝えるのを怠っている間に先に言った目立たぬ地味な男が彼女に気持ちを伝え一緒になった。それだけの事だ」
[……そうなんですね」
牛鬼は話は終わりだと言わんばかりに残った菓子を一気に平らげる。それを見ながら瑞葉は当初聞きたかったこととはちょっと話がずれてしまったなと思ったが、その一方でこれ以上この話を続けるのは流石に心を抉るようで悪いしこれはこれで参考にはなると思う。
故に彼女は目の前の菓子を切り分けて食べる。爽やかな甘さが口の中で溶けて行った。
牛鬼と別れた瑞葉は次に話を聞くべき人物を探す。牛鬼の話は多少の参考にはなったがしかし一人分の話だけで何もかもをわかった気になるのは流石にまずいだろう。別れ際に何人か話を聞けそうな人物を確認しており彼女はそれらの人物を探し始める。
そして出会ったのは。
「あ、ディオンさん」
「ん? おお、ズーハか」
全身鎧を着込んだ彼はショウリュウの都で実力派として名高い天柳騎という三人組の一人、ディオンだ。彼は三等星であり天柳騎の中で最も長い冒険者としての経歴を持つ。
「虎狼ホンソウに行ったのだろう? 大活躍だったと聞いているぞ」
「そんな大活躍って程では……」
「ははは、謙遜か? しかし冒険者は自らの実力を誇っても良いと思うぞ」
「謙遜ってわけでは……」
彼女が活躍をしたというのは実際の所は誰の目にも明らかな事だったが本人は大した事をしたとは思っていないらしい。それを正しく把握できないのは彼女の大きな欠点の一つと言えるのかもしれない。
「まあそれはともかく、ちょっと聞きたい事が」
「む、何だ?」
ディオンに牛鬼にしたのと同じような説明と共に話を聞く。そうしながら瑞葉はディオンもあまり女性の影が無いような、と思い掛けたのだが。
「……もしかして、実は柳さんとそういう仲だったりします?」
天柳騎にはよくよく考えてみれば柳という女性がいるのだ。三人組という事であれば当然一緒にいる時間は長い。更に言えば以前一緒に依頼に出向いたことがあるが、その時にディオンと柳は良い雰囲気、という訳では無いが一部似通った性質を持っていたと思いもする。
気が合う二人であるならばそういう仲という事もあるのかもしれないと思ったのだが。
「柳と私がか? ふーむ、そう見えるか? いやいや、それはあり得んな、はっはっは」
ディオンには大笑いされてしまう。
「前に言わなかったか? ……んー? いや、はっきりとは言っていないな。アグニは分かるだろう? 我ら天柳騎の天を司るかの者を」
「あー、えっと、あんまり話とかしたことは無いですけど」
瑞葉は天柳騎のアグニとは一応面識があるのだが一緒に依頼に行ったことがあるわけでは無くディオンの絡みなどで何度か会ったことがあるだけだ。そして彼は丙族を嫌っておりハクハクハクと一緒にいる彼女に対しあまり態度も良くなかったのであまり良い印象が無い。
「柳とアグニは互いに互いを好いているのだ」
「へぇー……、え?」
「そういう意味では肩身が狭くてな。ふーむ、だが未だに互いに想いを打ち明けようとせんのでやきもきもしている」
「そ、そうなんですか」
柳に関しては共に依頼に行った際の頼りになる印象が強いのだが、その彼女があの態度の悪い男を好きであると言う事実に関して瑞葉にはどうにも納得がいかないものがあった。が、よくよく考えてみれば彼女が知っているアグニは極々一部であり、それも妙に機嫌の悪い時ばかりである。或いは普段は人に好かれるような様子なのだろうかと想像する。
「……ちなみに牛鬼さんはどなたか好きな方とか」
「ふーむ、私が好きなのはこの世に生き己が生を全うしようとする者皆……、誰もが愛しき者でありそこに優劣を付けるのは難しいかもしれんな」
「……それは要するにいないってことですよね」
「そうとも言うな」
ディオンは高笑いを浮かべ瑞葉は頭を抱える。彼の話が参考になったかと言うと微妙だが、自分が知らないだけで多くの人がそういう感情をしっかり持っているのだと言う事は段々と理解し始めていた。
彼女は次に話を聞く人物を探し始める。
次に瑞葉が向かったのは志吹の宿だ。ミザロに直接話を聞きに行く、という訳ではなく単にあそこは冒険者がたむろしているので話を聞ける誰かがいる可能性が高いと言うだけの話だ。安川か虎イガーの面々なら比較的話が聞きやすいかなぁ、などと思いながら足早に向かう。
そして彼女がそこへ辿り着いた時。
「いらっしゃいませー!」
