第二十一章 スケープゴート
生存している個体から集合信号を出させてからの効果はかなりのものだった。生き残りを探して、迷い込んできたエイリアンを捕獲する。気づけばその数は、十体以上に及んでいた。奴らは全員で残り50匹程度。だが、これだけいれば解剖実験を再開しても問題ないだろう。私が殺した一体も実験に使ったが、成果を得るためにはまだ重ねた死体が少なすぎる。
「これから解剖実験をしようと思うんだけど、志願者はいるかな?簡単にいうと、君たちのうち誰か一人に死んでもらうんだ。」彼らの内面にも興味があったので、あえて質問をしてみた。彼らは押し黙ってしまった。だが、一匹の個体が口を開いた。「お前らが捕まったせいで私たちまでこんな目に遭っているんだ。お前らのうち誰かが行けよ!」初期に捕まった面子を、責めているらしい。確かに最初に捕まった連中がいなければ、この事態は避けられたはずだ。社会性や判断力、論理性はしっかりと持っているらしい。
最初に捕まった連中もそれが分かっているのか、黙ってしまっている。「早く決めてくれ。早く決めてくれないと適当に一人選ぶぞ。」脅しを掛けてみた。「なあ、頼む。お前ら行ってくれよ…頼むから。」彼はもう一度最初に捕まった面子に懇願した。彼の期待に応えて最初に捕まっていた個体が答えた。「私が…行こう。」
でも、コイツを殺すつもりはない。「君はだめだ。生存反応と集合信号が同時に消えると危険な場所だと思われてしまうだろう?うるさかったからコイツにしよう。」仲間に行かせようとした奴を指さした。自分が連れていかれるとは思っていなかったのかひどくうろたえている。「そんな、なんで私が。お前らの、お前らのせいだ!」最初の面子に捨て台詞を吐く個体を拘束して、連れていく。「なんで、なんでだ。」暴れる個体をベッドの上に拘束する。「大丈夫、君の命は無駄にはしない。大事な成果になるんだ。人類のね。」麻酔を打って眠った個体の頭にメスを入れる。
でも、執刀は最後まで続けられなかった。アラームがけたたましく鳴り響き、侵入者の存在を告げた。同時に執刀中の個体のモジュールから集合信号が消えた。さらわれるのはまずい。エイリアンの元に急ぎ、階段を上っていく。息を切らしてドアを開けたが、そこにはもう何もいなかった。一匹残らず消えていたのだ。
拳を机にたたきつける。手術台に戻り、個体の傷を縫合し生存を試みるが、意識は戻ることは無かった。そうだ。探しに行こう。私は彼の腕ごとモジュールを切り落とした。大丈夫、もう一度見つければ良い。集合信号を探せばよいのだ。項目を集合信号に合わせて、地図アプリを開いて、外に出る。そこには鉄パイプを持った男が一人立っていた。
宇宙人残り50人 追跡者70億人
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