過去から来た美形軍医は、今日もペストマスクで顔を隠す【くちばしに毒薬を】二次創作
※こちらはお仕事で書かせて頂いた二次創作小説です。
■依頼主 No.37304様。
■作品名『くちばしに毒薬を Poison Imprinting』
https://seiga.nicovideo.jp/watch/mg613608?track=ct_episode
■ご依頼内容『私が描いた漫画の二次創作小説を書いてください』
https://skima.jp/request/offer?id=301399
※一部、「人体実験」などハードな表現が出てきます。
なんでも許せる方向けです。
少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです!
「まさかここは未来のドイツか?」
シュナーベルは街中でぽつりと呟いた。
数日前、シュナーベルはいつも通り自分の医務室にいた。シュナーベルはこの国の軍医だ。彼は軍から支給された黒い制服に身を通し、ナチスの紋が入った黒い帽子をかぶっていた。彼の容姿はとても美しかったが、時にその美しさが人を狂わせるため、いつの日か彼はペストマスクのような仮面を付けて顔を隠すようになった。
(妙だ。久しぶりに外に出てみれば、町が様変わりにしている。いや、何もかもが違いすぎる!)
久しぶりに来た街並みは、彼の知るものとはあらゆるものが変わっていて、シュナーベルはしばらくの間、途方に暮れた。そして出た結論がこれだ。“なぜか医務室を出た直後、自分は未来のドイツに来てしまった”だ。
そんな馬鹿な事あるものか、と何度も自身で否定したが、これは紛れもない真実だった。
なぜなら、街中にぶら下がるナチスの旗はそのままであるし、大まかな街の外郭も同じ。だが、新聞の年号、流行、食べ物。あらゆるものが自分の知る世界より進んでいる。
真っ先に困ったことといえば、自分が数刻前に出たはずの医務室に戻ることができなかったことだ。医務室の前には、なぜか屈強な体をした軍人が立っていて、シュナーベルを威圧した。
「なんだ、お前。その怪しいマスクは!」
「これはペストマスクで、怪しいものでは……」
「ここは貴様のような怪しいヤツが来るような場所ではない!ここをどこだと思っている?国のトップの私兵が集まる、あの親衛隊の基地だぞ!しかも、お前が入ろうとしていたのは、この国で最も恐ろしい研究所だ!死にたくなければ、さっさと帰るがいい!」
「帰るったって、ここが私の医務室なのに。……はて、研究所とは?」
「とにかく帰れ!」
軍人の男に首根っこを掴まれては、非力なシュナーベルは何もできない。彼はポイッと建物の外へ、文字通りつまみ出されてしまった。
「やれやれ。手荒な男だ」
シュナーベルは服に着いた埃や砂を払いながら、これからどうしようかと顎に手をあてて考え込む。その時だった。突然、シュナーベルは向かいからやってきた男に、ドンッ!と肩をぶつけられた。あまりの衝撃の強さに、シュナーベルの顔から仮面が取れて、カランッと床へ落ちた。慌てて仮面を拾い上げた時に気づいた。カバンが消えている!スリだ!
