第十二章 無謀な救済
集合信号を頼りに、ようやく合流したその仲間から聞いたのは絶望的な事実だった。奴らがたった数千年でここまでの文明を築き上げたことだった。数千年でここまでの発展を遂げるなんてありえない。本来は環境に合わせて生物が進化していくのに、生物に合わせて環境が変化していくなんてなんて不自然で恐ろしい生き物なのだろうか。
「お前は、他に仲間を見たか?俺と一緒にいた奴の反応は、学習施設で消えた。」俺は巨大な化け物に飛び込んだ仲間を思い出した。「巨大な化け物に突進された、一瞬だったよ。そいつ以外は見ていない。」「トラックか。それは化け物じゃない。奴らが乗っている機械だ。作られた物だよ。」「奴らが…人間が乗ってたのか…」あんなものを乗り回すのが、人間ならなおさら勝ち目なんてない。恐怖と絶望で心臓が止まるかと思った。
とにかく今は道しるべが、目標が欲しかった。「これからどうするんだ?」「俺たちはこれから人間になる。」「人間に?どうやって?」「なりすますんだよ。一人で暮らしている人間を始末して、そこで暮らす。必要な物や情報、仲間を集めながら時期を待つんだ。」
「時期?」「人間たちを倒す時期だ。」「倒すどうやって?」「奴らだって生物だ。殺せば死ぬんだ。」「でも70億いるんだろ?こっちは70人、いや60人か?」「だから一気に倒すんだ。」
「そもそも一人で暮らしている奴?どうやって倒すんだ?」それを聞くと、奴は刃物を取り出した。「ゴミ箱に有った。これで奴らの首に刺す。ただ死体を隠すのにあともう1,2人仲間が欲しい。」この星の生物を殺す。そんなことすぐには納得できそうにもなかったが、仲間はには会いたいと思った。その気持ちに応えるように腕のシグナルが突然光った。別の集合信号だ。しかも位置は近い。
私たちは互いに目くばせをして信号の方向に走り出した。人間を倒す。人間を殺す。なんてよくわからない。でもあの時、あいつの死を止められなかった自分に納得がいかなくて仕方なかった。今度は盾としてではなく、仲間として助けてみせるそう思って走り出した。
現場に行くと仲間が二人、人間が襲われているようだった。一人はもう絶命しているようでぐったりしている。「タイミングを合わせて奴の足を狙うんだ転ばせて、その隙に生存者を連れて逃げる。」私も頷いてタイミングを合わせて飛び掛かった。奴はさっきの刃物を奴の足に突き立てた。反対の足に私も突進した。奴は悲鳴を上げ、俺たちは猛スピードで生き残った仲間を連れて逃げ出した。
宇宙人残り59人 殺害対象70億人
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