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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第二十章 ダイブ

こうして血を抜かれて毎日見世物にされる。そんな日々に嫌気がさしていた。はじめは思いの外、安全で驚いた。外と違ってここの人間は襲ってこない。それどころか崇拝すらしている様だった。表情が恍惚として目が爛々と輝いていた。今となってはとても不気味だ。

 血液は週に一度抜かれる。奴らの会話を聞くに、我々の血液で何かを作っているらしい。人間というやつは気味が悪すぎる。人の血液を使って何を作ろうというのか。仲間たちに助けてほしいが、こんな所に来れば捕まるのは目に見えていた。それが他の捕まった連中も分かっているのか誰も集合信号を出さなかった。

 踏みにじられた尊厳を取り返したい。それが無理ならせめて逃げ出したいと心の底から思った。実際逃げることはできないのだろうか?彼らが私たちを崇拝してくれているなら我々の自由意思だって尊重してくれるのではないだろうか?

 「随分な賭けに出るね。」仲間から帰ってきたのは当然の反応だ。「でも、全員が一斉にやれば勝算があるかもしれない。」そうか、複数で行けば誰かは捕まらずに済むかもしれない。

捕まった奴らも殺されることは無いだろう。仲間に根回しをして飛び込む算段を付けた。

今日も人々の前に連れ出される。門が開き台の上に乗せられる。まるで商品かなにかのように。でもそんな日々も今日も終わるかもしれない。いや、きっと終わらせる。人々が集まり視線をこちらに向けている中、周囲の仲間と目配せをして、タイミングを合わせる。

 息を吞んで、飛び込んだ。人々は避けることはしなかった。彼らは私の手足を掴み噛みついた。体がちぎられる位の勢いで体が引っ張られ、関節が外れる音が聞こえた。

 人々は次々と迫ってきて先にいた人を押しのけて、噛みついて血を吸いに来る。仲間たちには悪いことをした。彼らが崇拝していたのは、私たちではなかった。私たちの血液だった。申し訳ない思いで上を見上げると私以外の仲間たちが台の上に見えた。どうやら飛んだのは私だけだったらしい。

 怒りと安堵感が同時にこみ上げてくる。でももう、手足は動かない。意識も朦朧としている。でももう最後の賭けに出よう。出られないなら外の仲間に助けてもらうしかない。

 最後の力を振り絞って、腕の集合信号ボタンを起動させる。起動音が聞こえる。もう眼もかすむ中、最期に生存反応が減る時の音が小さく聞こえた。


宇宙人残り51人 狂信者70億人


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