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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第三十三章 道との遭遇

 東京の外にも宇宙人が出没した。そのニュースは瞬く間に日本中に広まった。そして、コメンテーター泉の遺体が、宇宙人の遺体と一緒に見つかったことも元凶となり、宇宙人を抹殺する世論は高まっていった。

僕は人間が嫌いだった。あの科学者のように絶滅危惧種を一方的に殺す奴は許せない。それもあったが、そもそも自分も含めた全人類を嫌悪した。だから宇宙人が来たって聞いた時、ワクワクした。人類の滅亡の時がようやく来たんだって。でもその期待はすぐ打ち砕かれた。アイツらは弱すぎた。そして人間のことを人間の恐ろしさを知らなさ過ぎたのだ。

僕が宇宙人を助けてみせる。人類を滅ぼせなくても、それくらいやってみせる。そう決意するのに時間はかからなかった。宇宙人の実験施設で最初に科学者を殺したはいいものの、それ以降、警備は強化された。そのせいで何もできず燻ぶっていたのだ。宇宙人殺しなる人間もいるらしい。その間も宇宙人を探したが、見つかるのは宇宙人の遺体ばかりだった。

 だからこそ私は、東京に残って宇宙人を探す決意をした。住宅街は不規則に爆破される中、警察や自衛隊の目をかいくぐって宇宙人を探す。場所も分からない彼を広い東京で見つける。それは至難の技かと思われた。だが、それは案外唐突に目の前に現れた。住宅の倉庫から物音がした。よもや、とも思ったが、宇宙人はそこにいた。私を怯えた目で見つめている。

 「大丈夫、君たちを助けに来たんだ。」そう言うと、彼は怪訝な顔をした。「私たちを助けるだと?」なんと喋るとは。やはり殺しては分からないことは沢山あるらしい。「散々殺しておいて、それを信じろというのか。人間。」間髪入れずに宇宙人は反論した。「大丈夫、私は味方だ。」そう言うと宇宙人は少々怯えた顔をした。次の瞬間頭に強い衝撃が走り、私は意識を失った。

鼻を突くような強い匂いで目が覚めた。待っていたのは、二十匹ほどの宇宙人だった。縛られて動けない。中の一人が答えた。「私はインベーダー。いや、私たちはインベーダー。東京で生き残った宇宙人の集まりだ。人間について教えてくれ。そして我々が生き残る道について。君を運ぶ過程で仲間が一人囮になって死んだ。ただでは返せない。」インベーダーを名乗ったその宇宙人は真剣なまなざしでこちらを見つめた。「君たちはどうしたい?生き残るにも方法があるだろう。この星で生きたいのか別の星に行きたいのか。生きたいのであれば、前のように動物園にいるのが一番だ。」「やはり、それしかないのか。」宇宙人は嘆いた。「もし、人間と平等に生きたいのであれば、そうだな。君たちが危険な存在じゃないと、人間たちに示す必要がある。」「そんな方法あるのか?」「無い。いや方法は一つだけある。すごくリスキーだけどね。映像を撮るんだ。自分たちも人間を殺したが、人間たちも自分たちを散々殺してきただろうって。最初に撃ったのは人間だろうって。だから平等に権利を認めてほしい。少なくとも殺すのはやめてほしいと伝えるんだ。そしたら自分たちも人間に危害を加えないと。」「そんなこと効果はあるのか?」「しないよりは良い。」

宇宙人たちは黙って考えた。「どうやって映像を届ける?」「方法はいくらでもある人間の媒体を使えば良い。」こうして動画サイトに一つ映像が上がることになる。動画の名前は”我々は宇宙人だ”。

 

宇宙人残り38人 人嫌い70億人


読んでくれてありがとうございます。

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