キララの明るい声が彼女を出迎える。そして想像以上に多い客の数に気圧される。彼女はつい忘れていたが、新たな従業員キララのおかげか普段よりも大勢が利用しているのだ。もう少し静かな空間を求めていたのだが今更引き返すのも変なのでとりあえず彼女は前へ歩み出る。
「今日はお一人ですか?」
「まあ、ロロは腕を怪我してるし……」
「混雑してるので相席でもいいです?」
「……大丈夫です」
やっぱりやめとけばよかったか、彼女の頭を後悔が過る。知らない相手と相席などなったら気まずいどころの騒ぎではない。話など聞けるわけもなく別に然程お腹も空いていないのに何をしに来たのかとなってしまう所、だったが。
「こっちが空いてるぞ」
そんな彼女に声がかけられる。声の主はショウリュウの都が誇る二等星、竜神だ。
「あそこでよろしいですか?」
瑞葉は一瞬その問いに頷くのを躊躇った。竜神は共に依頼に行ったこともあるし面倒見の良い者だという事は知っているが、どうにも昔に宿で態度が悪い客をぼこぼこにしているのを見たせいか恐怖心が刷り込まれている部分もあった。
と言っても基本的には面倒見の良い事に間違いはなく比較的付き合いのある者だ、貴重な話を聞ける相手には違いなく彼女は結局竜神たちを相席をすることとなる。
「一人でいるのは珍しいな。ロロは腕折ったんだって?」
「はい、クビナシトラに吹っ飛ばされて」
「そりゃ災難だったな」
「僕が付いて行けていれば……、すまないな」
「いえ、ツバサさんが責任を感じるような事では」
彼女の目の前にいるのはかの高名なザガ十一次元鳳凰の仲間たちだ。竜神、ツバサ、空天赤坂、アフェルと四人も揃っており、この中で瑞葉が面識が深いのは竜神とツバサである。昔からよく面倒を見てくれたのは竜神だが、ツバサはついこの前に依頼で楼山の都に共に行った者の一人でもあった。
そのツバサは腕を組みながらきわめて不自然な様子で瑞葉に尋ねる。
「そ、そういえばだね。あの時にソラと安川がいただろう。二人はどんな様子だったかな?」
瑞葉はそれを聞いて思わずむず痒さを覚える。ミザロが虎狼ホンソウへ向かうと言ったあの日、彼が付いて来ようとするも頼み事をされて涙を流し崩れ落ちていたのを思い出す。いくら瑞葉が鈍いと言っても流石にわかりやす過ぎる態度になぜだか彼女の方が恥ずかしくなりそうだ。
「……えっと、別に、そんな気にしなくても、あの二人がくっつくことは無いかと……」
「そうか……、え?」
ツバサは瑞葉の言葉にほっとしたように頷くと、それから急に頬を赤く染めていく。
「いや、待て、それではまるで僕が、その、彼女の事を……、みたいではないか」
「え、好きじゃないんですか?」
言葉を濁したのも虚しく瑞葉が直接的に尋ねてしまう。ツバサは急に口の中が渇き視界はぼやけ足元が覚束無くなるのを感じていた。
「いや、それは、だねぇ……」
「瑞葉、その辺にしといてやれ」
横から竜神の助け舟が出される。
「これでも隠してるつもりらしい。めちゃくちゃわかりやすいのにな」
或いは追い打ちか。
ツバサがソラの事を好いているのは割と大勢が知っている。ソラの前ではかなり、或いは凄まじく態度に出ているのでその姿を見れば誰でも容易に想像がつくというものだ。知らないのは人間関係の機微に疎いソラ本人や察しが悪過ぎるロロのような者ぐらいだろう。
さて、ここで瑞葉は敢えて追い打ちをかけてみたり或いは安川の方はソラを迷惑がっているのでとりあえずの心配はないと助け舟を出すことも出来るのだが。わかりやすい人よりも他の面々に話を聞いてみたいところである。
そういう意味では話題をそっち方面に持って来てくれたツバサに感謝しつつ彼女は尋ねる。
「ちなみに竜神さんは好きな方とか、お付き合いしている方とかいないんですか?」
「ん? 私か?」
何気ない様子を装って聞かれたその問いに興味津々なのはどうやら瑞葉だけではないらしい。
「それは気になるな、どうなんだ?」
話題が自分から逸れた事も相まってかぐいぐいと詰めるツバサ。
「まさかうちのリーダーと夫婦だったり?」
この機に揶揄ってやろうと笑みを浮かべるアフェル。
「……私も気になります」
じっと竜神の顔を見つめる空天赤坂。
「あー、大人気だな」
この場の全員の視線を受けて竜神は少し困ったように笑う。
「つっても残念ながら私にゃそんなやつはいなくてね」
「本当ですか?」
「どうした空天、やけに食いつくな。いないいない」
「ザガさんは?」
