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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第七十一章 時計仕掛け

 人間に捕獲され、研究所に連れて来られた今私は恐ろしい物を見ていた。老いることのないマウスだ。我々の体液や細胞などを活用し、人類は不老の再現に至ったようだ。最早、我々の存在の必要性は人間にとって無くなってしまったかもしれない。人類は不老に到達したのだから。だが、殺されない所を見るとまだ必要意義があるらしい。

 ゲージの向こうには白い大きな生物の遺体が転がっていた。これからここで何が始まるのか、私には予測がつかなかった。ある日突然、ゲージの中の私に注射が打たれる。すさまじい痛みと共に体が大きくなっているのを感じた。目線は人間たちと同じくらいの高さだ。私はすっかり大きくなってしまったらしい。そして鏡を見て気が付いた。あの大きな白い生物と同じ姿になっていることを。モジュールは腕から抜け落ちてしまった。

 人間たちは私の反応を記録してこちらに興味津々だ。そして、大きく成長した私に彼らはもう一度注射を打った。体が疼く、体の変化が止まった。まるで、最初の注射を打たれる前に戻ったようだ。私はそこから生活を続けた。どれくらいの時間が経ったのかわからないまま、姿は全く変わらなかった。だが、周囲の人間たちの変化がないことを見ると、あまり時間はたっていないのだろう。それでも私はもう一度自由を手に入れたかった。外の世界を見に行きたい。その気持ちは時間が経つほど強くなっていった。

 だからある日脱獄を計画した。見ているこの部屋だ。仕組みは理解していた。研究者たちの持っているカードキーを活用すれば、ゲージのカギは開くはずだ。研究者の一人が今日もデータを取りに来る。そこを狙うと決めていた。私はゲージから素早くカードに手を伸ばし、ゲージのキーを開ける。驚いた研究者が騒がないようにすぐに気絶させた。体が大きくなったおかげで力も強くなったのは幸運だった。だが、研究所内でサイレンが鳴り響く、ガラスを割って、外に飛び出す。

必死で走った私が外で目撃したのは変わり果てた街の光景だった。閑静な住宅街だった街並みは巨大なビルがそびえたち、私を見下ろしていた。どれくらいの時が経ったのだろうか。慌てて日付の書いたものが無いかを探した。巨大なビルの電光掲示板には今日の日付と今の時刻が表示されていた。私が捕まってから100年の時が過ぎ去っていた。

それを見た瞬間、背後から発砲音が聞こえた。私の足や腹部を熱さと痛みが通り抜ける。体が大きくなったことで、的が大きくなってしまったらしい。痛みで立っていることができない。意識が血と一緒に流れ出していく、ここまでだ。私はもう生きてはいられないだろう。私の周りを人間たちが囲む、顔を覗き込んだのは、100年前と変わらない姿の研究者たちだった。人間はどうやら我々の知っている生物ではなくなってしまったようだ。


宇宙人残り1人 老いない70億人


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