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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第四十六章 爆ぜる

 仲間たちの亡骸が出てくるのには時間がかからなかった。人間を巻き込んで自爆して死んだ仲間の亡骸は遺体というよりも体の一部だった。人間の捜索チームは、血眼にして探していたが、死体の数は未だ各国で動き出した我々の数には及んでいなかった。袋に包まれる同胞をみんな悲しそうに見つめていた。

 トラックに乗り込んで次の地域に運ばれる間、車内では誰も話さなかった。その沈黙を打ち破るように人間の一人が喋り始めた。「君たちにも捜索を協力してもらいたい。可能であれば投降を呼びかけてほしい。」そう軍人は告げると我々に銃を手渡してきた。「この銃は反動が少ない。君達でも問題なく扱えるはずだ。護身用だと思って持っていてくれ。」思わず、「我々に仲間を撃てと言うんですか。」と呟いていた。「いや、君たちの身を守るための物だ。あくまでも護身用だ。」そうは言っていたが、銃口を向ける相手なんて決まっていた。

大雨の中、トラックは到着した。湿り気と草の匂いを風が運ぶ中、私たちは地面に降りた。

各々で分かれ茂みに入り、以下の言葉を母星語で繰り返した。「同胞よ!このまま爆破を決行しても意味は無い!投稿すれば安全は保障される!」だが、反応は無かった。遠くで爆発の音がする。仲間では無いことを祈りながら、呼びかけを続ける。それにしても人間たちに見つかったから自爆を選ぶ彼らを仲間でありながら恐ろしいと思った。

自分にはそんな勇気は無いそう思った時だった。茂みが動き、我々の目の前に仲間が頭を出した。「援軍か。」「違う、投降を呼びかけに来た。」「裏切者なのか。」彼はゆっくりと爆弾を構えた。「なあ、このままでは人類も我々も両方滅ぶんだぞ。それでも良いと思っているのか。」「我々は作戦を完遂して、人類を滅ぼす。それが全てだ!」そう声を荒げると、爆弾のスイッチに手をかけた。恐らく、我々ごと巻き込んで死ぬつもりだろう。仕方ないんだ。銃の安全装置を外し、爆弾を撃つ。仲間の目が悲壮感をたたえながら爆発で仲間は吹き飛んでしまった。

 すぐに救援の人間たちが来たが、興奮が収まらなかった。銃を撃った姿勢のまま動けなかった。義手の仲間が声をかけてくれてようやく、我に返ることができた。仲間を撃ってしまった。自分の命を守るためとはいえ、殺してしまったのだ。「すまない。」「いや、仕方が無かったんだ。」

 思わずため息を吐いた。ここの発電所の爆発は阻止できたということだ。「ではいくぞ、次の地域に。」義手の仲間と一緒に飛行機に乗り込む。「次の地域ではきっと投降してくれる仲間がいるはずだ。」そんな根拠のない希望を述べながらトラックで眠っている。人間たちは我々を運んでいる。仲間を救わせるためか、それとも殺させるためか。

 仲間の死に様が頭に焼き付いて離れない。あの中にインベーダーはいたのだろうか。いや、奴なら捕まったりするようなヘマはしない。それくらい、強かな奴だった。作戦を止める。仲間を救う。いや、実際には違うんだ。仲間も発電所も人類も本当はどうでもいい。助かりたい。命を落としたくない。死にたくないという気持ちしかなかった。それを隠すために仲間だの平和だのを上着としてまとっているだけだ。

 きっとあの義手の個体もそうに決まっている。きっと誰もが恐怖を必死に飼いならしているんだ。そうだって、言ってくれ。仲間を殺したその日、生きていて良かったと思ってしまった。そう思わずにはいられなかったのだ。次の地域に運ばれていく、仲間を助けるためか、それとも殺すためか。


宇宙人残り26人 運送屋70億人



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