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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第十七章 沈黙は金

「これ言ってみたかったんだよね。」どうやら彼らに通じたらしい。俺が奴らの言葉を話せたことに驚いたのか、全員キョトンとしてこちらを見ている。「そうだよ、俺は話せるんだ。君たちの言葉を。」怯えた様子で彼らは喋り始めた。「なぜ喋れるんだ?」当然の疑問だ。「お前らの会話を盗聴して、文節や反応から言語を分解、意味を推察してみた。通じるか疑わしかったが、成功して何よりだよ。」奴らは驚きながらも続けた。「我々に敵意は無い。ここから解放してくれ。」「無理だ。ここは君たちを調べ上げるための施設で私は尋問官。情報を洗いざらい吐いてくれれば解放するかもしれないけどね。」そう伝えると彼らは黙ってしまった。

だが、尋問官には関係ない。淡々と質問を続けるだけだ。「僕たちが知りたいのは君たちの目的と、数だ。一旦はね。」数という言葉に一人が反応した。「数?減り続けているさ!お前らのせいでな!」隣の宇宙人がそいつを諫める。「やめろ、喋るとこいつらの思うつぼだ。」

随分と社会的な生物だ。「君たちがずっとここに閉じ込められているのに仲間の数を認知できるのはなぜ?」再び沈黙が訪れた。

 こういうの時のために複数体、捕獲したのだ。私は一人の腕を折った。狭い部屋に奇妙な叫びが響く。「なあ、世間話をしているわけではないんだよ。教えてくれないなら、次は足だ。」「仲間の生命反応数が分かるんだ。腕のモジュールで。今は55体いる。」仲間の危機に耐えられなかったのか。さっき諫めた個体が喋った。「なるほど55体。で、目的は。」「この星に住みたいだけだ。我々の母星はもう住める環境ではなくなった。だから、この星に住みたい。それだけだ。」次々と話してくれて好都合だ。

「なるほどね。もう一つ質問。君たちは何で不老なの?」上から聞いておけと言われた質問だ。「分からない。ただ、そういう生物なのだ。君たちはその、時間の経過で劣化していくのか?我々からすればそっちの方が不自然だ。」どうやら本当らしい。全く、うらやましい限りだ。「なるほど、ありがとう。この星に住みたいならさ。共存する気はないか。」腕を折られた個体が叫ぶ、「俺たちを散々殺して、こんな目に合わせておいて共存?ふざけるなよ!」まあ、確かに一理ある。「じゃあ、救難信号でも出して仲間を呼べばいい。」そいつは笑いながら答えた。「こんな危ないところに仲間を呼べるか!」呼べるかということは呼べる方法があるということだ。大体尋問で知りたいことは概ね分かった。

私は、腕を折った個体の首をひねった。鈍い音がした。他の奴らは叫んで怒声を浴びせたが、可愛い見た目で何を言われても気にならなかった。モジュールを奴の腕から切り離して数字に目をやる。次の瞬間生存反応の数字が一つ減った。確かに、彼らの言っていたことは本当だったらしい。モジュールを適当に触っていると、集合信号という項目があった。遺体の物は起動しなかったが、生存している個体の物を起動させた。その瞬間彼らの顔はひきつっていた。これで確信した。これで奴らを呼ぶことができる。「情報提供ありがとう。」私は部屋を後にした。


宇宙人残り54人 尋問官70億人


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