「待て!クソっ!なんて町だ!」
慌ててシュナーベルはスリの男を追いかけた。
+
結果として、カバンは手元に返ってきた。中身は薬草しか入っていない為、スリも中を開けて大層ガッカリしたことだろう。薬草は路地の上にばら撒かれており、カバンは投げ捨てられていた。
「やれやれ」
シュナーベルは薬草を一つ一つ丁寧に拾い上げて、カバンへ戻していく。最後に仮面に傷がないか確認してから装着しようと、手元へ目を落とした時、背後に人の気配を感じた。
「その服装。親衛隊の服ではないか?貴様、ここで何をしている?」
威圧的な言葉に似つかわしくない、可愛らしい女性の声だ。シュナーベルがそちらを見ると、金髪のツインテールをくるくるに巻いた女性がいた。彼女の服装は、自分とよく似た黒い制服だった為、彼女も軍人であることが分かった。
彼女はシュナーベルの顔を見るなり、ハッとしたように目を見開いた。途端の彼女の頬は真っ赤に染まり、もじもじと体をしならせた。
「お、お前。顔が良いな。どこの所属だ?な、名前は何というんだ?」
「シュナーベルだ。……一応、軍医だ」
(自分の医務室には入れなくなっているけど。軍医であることに間違いはない)
エイルはシュナーベルの顔に見惚れているようで、彼の言葉を何の疑いもせず信じた。
「シュナーベルか。私はエイル。エイル・V・ゾンマーだ。研究所の所長をしている」
「研究所?」
「ああ。私も君と同じ、ナチスの親衛隊だ。すぐそこにある102研究所は、私のラボでね」
+
エイル所長は、可愛らしい容姿でありながら、豊満な胸を持つ女性だった。彼女の胸についつい意識がいきそうになるが、軍医たるものそのような失礼なことはしてはいけない。……チラ見程度にしている。いつも見る時は仮面ごしなので、おそらくバレてはいない。
エイル所長は面食いだったようで、シュナーベルの美しい顔を大層気に入った。彼女はシュナーベルが住む場所に困っていると知るや、衣食住を提供すると言ってのけた。どうやら彼女がこの国の所長というのは本当のようで、大層お金持ちらしい。
こうして、シュナーベルはエイルに拾われる形で、彼女の提供した下宿先で寝泊まりすることになった。
ある日、エイルがシュナーベルの部屋へ訪ねに来た時(エイルはシュナーベルの顔が好きなので、何度もその顔を見る為だけに部屋へ通っていた)、彼女の部下も遅れて部屋へやってきた。部下の男は白衣を来ており、見るからにひ弱な研究員だった。
「エイル所長、またここへ来ていたのですか?」
「なんだ君。私とシュナーベルの逢引の邪魔をしに来たのか?」
「いいえ、滅相もありません!」
(逢引とは?エイル所長も面白い冗談を言うものだ)
シュナーベルは、エイルと部下のやり取りを見ながら、仮面の中でほくそ笑んだ。
「……おい、貴様。その花束はなんだ?」
エイルは部下の持つ薔薇の花束に気付いて、怪訝そうな顔をした。女性は花が好きなものだと思ったが、彼女は違うらしい。部下は嬉しそうに答える。
「実はそこの花屋で買ったんです!我らのエイル所長は、可愛らしい顔をしているのに、いつも仕事で忙しくしていますから、花でも贈って時には女性としての幸せを思い出して欲しいと思いまして。研究員たちでお金を出し合って、なんと薔薇百本の花束を……」
「くだらん」
エイルは渡された花束を手でぐしゃりと捻り潰した。「ああっ!」という部下の声を無視して、彼女は花束を床へ叩きつけると、今度は足でグリグリと潰し始めた。
「花など!そんな意味のないものの為に、金や労力を使うなど馬鹿げている!そんな時間があれば、少しでも早く研究の成果をあげろ!」
「ああっ、酷い!花がぐちゃぐちゃに……」
「フンッ。今がどんな時期なのか、貴様は分かっていないようだな?国の情勢も悪く、日本からのスパイも入り込んでいるかも知れないこの時期に、花なんて愛でている時間があるか!」
どうやら最近のエイルはピリピリしていたようだ。それを気にして、部下が花を贈ったようだが、それも逆効果に終わったみたいだ。
無残に潰されたバラの花束の上に、ポタリと深紅の液体が滴り落ちた。シュナーベルはそれに気づくと、エイルの手を取った。