「勘弁してくれ。あれと夫婦だなんて考えるだけでも吐き気がする。このチームは居心地良くて気に入ってるしあれがリーダーなのも構わないが、あれとの仲をそういう風に考えられるのは御免だ」
鳥肌まで立てて彼女が本気で嫌がっているのは誰の目にも明らかだろう。空天赤坂もそれに安心したように息を吐いてそれ以上の追及の手を止めた。
「私よりアフェルの方がその手の話は良いだろ」
視線を向けられた彼はしかし申し訳なさそうに頬を掻いた。
「そう言われてもなぁ。結婚してしまうとそういうのは逆にこう、過ぎ去った過去という感じがして難しいな」
「あ、結婚されてるんですか?」
「ああ」
アフェルは当然のようにそう言ったが同じチームのはずの三人は目を見開いて彼を見つめる。
「……あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないな」
「同じく」
空天赤坂も他二人に同調するように頷く。
「……ごほん、私事ながら、一か月ほど前に紫龍と結婚しました。みんな祝福よろしく!」
竜神の拳がアフェルの頭をぶっ叩く。
「りゅ、竜神さんそれはやり過ぎじゃ……」
「お前も紫龍も何で言ってないんだ?」
「いや、なんか、紫龍が言ってるかなぁって……」
「二人共いい加減だからな……」
瑞葉は話の流れで思い出したが、紫龍はザガ十一次元鳳凰の一員だ。要するに二人は同じチームの一員として様々な事をする中でお互いに惹かれ合ってとうとう結婚したという事なのだろう。
そしてその一部始終を当然同じチームである彼らは見て来たわけで。
「一言ぐらい言って欲しかった……」
その空天赤坂の言葉が全てだろう。
その後もアフェルは皆への言い訳を連ねていたがそれからどうなったのかはわからない。適当な所で抜け出した瑞葉は色々な話を聞くのが楽しくなって来たのか、次は誰の所へ行こうかと考えているようだ。
それから彼女は丙自治会の集会所へ行き、同級生の働く店に行き、様々な顔馴染みに話を聞いて回る。色々な人の話を聞く内に彼女が感じたことはどれも自分の事として考えられないなぁ、という事だった。彼らの話を聞いて面白いと思ったり納得することはあっても、それは紙の上に文字で書かれた物語を読んで思う事と何も変わらない。
今日の旅は元々ハクハクハクの助けになる為に様々な人の話を聞くという目的であったが、その途上で彼女は自分には未だ色恋の沙汰がさっぱりわからないという事だけが理解できてしまったのだった。
夕暮れ、広大な畑の中の一本道、通り過ぎる風はやや温くもうじきの夏の到来を予感させる。
「好きな人と一緒にいたいってのは分かるんだけどねぇ……」
例えば彼女は考える、今こうして一緒に冒険者として活動している現状と何が変わるのだろうと。共に日々を過ごし、共に助け合い、共に生きる。ハクハクハクやロロとこれからもそうしていたいと思う。ではその気持ちは恋情なのだろうか?
「……違うよねぇ」
それが違うと言うのは考えるまでも無い事だ。彼女にとって恋情とはまるで宙を舞う蝶のように捉えどころがなく、決してその手に掴むことのできない、理解不能なものらしい。
「分からないなぁ……」
彼女には理解できない物がたくさんある。それは日を追うごとに増えて行く。悩みの種は彼女の中で徐々に養分を蓄えいつしか芽を出すだろう。
例えばその日は今日なのかもしれない。
「ただいまー」
彼女はいつものように扉を開けてそう言った。遠くからばたばたと音が聞こえる。どうやら彼女の母、樹々は既に帰っているらしい。いつものように出迎えてくれようとしているのだろう。
普段の瑞葉ならばきっと靴を脱ぎながらどんな話をするか考えていたことだろう。ただ、たまたまこの日は色々と考えることが多かった、様々な話を聞いてそれを頭の中で整理していた。
その時にふと、疑問に思う。
「……丙族とそうでない人の結婚ってどうなんだろ」
それは素朴な疑問であった。丙族とそうでない人が結婚すると言う話を彼女は聞いたことが無かった。それは母が、樹々が丙族を忌避しており彼女自身があまり深く彼らと付き合いが無い為でもあるし、そもそもそのような夫婦があまり存在しないと言うのも一因ではある。
その疑問自体を抱くことはこれと言って問題ではない。
ただそれを彼女は何気なく口に出してしまった。
彼女の家で。
母親のすぐ近くで。
「……お帰り」
「あ、頼まれてたお肉と調味料買ってきたよ」
「ありがとう」
瑞葉はそれに気が付かずただいつものように家の中へ。歩いて行く彼女の背をじっと見つめる母親の姿に気が付くことは無かった。




