第三十九章 放たれる
天気は悪いままだった。この国に宇宙人が来てから数日、まるで新しいアトラクションみたいな扱いを受けているらしい。チケットは高値で取引され、警備は厳重にされている。でもアイツらは何もわかっていない。イズミという日本人の男が日本のテレビで言っていたことこそ、奴らの正体だ。
キュートな見た目の危険な侵略者、それがあいつらの正体だ。実際、奴らに殺された日本人だっている。どんなに可愛くても、奴らが侵略者であることに変わりはないのだ。だから俺は今日アイツらを撃つ。護身用の拳銃で。税関みたいな厳しい検査があるが関係ない。
拳銃は俺が持ち込むんじゃないからだ。俺たちは銃の分解されたパーツと銃弾をそれぞれで持ち込む。人込みの中でそれを組み立てて奴らに向けてぶっ放す。そう決めた。SNSでエイリアンハンターになって地球を守ろうという、グループが立っており、それに参加したのがきっかけで、俺は銃弾を持っていく係だ。同じグループの人間は、首に布を巻いている。
入ると、遠くに首を巻いた人間の一団が出来ていた。人混みをかき分け前に進む。どいてくれ地球をそしてこの国を守るためなんだ。エイリアンを一匹残らず皆殺しにしてやる。
「あんたで最後だよ。」仲間の一人が言った「じゃあもう組み上がってるってことだな。」頷いた男が手渡してきた銃の弾倉に弾を込める。「で、誰が撃つんだ?」全員が目を泳がせた。なんだ、地球を守ろうって本気で思っていたのは俺だけか。「良い、俺が撃つ。」拳銃をポケットに潜ませ、奴らに近づく。人混みの切れ間から奴らが見えた。間違って人間を撃つわけにはいかない。周りの人々を押しのけ安全装置を外し、引き金を引いた刹那。緑色の奴らの体液が飛び散った。モーセが海を割ったように周りの人だかりは逃げていき、警備の人間が寄って来ている。
一匹でも多くこの銃で殺す。次のエイリアンに狙いを定めて撃つ。奴の頬を掠めたが、命は奪えなかった。エイリアンたちも物陰に隠れてしまった。警備の人間もそこまで迫っている。柵を超えて奴らに近づくため助走をつけて飛び越える。宇宙人の遺体を横切って先に進んで、隠れた奴を見つけ狙いを合わせ放つ。さっきとは違う個体だったが、そいつは発砲音と共にその場で倒れて動かなくなった。
あと弾は何発だ?周囲を見渡して奴らの数と弾の計算をする。熱くなった頭を捻っていると、腰を熱い物が掠めた。振り向くと、銃を持ったエイリアンが発射の衝撃に耐えられず頭を地面にぶつけていた。ほら言ったじゃないか。やっぱりこいつらは危険なんだ。
宇宙人残り32人 愛国者70億人
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