「っ、貴様何を…っ!」
「怪我をしている。おそらく、薔薇の棘が刺さったのだろう」
「あ……」
エイルの指先から滲む血を見て、部下は顔を青ざめさせた。
「なんで……花屋は棘を一本一本、丁寧にハサミで切っていたはず」
「君が大量の薔薇を一気に注文するから、花屋も焦って棘ありの薔薇を花束に入れてしまったのだろう」
部下の男はシュナーベルの言葉に愕然としている。まさか自分のプレゼントで敬愛する上司が怪我をするなど、彼にとってはあってはならないことなのだろう。
シュナーベルは怪我をよく見る為に仮面を外すと、エイルの手を見た。幸い、棘は中に入り込んではいないようだ。シュナーベルは怪我の上をぐっと指で押した。
「圧迫止血だ。このぐらいの怪我なら、すぐ血は止まる。棘も体内に入り込んでいないようだから、すぐ治るはずだ」
ふと顔をあげると、エイルはシュナーベルの顔を見てポッと顔を赤らめていた。本当にこの顔が好きらしい。
「お前の顔は本当に美しいな」
「……美しい花には、棘がある。エイル所長も、気をつけるといい」
エイルの賞賛の言葉に、シュナーベルは静かに忠告を返した。彼女の血が止まると、すぐに仮面を付ける。
「ああ、決めた。今、決めたぞ。喜べ、シュナーベル!お前を今度、私のラボへ連れて行ってやろう!」
「なっ、所長!?そんな、また勝手に!」
「うるさい、私は所長だぞ!文句があるのか?」
エイルはにんまりと笑うと、シュナーベルの仮面を指先でつついた。
「私は貴様を気に入ったんだ。ここ数日、お前と話していて、医療の心得があることは分かったし、何より顔がいい!仕事中も傍にいれば、私のテンションも上がる。というわけで、明日から君も一緒にラボへ来るように」
+
102研究所。そこへ行ったシュナーベルは当初浮かれていた。建物内には、自分の医務室はやはり無かったが、見慣れた雰囲気に近い建物の造形、医薬品の匂いに心躍った。
「ここが君の実験室だ。実験体でも何でも、必要なものがあれば言ってくれたまえ」
エイルに案内された部屋には、ホルマリン漬けされた動物が沢山いた。なんだか怪しい匂いもするが、医療実験でマウスを使うのは当たり前だ。シュナーベルは首を傾げつつも、無理やり納得した。のだが……。
診察台にくくりつけられた裸の少女を見て、シュナーベルは目玉が飛び落ちるかと思う程驚いた。
「なんだ、どういうことだ?」
+
少女の名前は、ミア・ゾラック。シュナーベルが少女を見つけた時、彼女はあまりにも貧弱で体が細かった。このままでは衰弱死すると思い、あの手この手で少女の体力を取り戻すべく、シュナーベルは働いた。彼は医者だ。眼の前に弱っている人がいれば、助ける為に無意識に動いていた。
「そうか。エイル所長は、この少女を助ける為に私を研究所に呼んだんだな」
己を拾ってくれた彼女の事だ。きっと根は心優しい人なのだろう。癇癪を起こして花を踏みつぶすことがあっても、善意で人助けをできる人なのだ。……シュナーベルは、その時そう信じて疑わなかった。
真実は全く違うのだが、この時代を生きていないシュナーベルがそれに気づくはずもない。
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「シュナーベル少尉って奇妙だな」
「ペストマスクなんて16世紀の遺物だろ?あんなものペストにきかないってことは、今じゃ誰でも知ってる常識だろ?」
「今は19世紀だから、三百年前の知識か。一体どこの古代の文献を見てきたんだか」
「さっきなんか、サラマンダーのたまごはどこにあるかって聞かれたぜ」
「俺は、世界樹の枝が欲しいって」
「僕が聞いたのは、ユニコーンの角とケルピーのたてがみ。どれも空想上の物じゃないか。彼はおとぎの国から来たのか?」
「私たちのことをからかって遊んでいるのかも知れないな。まったく、こっちは忙しいってのに」
研究員たちは、早くもシュナーベルのことを煙たがっていた。誰もが彼の事を、頭のおかしいヤバイヤツだ、と思った。
+
