第七十二章 東京インベーダーズ
最後の一人目を救出して研究所に戻ると、私は意識を失った。強い打撃で意識が飛んだようだ。目を覚ますと縛られ周りをエイリアンたちに囲まれていた。そうか、私は騙されたらしい。ゲージの中にいたエイリアンだけが申し訳なさそうにこちらを見つめていた。最初に助けた一匹に裏切られてしまったようだ。
「なぜ、こんなことを?」「君には感謝しているよ、博士。でも私たちはここにはいられない。人間とは一緒に生きていけないんだ。」宇宙人は淡々と呟いた。彼らはこの狭い部屋を後にした。一体どこにいくのだろう。そして、私のこの縄はいつほどけるのだろうか。
宇宙人の生存数がゼロになり、人類の勝利が確定したニュースが世界中を駆け抜けた。あらゆるニュースが人類の勝利を報じた。世界中は湧き、再び日常が戻ってきたことを人類は喜び合った。爆破で甚大な被害を受けた政府機関も今ではすっかり復旧している。
人類の勝利から100年が過ぎた今、人類は老いる人類と不老の人類で二分されるようになった。不老の人類が現れたのは宇宙人の肉体から作られる、不老細胞の人体への注入や移植がノーマルになったためだ。
はじめは富裕層のものだった不老もこの100年で徐々に一般市民に広がっていた。老いないということは病気のリスクなども回避できるため、人類の死亡率は格段に低下し、人口は膨れ上がっていった。それとは対照的に老化を受け入れる今までの人類は徐々に減っていった。親と子が同じくらいの見た目で存在したり、見た目が若いままの老人がいたり、人間の命は狂って行った。始めは倫理に抵触するという意見で散々もめたらしいが、今となっては普通になってしまっている。
だが、膨れ上がった人口は地球の自然や資源を尋常じゃない勢いで摩耗させた。結果、人類は地球にこれ以上住めなくなってしまった。だからこそ、宇宙へ第二の母星を求める計画が動き出した。
パイロットの数は72名、巨大なロケットを各国から発射し、宇宙でドッキングさせ、移動する巨大な宇宙ステーションを作成する。それが人類の出した計画だった。そして新たな星に知的生命体がいた場合は対話を図ることが求められている。だが、その実、人類のための侵略計画だった。ロケットには大量の武装が積まれ知的生命体を滅ぼすための準備は進められていた。計画の名前はインベーダー計画。新たな星を侵略して星を手に入れるのが、作戦名だ。
そして、私はそのパイロットたちのリーダーとして、先導する責務を負った。パイロットは全員老いることのない不老細胞の持ち主であるため、長期の作戦も予想されている。今なら100年前の小さな宇宙人たちの気持ちが少しわかる気がする。彼らは侵略者として教科書で語られているが、その実地球という星で住みたかっただけなのかもしれない。だが、人間という先客がいた以上、戦うしかなくなってしまったのだろう。当時の資料に目を通して感慨にふけりたいが、そんな暇はない。日本からの隊員たちに声をかける。「東京インベーダーズ集合だ。明日のためのブリーフィングを始める。」
チャイムの音が聞こえる。入学式は緊張も何もなく、長ったらしい話を聞きながら過ぎていった。教室に戻るとクラスメイトが話しかけてきた。「宇宙人って知ってる?」当たり前だろう。うざったいなと思いながら、無視する気にもならず答えてやる。「あの100年前に全滅した奴らだろう?」「そうそう、でもさ、絶滅してないらしいんだよね。近所に目撃情報があったんだよ。」まさか、そんなわけがない。宇宙人はあの日絶滅した。それともうちのモチタが見つかったのか?帰ったら注意しないとな。
宇宙人残り0人 地球人150億人
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