第十一章 崇拝
「オークションにかけるのか?正気かよ?」宇宙人を運んできた男は嘲るように私を罵った。聞かれたから答えただけなのに、男の物言いに腹が立った。
「あなたには関係ないだろ?金を持ってさっさと帰ると良い。」一億のアタッシュケースで渡すと、男は不服そうに去っていく。結局お前も売るんじゃないか。そんな言葉を飲み込んで宇宙人を引き取り、係の者に預けた。
競売の時間になると、客が集まり始めた。世界各国から富豪が集まるオークションだったが、今回の目玉がみな気になるのか、他の商品の競売は淡々と進んでいった。宇宙人が舞台にでるとどよめきが起こった。唾を飲み込む音が聞こえるようだった。
宇宙人三匹は檻の中で震えていた。一匹は男が10億で競り落とし、もう一体は40億で老婆が競り落とした。そして最後の一体は私が50億で競り落とした。オークションの主催者ではあるが、商品として興味があった。軽蔑的な目を向けられながらも競り落とした瞬間は爽快だった。
私がこの宇宙人でやろうとしていることは簡単。これをご神体にして新しく宗教を興そうと思っているのだ。研究機関から漏れた情報によると。宇宙人は不老で死体も腐らないらしい。体液を水道水に少し混ぜてしまえば健康的な飲料の出来上がりだ。それで、金が集まるのだから70億程度、大した問題ではない。
ただ一つ問題があった。他の人間がこれを真似したりできないようにしたい。唯一の商品の方が価値は跳ね上がる、当たり前のことだ。だからこそ、他の宇宙人を捕獲するか、殺してしまう必要があった。唯一無二こそ価値なのだ。
部下から連絡がきた。宇宙人を一体殺処分したらしい。残り何匹いるか分からないが、不安の種が一つ消えた。
宇宙人残り60人 商人70億人
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