(このミアという少女、とても心優しい子だ。私がこの時代に来て、初めて血の通った人間を見た気がする)
シュナーベルはミアのことを気に入り始めていた。初めは守らねばならない患者だと思った。だが、彼女は体こそ弱かったが、心が強い子だった。自分に出された僅かな食事を、窓から入ってきた小鳥にやっているのを見た。
「この小鳥はね、前にここの人にいじめられて怪我をしていたの。私がその時助けてあげたら、懐いちゃっていつも来るようになったの」
ミアは嬉しそうにそう言って、小鳥の体を撫でた。
「それにしても、先生は私にご飯を食べろって言うくせに、自分は全然食べないんだから!」
「ああ、飯か。忘れていた」
「もう!ほら、今日は美味しそうなステーキじゃない!ちゃんと食べないとダメよ」
研究所で出されるご飯は上等な物が多い。ミアはまだお粥といったもので慣らしている為、肉類は食べられない。シュナーベルは少し気が引けたが、仮面を外すとステーキを切り分けて食べた。肉はまだ中身がほんのり赤かった。
「先生。これお肉赤いけど、大丈夫なの?」
「ああ、豚や牛は表面さえ焼いてしまえば菌は死ぬ。鶏だけは中身もしっかり焼かないと、食中毒になるが」
「ふーん。どうして?」
「鶏は生まれた瞬間から、菌がいるんだ。生卵を食べてはいけない理由はこれさ。豚や牛は生まれつきの菌はない。解体する時に、菌が付くんだ。たとえば、牛を解体する時は、最初に胴を真っ二つに切る。その時に、肛門を切るだろう?すると、刃に便がつく。便のついた刃で肉を切断していくから、肉の表面にはすべて便の菌が付着する。だから、表面をしっかり焼く必要があるんだ」
「うへぇ。お肉に、うんちの菌が付いてるってこと?汚い」
「ああ。でも、ちゃんとしっかり焼けば、菌は死ぬさ」
「うーん」
「鶏の卵もそうだ。鶏は卵を出すところと、便を出す穴が一緒だから、卵の殻には便が付いて……」
「やめて!もう食べられなくなっちゃう!」
「とまあ、鶏肉にはカンピロバクター。卵の殻には、サルモネラがいるってこと。ミアくんも小鳥に触る時は、カンピロバクターに注意しないとダメだよ」
+
小鳥はある日を境に、どんどん衰弱していった。
「小鳥さん、今日も元気ないね」
「何かの病にかかっているようだ。調査したところ、この辺りの鳥は何かの菌にやられているみたいだ」
小鳥には、黒い星のようなマークが一つ、浮かび上がっていた。おそらく菌に関係しているのだろう。
「どうにかならない?」
「うーん」
「先生、お願い」
ミアにそう頼まれては断れず、シュナーベルは小鳥の為にあらゆる処方を試した。しかし、それも全て無駄に終わった。小鳥は死んでしまった。
+
ある日、シュナーベルが研究所へ来ると、様子が違っていた。自分の実験室からミアが消えていた。慌てて彼女を探していると、とある研究室の一室に檻の中に入れられている子供たちを発見した。そこにミアの姿もあった。
「ああ、遅かったな。シュナーベル。モルモットたちには、既に真菌を投与した後だ」
鳥の菌を何倍にも増やして、独自に開発した菌を用いた。……エイルは何か話しているが、シュナーベルの頭には入ってこなかった。
エイルにとって、ここにいる子供たちはミアを含めて、全てが実験体だったのだ。ここは人体実験をしているヤバイ施設で、既にミア達は虫の息……。
ああ、やっぱりそうだ。この時代のこの国に来てから、ずっと思っていたこと。この国の人たちはおかしい。人を人だと思っていない。まるで血の通っていない者たちばかりだ。
……そう、ミア以外。
「美しいだろう?これが実験結果だ。この薬は、戦争で素晴らしい武器になる」
エイルの口走る言葉に、シュナーベルはマスクの中で顔を歪めた。彼女の美的感覚がズレていることは確かだ。
「エイル所長」
シュナーベルの頭の中には、ミアを助けることしか無かった。彼は仮面を外すと、そこに仕込んでいたとあるものを取り出した。エイルの方を見れば、案の定、己の顔を見て見惚れていた。
まるでキスをするようにエイルに顔を近づければ、彼女はゆっくりと目を閉じる。彼女がゆっくりと口を開けた瞬間、シュナーベルはそれを彼女の口へ流し込んだ!
