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「愛しているわ、この世界の誰よりも」
そう言って私は力を失った。この力はあの人にとってどうしても必要なものだけど、言わずにはいられなかった。
「ゼロ」あの人の名を呼ぶと自然と胸が高鳴った。
魔法のように。
私の身を包む象牙色のローブが朽ちていく。
裸身になった私はほんの数秒間、自身がこの世界に対して取り返しのつかないことをしてしまったのではないかという思いを拭えなかった。
もっと別のやり方があったのでは?
無言のゼロが着るもののなくなった私のために暗がり色の肌着とシルク織りのビロードを手配した。
鴉の使い魔に命じてよこされた新しい装束を私は恥らいと共に身につける。
ゼロは私から逃げるように背をむけ玉座に腰掛けると私はそれを追いかけて左脇にすがった。左手の甲に口づけをする。
そして、彼の言葉を待つ。
私が如何に彼を愛しているか。
あまりにも言葉足らずで不十分ではあったかもしれないが、十全に伝わったはずだ。
私はゼロの応答をひたすらに、待った。
心臓が鳴る、壊れてしまいそうなほどに。
秋の終わりの夜のこと、毎夜のように静寂を保っていた木々は今夜に限ってさざめいて、まるで私の挑戦を嘲笑っているかのようだった。
ゼロが動いたので、私も立ち上がって向かい合う。
待っていたのは、言葉ではなく口づけと抱擁、その他あらゆる形而下的な愛情を具象したもの。それが彼の返答だった。
踊るように、叩きつけるように、弄るように、それは刹那の間、無限に繰り返された。