第七章 宇宙人を信じますか?
「こちら三号車、ホシの捕獲に成功。先ほどの報告に加えて計二体の捕獲を完了。目的地に向けて輸送を開始する。また、ホシの遺体についても回収。」「こちら捜査本部。報告了解。目的地に向けて運搬を開始せよ。」
大きなトラックを国道で転がしながら、警察の無線に耳を傾ける。趣味とは言え、盗聴はよくない。だが、妻や子供にも逃げられ、人生に楽しみを失った男の趣味なのだからそれくらい、許してほしい。それに、この日の盗聴内容には例外が沢山あった。
ホシを逮捕ではなく捕獲、しかも署ではなく目的地に輸送?イカれてる。この場合、ホシはどんな奴だろうか?よっぽどとんでもない犯罪者か、それか宇宙人だ。そう宇宙人に間違いない。カーラジオでも流れてきていた宇宙人のニュース、ここ数年でもとびきり刺激的だった。
だとしたら今パトカーには宇宙人が二匹いるのだろうか?宇宙人がいるとしたらワクワクする。好奇心というものが湧くのはいつぶりだろうか。だが、接触するには警察にも接触する必要があるということだ。いや、今の自分に一体何を恐れることがあるだろうか?家族もいなくなり、仕事にも飽き飽きした。今更警察に捕まったって気にすることはない。
半ば自棄になってナンバープレートを外しアクセルを踏んでサイレンを探す。広い通りを抜けると、聞こえてきたサイレンの音を追いかける。人通りが少ない道をパトカーが走っている。アクセルを踏みしめた。すさまじい衝突音と共に、パトカーが吹っ飛んだ。警官が出てこない所を見ると意識は無事飛んだらしい。もしかしたら死んだのかもしれない。ドライブレコーダーでバレないようにタオルを顔に巻いて、パトカーに接近する。後部座席に白い宇宙人がいた。一匹は事故のせいで死んでしまったようだが、もう一匹は宇宙人は無事のようだ。窓ガラスを割って宇宙人を引っ張り出す、初めは暴れていたが、こっちに敵意が無いことが解ると安心したのか抵抗しなくなった。こうなると可愛いものだ。もう一体の遺体は置いくしかないだろう。体液の痕で追われるのは避けたい。
ただ、へこんだトラックをそのまま運転するわけにもいかない。近くにあった自転車のカギをトラックの荷解きようのカッターでぶった切りこぎ出した。
エイリアンを手前の籠に乗せて、まるであのエイリアン映画みたいだ。空が飛べれば逃亡経路として完璧なのだが、そうはいかないらしい。家に帰り宇宙人をアパートに入れた後、自転車を近くの川に捨てた。
戻ってくると電話が非通知から電話がかかってきた。
「もしもし」
「宇宙人を信じますか?」
宇宙人残り64人 誘拐犯70億人
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