第三十八章 最終作戦
アジトに戻ると、仲間が消えていた。我々五名以外はごっそりと。残っているのは包囲されたアジトのみ。もうどうしようもない。何があったのか分からないままこんな状況になってしまった。集合信号がはるか遠くに出てから、感じていた不安が確信に変わった。「あいつらはどこに行ったんだ?」「分からない。でも、生存反応があるってことは生きてるはずだ。」ではどこに。二つ目の問いを吐き出す者はいなかった。
私たちは人間調査のための分隊として、東京の外への逃げ道を探すのが我々のミッションだったのだ。ようやく、警備が手薄な地点を見つけて戻ると、この様子。警備が手薄になったのではなく、我々が見つかったのだと察するのに時間はかからなかった。約30名近い仲間が一人残らず消えた。
「どうするんだ。これから。」一人が不安をこぼした。「東京を出よう。奴らは我々の生存数を把握している。俺たちのことを探していてもおかしくない。」そう言うしかなかった。誰もいない東京を歩く、淡々と。警備もいなければ、パトカーも走っていない。
駅前の液晶から仲間の声が聞こえるまでは。「信じている。」母星語で聞こえたその声は私たちの歩みを止めるには十分だった。「俺たちはさらわれた。五か国の動物園に収容されている。このニュースをちゃんと見ろ。そして助けに来てくれ。海を越えて。各国の仲間毎に解放されたのち、作戦を開始する。最後の作戦だ。人類に一矢報いる…」ここでニュースは別の話題に切り替わった。
画面からのインベーダーの声に汗が噴き出る。仲間たちが受けた屈辱を思うと悲しみと怒りがこみ上げてきた。同じ知的生命体であるにもかかわらず、なぜそのような扱いがまかり通るのか。人間の考えは理解できなかった。海を越えて、向かうしかない。
「一人ずつでそれぞれの大陸を目指すのか?」「それしかない。俺は、日本にいる連中を助け出す。お前らはどうする?」「海をどうやってこえるんだ?」途方にくれる私たちの頭上を飛行機が横切った。「…あれを使おう。」「どうやって?」「何も運転する必要はない。荷物に紛れて大陸に渡れれば良いんだ。」不可能に思える作戦の実行は決まり、我々は空港を目指した。だが、空港に向かう最中、減った生存反応が残り時間の少なさを物語っていた。
宇宙人残り33人 上の空の70億人
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