お手伝い編
「暇だ…」
囚われの姫の生活を始めて3日。暇という事実に気がついてしまった。1日目にマリッジブルー(断じて違う)事件を起こし、てんやわんやの騒ぎになってしまい、アレコレと回復のためにとお城に雇われているフワフワ人外系の方やガッシリ人型爬虫類などの人たちに王様のいいところをたくさん紹介していただいた。それで分かったことは、優しくて強くていい人と言うこと。後もう1つ、外見のことだが、みんな口を揃えていうのが、私は好みじゃないけど悪くはないよ。これはなんというか…期待はしない方が良さそうだ。
2日目は、お城の案内である。今まではグズメソ状態だったので案内どころではなかったが、私になってその状態を脱したので、お城の案内日になった。お城は古い欧米の型式だが、中に至っては最新式。蛇口をひねれば水もでるしお湯もでる。トイレだって水洗。なんとも不思議である。
でも、明らかに人間じゃない人たちがいて、囚われの姫がいるんだったら、私が元いた現実の世界と違って、ファンタジーでなんでもありの世界って感じなんだろなぁ。
そして、3日目。今日は特に予定はないとあのモフモフの3人に言われてしまった。だから惰眠を貪っていたが、まぁ時間が経てば目も覚めるし、暇にもなる。しかも、ちょっとここ最近お世話をしてもらってばっかりで、申し訳ない気持ちが強くなってきてる。
今は姫だとはいえ、元一般人。やっぱり、やってもらいぱなしでは罪悪感が募る。そこで、私はお城でのお手伝いを開始しようと思う。まずは、モフモフ三人衆をよびますかね。3人は、どんなに遠くにいても魔法の力により、このベルを鳴らせばすぐに来てくれるのだ!なんとも便利!
机の上にあるベルを持ち。チリンチリーンと優雅に音を響かせる。
…………………ポン!
軽快な音を鳴らして3人並んで登場した。
「「「お呼びですか。お姫様。」」」
ラグがすごい。一瞬来ないかと思ったよ。
「あのね、最近お城のみんなを頼りっぱなしでしょ。だから、お城で私が手伝えることないかなって。」
「いえ、エトワール様がお気にやむことはありません。我々が貴方様のお世話をすることは当然ですので。」
「でも、ベロ。あいつが直々にやりたいと言ってるんだぞ。やらせた方がいいんじゃないのか。」
「そうだよ。また、お姫様ストレス溜めておかしくなっちゃうよ。」
おかしくなるって… まぁ、やってもらいっぱなしじゃストレス溜まるのも事実だけど。
「そうだよ。私ストレス溜まってる。だから、お手伝いさせて。」
「……それなら。分かりました。いいでしょう。お手伝いを許可します。」
「許可するって。別に悪いことする訳じゃないんだから。」
「じゃあ、まず何する?」
「まずは厨房に行ってみましょう。」
「あ〜。あそこはいつも大変そうだからな。」
3人によると、厨房はいつも動いているらしい。これだけの人がいるから作る量が尋常じゃないくらい多いし、食事する時間も部署によってマチマチなんだとか。
それは大変だなぁ。でも、そんなところに行って逆に足手まといにならないかと心配になってしまう。
「よし。そうと早く決まれば行こうぜ!」
「もう、ケルったら。そんなに急かさないでよ!どうせ厨房でおこぼれ貰えるって考えてるんでしょ。」
「それではエトワール様、私のお手をどうぞ。移動します。」
「えっ、ありがとう。」
何それ!可愛すぎるだろ!!お手をどうぞって…案内の日にはなかったのに!
興奮気味にベロの手をとる。モフッとした手触りで流石のキューティクルと感心した。
「では、厨房前へ瞬間移動します。」
「えっ?」
ベロがそう言うと、目の前が光に包まれ、ジェットコースターのような浮遊感が私を襲った。