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名前戦争 ~転生しても変わらず生きる~  作者: 七涙色ユウ
序章 神堕守の世界
2/5

プロローグ②

 クリスマスの夜、俺はケーキを買いに出かけた。せっかくのクリスマスなので、有名なケーキ屋さんに行くことにした。


 俺が歩いている道は人通りが多く、プレゼントを配り歩いているサンタクロースのコスプレをしたおじさんやカップルなどが多く見られた。


 そんな通りを眺めながらゆったり歩いていると、気付けばお店に到着していた。


 お店に入ると、あの女の子がいた。どうやら、買ったケーキが来るのをを待っている様だった。

 俺は理由が無ければ自分から人に話しかけるような性格ではないのでそのままケーキ選びに集中力を注ぐことにした。


 さて、どれにしようかな……?


 いつも通り、俺はすぐに二択に絞り込むことができた。その二つとは俺が好きなチーズケーキとプリンケーキである。

 究極のニ択。これは本当に最悪な状況である。なぜなら俺は二択になってから選び出すのに凄く時間がかかってしまうのである。過去の経験ではコンビニでポテチの味で一時間以上悩んだことがある。


 あーダメだ……決められない……


 俺は今二つのケーキで頭が一杯になっている。


「守くん? ねぇ、守くんってば?」


 女の子が少年に気付き、声を掛けた。

 しかし少年は全く気付かない。

 次に女の子は手袋を外し、気付きもしない少年の頬に手を当てた。すると、冷たさがスーッと少年の身体にしみこんでいく。


 急な冷たさにより、座り込んでいた俺はハッっと声を出しながら立ち上がった。

 いつの間にか店の中で俺は注目の的になっていた。。


「すみませんでした……」


 俺がそう一言いうと、皆が軽く微笑んでくれた。


「守くん?」

「あっどうも……」

「どうも…… って、うん!昨日ぶりだね!」


 俺の恥ずかしさで下がったテンションとは反対に彼女はとてもテンションが高かった。


「さっきからずっと座り込んでたけど、どうしたの?」


 どうやら俺だと気付かれていたらしい。

 俺はこのままだと埒が開かないので、相談することにした。


「えーと……買うケーキを悩んでまして……チーズケーキかプリンケーキで……」

「なるほど……よくわかりました! 私が選んであげるよ!」


 私に任せなさいと言わんばかりに、やる気満々だった。

 俺は折角なのでお願いすることにした。


 お願いしてから数秒でケーキは決定した。


「やっぱりプリンケーキ一択!」


「理由は何かあります……?」


「うん、私が大好きだから!だから私が好きなものを守くんには食べてほしいなぁと思いまして……」


 正直な理由だ。


「プリンケーキにします。ありがとう」


 俺がそう言うと彼女は視線をそらし、頬を少し赤らめていた。


 俺はプリンケーキを買い、彼女と店を出た。

 彼女がいなければもっと時間がかかっていたと思うので俺はもう一度、お礼を言っておいた。


「ケーキ……選んでくれてありがとう」


「どういたしまして……じゃあ、またね……メリークリスマス、守くん」

「うん、メリークリスマス」

「……いつか私の名前を呼んでほしいなぁ……」


 最後に彼女が呟いていた言葉は聞こえなかった。

 彼女は寂しそうな顔をして小さく手を振った。


 少しばかり、彼女の後ろ姿を見ていると、誰かと会っているのが見えた。

 見覚えがあると思ったら、うちの学校の先生だった。

 まぁ多分家まで送り届けてくれるのだろう……

 先生は彼女と一緒にどこかに行ってしまった。



 人通りも少なくなってきたな……

 店に入る前とは随分と様相が違い、寂しさすら感じた。

 帰るか……

 ふとそう思った時、袋に入っていたケーキの名前を見てみると俺のではないことが分かった。これは彼女のだ。まだ、そう遠くには行ってないだろうし、追いかけるか。



 ◇◇◇◇◇◇


 静かだ……

 俺がいつも歩いている通りとは違い、閑静な住宅街が広がっていた。すぐにあった曲がり角を右に行くと、男が女の子を刃物で刺している瞬間だった。



 俺はこの人たちに見覚えがあった。

 俺は咄嗟に声を発した。


「何しているんですか……先生……」


 そう言うと先生は狂気じみた笑みを浮かべていた。様子が変だ。


「どうして……彼女を刺したんだ……」


「彼女には理解して欲しかった。お前みたいな弱いゴミなんかより君を守ることが出来るのはこの僕だけだということをさぁー!! 分かってくれたかなぁー?」


「そ……そんなの……分かるわけない……逃げ……て……」


 倒れ込んだ彼女は弱々しい声で俺に訴えかけた。


 でも俺はもう逃げない……俺は強い……誰かを守るためなら何だってやってやる……


「さぁーーー! ゴミ掃除の時間だぁぁ!!!!」


「逃げてぇぇぇー!」


 彼女の叫び声と共に俺は地面に倒れ込んだ。

 一瞬にして理解した。俺は刺されたのだと……

 身体からは血がドロドロと流れ出ていた。

 もう身体は言う事を聞かず、指1本動かせない。

 そして、意識が朦朧としてきた。


「じゃあな、ゴミ!」


 死ぬっ……!


 俺が最後に見た光景は、彼女が俺を守る姿だった。

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