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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第四十五章 恨みの声

宇宙人が原子力発電所を吹っ飛ばそうとしている。そんな陰謀とオカルトにまみれたニュースが全世界で放映された。該当地域の市民は避難、警察や軍隊は武装し駆り出されてしまった。宇宙人保護論者も今回の事件にはさすがに気が引けたのか、デモも収まった。

 私も今こうして飛行機に乗って故郷に帰ろうとしているのだから、被害者の一人だと言えるだろう。だが、宇宙人の中にも裏切り者がいるという事実に驚いた。日本にその宇宙人たちがいるらしいが、それこそ嘘を吐かれていたら、最も別の狙いがあったなら人類は非常に危険だ。

 だが、私の心配と裏腹に時間と共に宇宙人の生存者数は徐々に消えていく。一人また一人と。数が0になった時に始めて安心できるという学者もいるが、仲間を裏切ったエイリアンたちは我々と生きていくのだろうか。ずっと、我々と?

 彼らが半分不死身なのはもはや周知の事実だった。日本で判明したそれは、わが国の研究機関でもさらに研究されていた。それを利用して我々人類全員が不死身になれるなら、そう考えるとワクワクしてしまう。人類の野望の一つが宇宙人との交流で叶う。なんて言ってしまえばロマンチックな話だが、その内情はグロテスクだ。

 飛行機でイヤホンをして音楽を聴きながら、うたた寝をする。だが、その眠りからはすぐに醒めてしまった。巨大な揺れのあと機体が急降下し始めたからだ。「乗客の皆さん落ち着いてください。今からこの機体は海上に不時着します。衝撃に備える姿勢を取ってキャビンアテンダントの指示に従ってください。」機長の不安を打ち消そうとする声が響く。

 「宇宙人どもめ!」最初に言ったのは誰だったろうか。根拠もないのに彼らが槍玉に上げられるのには時間がかからなかった。怨嗟の声が機内のいたる所から響き、海と陸の距離は近づいて行く。恐怖心が敵を作るというのは間違いではなかったようだ。轟音が響き渡り、着水の音がする。キャビンアテンダントたちが、客席を回り、異常が無いかを調べているらしい。運よく生き残ったらしい。けが人は多数いるようである。救助の船が来るまではどうにか待つしかないだろう。その後も機内では宇宙人への恨み節で溢れていた。

 

宇宙人残り27人 糾弾者70億人


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