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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第三十六章 転がる捨て駒

 一発の銃弾が同胞をあっという間に殺してしまった。人間がまるで的を射抜くように銃で確実に命を奪ったのだ。流れてくる音声によると、どうやら別の仲間と交渉しているらしい。ではなぜここで仲間を殺したのだろうか。人間の考えは読めない。我々を人質にでもしていたのだろうか。

 交渉が終わり、撤収作業が始まったが、私の拘束は解かれなかった。せっかくパイプ男から殴られても運良く生き残ったのにこれじゃあんまりだ。機動隊の一人が呟く「こいつも、殺すんですか?」もう一人、隊長と思われる奴が「ああ、殺して実験場送りだ。」と答えた。なぜた。交渉は上手いかなかったのだろうか。

 「交渉は上手くいかなかったのか?」静かに話してみた。周囲は息を呑んだが、隊長が答えた。「交渉は上手くいった。」「ではなぜ私を殺すのだ。」冷淡に答えは返ってくる。「交渉の材料として、私たちは君の仲間の命を利用した。それが露見すれば、恐らく交渉は逆戻りになるだろう。だから君には口封じのために死んでもらう。」

 なんて卑劣なんだろう。脅しに私たちの命を使った挙句、使い終わったら殺す。人間のやり方は目に余った。「仲間は、もう殺さないのか?」「ああ、殺さない。君が最後の一人だ。」そう言われて少し安心した。これが最後の犠牲なのだ。そう思うと、少し死を受け入れたくもなってくる。

「分かった。撃て。」隊長はゆっくり銃を構えた。「勇敢だな。君のような宇宙人がいたことを忘れない。」音と熱と痛みが同時に押し寄せて意識は泡のように消えた。


作戦は完了した。ここから先は、宇宙人を各国の動物園に送り届ける作業だ。彼らを人畜無害だと証明して見せる。あの勇敢な宇宙人の死に報いるためにも。


宇宙人残り35人 卑怯者70億人


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