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『この国は、呪われている』
そう言ったのは王子だった。
王子の話を要約すると、
・この国では300年に1人、異世界から召喚した
人柱を精霊に捧げなければいけない。
・もしできなければ国は災厄に見舞われる。
・だから人柱になってくれ。
この3つだった。
私がこの国に召喚されたのは1週間前。
ごくごく一般的な学生だった私、如月 琉菜は家から出た瞬間に目の前が真っ暗になり、視界が開けた時にはもう見慣れた景色は無かった。
私の足元には巨大な魔法陣、そのまわりには黒いローブを羽織った人が10人程、それからふくよかな体型の偉そうな男が立っている。何が起きたのか分からずまわりをきょろきょろと見回していると偉そうな男がこちらに向かってずんずん歩いてきた。
「余はエドガー・フリージア。ここフリージア王国の王である。名を申せ。」
うわぁ、めっちゃ偉そう……
というかフリージアって国名かわいいな。
そんなことをのんきに考えていたら王がキレた。
「早く名を申せ!余は待たされるのが嫌だ!」
思った以上の短気だ。
しょうがないので答える。
「私は琉菜。如月琉菜です。」
「ほう、ルナか。皆の者!この者は聖女ルナである!」
……は?
聖女……?なんか勝手に聖女にされた……
「「「「聖女ルナ様万歳!!!」」」」
まわりはすっかり歓迎ムードだ。
「聖女ルナよ、今夜は歓迎の宴を開く故必ず参加するように。準備にはメイドと騎士をつける。」
宴……、なんかやだ。
そして私まだ何も説明受けてないんですけど。
「おい、そこの騎士とそこのメイド2人、聖女に付け。」
「かしこまりました。」
「他の者は宴の準備をしろ。」
何も分からない私を他所に皆慌ただしく動き出す。
とりあえず動かないで待っていると先程呼ばれた3人がこちらへ来た。
「私はアルトと申します。隣のフィーネと共に聖女様の身の回りにお世話をさせて頂きます。」
アルトとフィーネが綺麗な所作で礼をする。
「私はマルカートと申します。聖女様の身辺警護をさせて頂きます。どうぞお見知り置きを。」
マルカートの礼は綺麗だが私の知っているそれとは少し違った。この国独自の礼なのだろうか。
「宴の準備がありますので、ひとまず聖女様のお部屋へまいりましょう。」
フィーネに促され、4人で部屋へと向かう。