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東京いんべーだーず  作者: 鯖鮨 握
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第十三章 目撃者

「研究の結果から、宇宙人を食べた人間や生物などは死亡することを確認しました。特にペットなどが宇宙人を誤って食べないように飼い主の皆さんは注意するようにお願いいたします。」「しっかし、大富豪が宇宙人食って死ぬなんて、まるでフィクションの中見たいですね。田崎さん。」「全くですよ。宇宙人が人間を食べるのは映画でたくさん見ましたが、人間が宇宙人を食べるとは。」私の存在、何も気にせずコメンテーターと司会者は場を回していく。

いつものことだ。台本通り、スケジュール通り、生放送の時間に収まるように次の原稿を読む。「また、それだけではなく、宇宙人の遺体は腐敗せず、細胞も老化しないという情報も出ています。もしかしたら今後医療分野で彼らの細胞を大きく活用できるかもしれません。」「腐敗しない?食べられたら永久保存食だったのに残念だな。富豪の方も亡くならずに済んだだろうに。」司会者のジョークで乾いた笑いが起こる。

司会者は矢継ぎ早に番組を占めにかかる。「宇宙人捕獲の報奨金や指名手配はまだ続いていますが、どうか皆さん気を付けてください。操られたっていう話も聞きますからね。それでは、また明日この時間で。」

 番組が終わる愛想を振りまきながら、少し明日の打ち合わせをして女子アナの私は立ち去っていく。これもいつものことだ。宇宙人ニュース連日そのことばかり、奴らが絶滅するか、もっとガソリンが沁み込んだ話題に上がるまで、このニュースが続くだろう。そう思うとため息が出た。宇宙人の死体は10万円、生体は100万円、そのせいか近頃若者を中心に宇宙人ハンターまで現れる始末。

 いっそ私も小遣い稼ぎに始めたい所だが、忙しくてとても宇宙人を追いかけている暇はない。現在死体は5体確保されており、生体は5体捕獲されているらしい。二体は上野動物園、一体はNASA、残りの行き先は決まっていないらしい。雌雄も無いらしい彼らは、動物園に入れた所で、永遠に二人のままなのだろうか。殺されない限り死なない彼らをネバーランドの登場人物に例えて、ピーターパンとウェンディと名前を付けたらしいが、とても残酷に見えた。 

 彼らにとって地球はネバーランドなのだろうか?そんなことも考えないまま檻に閉じ込める人間の傲慢さに少し腹が立った。家に帰る道、いつもと同じ帰り道、割引シールが貼ってある惣菜に手を取って帰る。帰り道、宇宙人ハンターの声が聞こえてきた。「こっちに出たってさっき動画に上がってたのにいねえな。」宇宙人がピーターパンならこいつらは海賊だろうか。確かに柄はよくない。関わりたくないと内心で思って歩調を速めた。

 マンションの入り口付近まで来た頃、聞きなれない声が聞こえた。方向を見ると、男が宇宙人を踏み殺していた。人形がつぶれるような柔らかい音ではない。固い何かが壊れるような音。右眼を包帯で覆った男は一心不乱に何かをぶつぶつ言いながら踏み続けている。「何やってるんですか?」思わず聞いてしまった。話しかけなければよかった。男はこっちを見て答えた。「あんた、ここの人?」「はい…」「警察に通報しといて。」男はすぐに立ち去ろうとする男に、思わず声をかけてしまった。「待って。」ゆっくり振り返った男に私は尋ねた。「生かしておいてあなたが通報すればよかったじゃないですか。なんで殺したんですか?」男は滔々と話し始めた。「仲間と右眼をこいつらのせいで失った。奴らには人を操る力がある。だから誰かを操って俺みたいなやつがまた出る前に始末した。あんたも気を付けた方が良い。」男はそういうとゆっくり歩いて行った。

 体中の力が抜けて汗をかいていたことが分かった。私は警察に電話をした。恐怖と高揚感と安堵感で頭が混乱している。でも面倒だ。宇宙人のニュースはまだまだ続くだろう。


宇宙人残り58人 ジャーナリスト70億人


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