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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第四章 過去と覚悟

やはり人間を信じるべきではなかった。安易な気持ちで安心し、仲間に信号を送ったのが失敗だった。反応をくれた仲間は人間が飼育していると思われる四足歩行の生物に殺されてしまった。ほかにも数人だが犠牲者は出ているようで、人数は68人まで生命反応が減っていた。

窓から逃げ出した私は、またさまようことになってしまった。地球はやはり過酷な環境に様変わりしたらしい。昨日接触した個体とコミュニケーションを試みたが、言語が通じなかった。かつてこの星にいた生命体にはあれで通じたのだが、言語形態すら大きく変化したならば、私は知るしかない。この星の現状を、そして歴史を。ただそれを知れる場所すら私たちにも分からない。そもそも言語形態を理解できない。一旦仲間数名と合流してこのことを伝えつつ、共同で情報収集にあたるべきだ。

 手ごろな路地裏に潜んで集合信号を出す。近くにいる四名ほどから反応があった。仲間が思った以上に近くにいてくれて安心した。しばらくすると仲間たちと合流できた。来たメンバーの中には軽傷を負っている者もいたが、情報収集には十分な活動能力を残しているようだ。

「この星の生命体は危険な存在だ。既に仲間が数名やられている。私の目の前で死んだ仲間は、奴らの手懐けている生物にやられた。他の仲間についても、この星の環境や人類の手にかかって亡くなったと思われる。だからこそ我々は彼らのことをさらに知るべきだ。かつて平和だったこの星に何があったのが。」仲間の一人が嘲って口を出す。「知る?どうやって?俺たちは殺される。このままじわじわと。音の鳴る巨大な生き物に追われるのももうごめんだ。」「私も見た。音を鳴らしながら追いかけてくる。元々、一緒に行動していた仲間もそいつに連れていかれた。」矢継ぎ早に仲間たちは不安を吐露していく。「化け物だろ?あんな奴らのことを知ろうって?馬鹿なのか?クジラも殺されてしまった今、俺たちは死ぬまで怯えながら生きるしかない!」何もしなければそうなのかもしれない。だが、知ることで状況は変えられるはずだ。「だからこそだ!今後怯えて一生を過ごすつもりか?こっちが殺される前に、奴らを滅ぼす!そのために知らなければいけない、立ち向かう術を!」身を切るような沈黙がそこにあった。絶望の先、あるかも分からない希望に手を伸ばす。私たちにはその覚悟が必要だった。今まで一度も口を開かなかった仲間が唐突に口を開いた。

「実は当てが一か所だけある。奴らの幼体の学習施設だと思われる場所だ。底に数えきれないほど薄い板に情報が載っているのを見た。絵だけでなく何か記号のようなものもあったが、あそこなら解読できれば情報が手に入るかもしれない。そして、奴らの言語形態の理解にもつながるはずだ。」「場所は?」「ここからそう遠くない。ただ昼間は幼体や成体がいる。潜入するなら夜が良いはずだ。」「なぜ今になって教えてくれたんだ?」「知りたくなった。俺たちが全く変化しなかった125万年と彼らの125万年。一体何が違うのか。」

目途が立って安心したのか、沈黙の中にわずかだが安堵感が生まれたようだ。「情報共有感謝する。情報を集める仲間と、仲間を集結させるメンバーで分けてここからは行動したい。私は彼にその学習施設に案内してもらう。他のメンバーは周囲を探索しつつ集合信号を出してくれ。仲間を集めるんだ。」皆、完全に納得したわけではないがそれぞれ覚悟を決めたようだ。だがその時「あの化け物の鳴き声だ!こっちに来るぞ!」鳥でもなく動物でもない謎の音が徐々に迫ってきていた。「各チームで分散!無事を祈る!」グループごとに別々の経路で逃走を開始した。我々は高所に逃げたが、その時化け物を目撃した。

背中に赤い光を灯した白と黒の化け物だ。もう一方のチームを発見し、追いかけているようだ。遠くに仲間と化け物が消え、次の瞬間大きな衝突音がした。


宇宙人残り67人 化け物使い70億人


読んでくれてありがとうございます。

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