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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第四十四章 地獄を走れ

おかしい。少し前から警備の量や質が明らかに変化している。原子力発電所に近づくほど人間たちの警備は厳しくなっており、容易に超えられないようになってしまっていた。まさか裏切者がいて、既に原子力発電所を狙いにしていることが露見したのだろうか。

 武装している場合もあり、このままでは通り抜けられそうにもない。「どうするインベーダー。このままじゃ、辿り着けない。」「囮を使おう。」「囮?」首を傾げた私に彼は容易く告げた。「君の事だよ。」「それは死ねということか。インベーダー。」「ああ、俺も含めて誰かが死ぬことになるだろう。俺も含めて囮になる。」インベーダーは冷静に続けた。「爆弾は人数分ある。誰か一人が目的地に達せばいい。だからバラバラになって進むんだ。」

 爆弾は小型の爆弾を人数分既に拵えていた。日本の薬局で盗んだ薬品と肥料を加工して作った。材料を集めるのは今後は厳しいだろう。誰か一人でも到達できれば、その爆弾を使って吹っ飛ばせる。人間に逆転ができる。そう思えば安いものかもしれない。

 「もし見つかったら?」答えを知っているその質問を私はあえて投げかけた。「爆弾を使うんだ。人間を一人でも巻き込め。犠牲が出たら、そっちに人数が割かれる。生き残ったメンバーはそこをうまく通り抜けるんだ。」その言葉に全員が沈黙する。だが、爆弾は既にそれぞれの手の中にあった。「では、行こうか。」インベーダーが戦闘に立って茂みに潜り込んでいった。それを追って次々と茂みに入っていく。

 それぞれ爆弾を背負ってバラバラになって進む。仲間の足音はすぐに聞こえなくなり、人間たちの足音に変わっていった。自分より三倍大きい生き物が、とんでもない数で自分を探している。その事実が恐ろしい。小さな物音でも立てれば、怪しまれ、最後にはさらわれてしまう。それか殺されてしまうかもしれない。

 息を殺して警備の目をかいくぐる。手の震えを抑えながら、前に進む。警備ラインをどうやら通り過ぎたらしい。深呼吸をし、心が落ち着くのを待つ。他の仲間たちは無事だろうか、そう思った矢先に後ろから爆発音がした。どうやら誰かが見つかったらしい。銃声と叫び声が響いた。走れ走れ。今が好機だ。原子力発電所まで走り続けろ。仲間が時間を稼いでいるうちだ。

宇宙人残り28人 捜索者70億人


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