「んぐっ!?き、貴様、何を私に飲ませた!?」
「エイル所長!?」
「毒薬だ」
周囲が絶叫する中、シュナーベルは平然としていた。
「毒薬だって!?そんなもの、どこに仕込んで…!?」
「入口で身体検査はあったはず…!まさか、」
ペストマスクのくちばしに毒薬を…!?
「エイル所長。美しい花には、棘があると言ったはずだ」
「あいつ、まさかずっとあの仮面の中に毒薬を隠し持っていたっていうのか!?」
(必要な患者にとっては薬になっても、それ以外の人間には毒になることもある。エイルに投与した薬はそういうものだ。だが、それを言う必要はないな)
シュナーベルが去ろうとすると、エイルが慌てた。彼女は苦し気に息をしている。
「貴様、それでも医者か…!?」
「……私は人を治す医者だ。だが、あなたは人ではない。人体実験で人を傷つけ、死なせるなど、悪魔のすることだ」
「っ、はははっ!何を言っている!それなら、貴様も同じだ!私は人間だ!どれだけ人を殺していようが、殺人者だって人間だぞ!?お前が今、私を見殺しにすれば、お前はれっきとした殺人者で悪魔だ!」
シュナーベルは少し足を止めた。
「あなたとは違う」
「違うわけがない!お前だって同じだ!お前も自分の価値観で、人間かそうでないかの線引きをした!ハハハッ!シュナーベル!見えるぞ、お前の未来が!グッ…!」
エイルは血を口から吐いた。慌てて研究員が彼女をなだめる。
「所長!」
「うるさいっ!シュナーベル!お前はいつか地獄へ落ちる!その時、私が先に地獄で待っていてやる!ハハハハハハハッ!ゲホッゲホッ」
エイルの血でむせる声を聞きながら、シュナーベルは部屋を後にした。
+
せめてこの悪質な研究所を、ガス爆発で全て消し去ってしまおう。
「先生、何してるの?」
「これは今、ガスを部屋にためて……え、ミア、くん?」
そこに立っていたのは、先ほど失ったと思っていた少女が立っていた。幻かと思えば、本人だ。
「どうして…?」
「分かりません。私だけが助かって……」
「待ってくれ。君の手首を見せてくれ。この星印。あの鳥が持っていたものと同じ……」
「あっ」
声をあげたミアから話を聞くと、なんと彼女はあの小鳥を生で食べたのだという。小鳥が死んだことがショックだったため、小鳥と共に命を終わらせたいと願い、小鳥を自分の中へ取り込んだのだと。
「なんということを」
「先生が鳥は絶対、生で食べちゃダメって言ってたし、これで死ねるかもって思って」
「馬鹿だなぁ。鶏を生で食べても死ねないよ。食中毒で三日三晩、腹痛でのたうち回るだけさ。だけど、君がピンピンしているのはどういうカラクリだ?」
「たぶんあの小鳥、何かの病気にかかってましたよね?その病気と、私が今回入れられた菌がうまく攻撃しあって、相殺されたのかも知れません」
「……ほぉ。それは面白い考えだ。だが、その話はここを出てから、ぜひ詳しく聞かせてくれないか」
シュナーベルはガスを部屋へ充満させるのを諦めると、建物に火を放った。
ナチス親衛隊102研究所は、不審火によって燃え尽きた。現場から逃走する二人組が、周囲で目撃されており、国は彼らを指名手配した。
しかし、それ以降の目撃情報は寄せられておらず、彼らがどこへ逃げたのか等、詳細は不明である。