第三十七章 迷子たち
ピーターパンが久しぶりにこの動物園に帰ってくる。その事実に園内は湧いていた。昼は動物園、夜以降は実験と忙しい彼のケアを飼育係の私が行うらしい。前任者は謎の男に殴られたらしいが、私はたとえ殴られても宇宙人を守ろうと決意を固くしていた。
運ばれてきたトラックの荷台を開けると、宇宙人が一人死んでいた。しかも、こいつピーターパン。嘘だろ。目玉だぞ。なんで、誰がこんなことを。運転手に問いただす。「宇宙人が一人死んでるんですが、何か変わったことはありませんでしたか?」「死んでる!?」運転手は驚いて運転席を駆けるように降りて荷台を覗くと、腰を抜かしていた。
どうやら運転手は関係ないらしい。だがその時、宇宙人の中の一人が答えた。「自殺だよ。」と。「自殺?なぜ?」「トラックの中で言ってたんだ。ここが嫌いだったって。ここにいるくらいなら死んだほうがましってそう思ったんだろうな。止めたんだが、死んじまったよ。」力なく宇宙人は肩を落とした。
「そうか、君たち四人に言っておきたいことがある。辛い思いをさせないなんてことは言わない。だが、君たちを守ってみせる。だから安心してここで過ごしてほしい。」飼育員として頭を下げる。宇宙人たちもはじめは怯えていたようだったが、最終的にはそれを受け入れてくれたようだった。
宇宙人を飼育室に入れる。万が一の対策のために政府の警備員に飼育員や観客にいたるまで税関の検査の如く、持ち物を調べ上げられてから舎に入ることになる。宇宙人に万が一危害を与えるような人間がいないようにである。
ここならきっと少なくとも安全なはずだ。ピーターパンはもういない。でもきっと、この動物園にいる宇宙人は守って見せる。少なくとも日本では安全に生きさせる。そう決意した。
国の担当者にピーターパンが自殺した旨を伝え、宇宙人たちを裏手から入園させた。
宇宙人残り34人 飼育係70億人
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