プロローグ 一人目
「ずいぶん光ってるな。」
青く輝いていた懐かしい惑星、地球、その変わり果てた姿に思わず私は呟いた。
「火事とかじゃないのか?」「まさかずっと燃えているの?」
仲間たちは口々に疑問を口にした。夜の闇が消えたのだから無理もない。
我々が地球を訪れてから百二十五万年。
火を知的生命体に教えてからそれくらいの時が経ったとはいえ、この発展には驚かざるを得ない。
「でもまあいいじゃないか。これから俺たちもここに住むんだ。
発展してる方が良いに決まってる。」
一人が軽薄に呟いた瞬間、我々が乗っている宇宙クジラが大きく揺れた。
何かにぶつかったのだろうか、船内は慌てふためいた。
基本的に我々は不老とは言え不死ではない以上、宇宙に放り出されれば死ぬ。
そんな船員たちの恐怖を打ち消すようにリーダーは叫んだ。
「諸君落ち着け、恐らくデブリか何かだ。
だが目的地は目の前、落ち着いて各位着地に備えてくれ。」
ざわめきは徐々に収まり、みんな座席についていく。
座席といってもクジラの内臓だが、作りも頑丈だ。
リーダーは皆が座席についたのを確認すると、宇宙クジラに着陸を促す。
クジラが大気圏に突っ込んで気温は少し上がった。
数秒後、クジラが再び揺れた。
先ほどの揺れとは比べ物にならない大きな揺れだ。
クジラは意識を失ったようで、着陸ではなく墜落が始まったようだ。
皆は怯え叫んだ。リーダーの声も耳には届いていないようだった。
そして最も大きな揺れが船を襲ったと思うと、クジラの落下も止まったらしい。
皆が安心するとリーダーがみんなに呼びかけた。
「無事とは言えないが、着陸には成功したらしい。
さあクジラから降りるんだ。私が先頭に立つ。」
皆がそそくさと座席から立ち上がる。この星の知的生命体に会うのは久しぶりだ。
清潔とは言えないが友好的な彼らは火に怯えながらもそれを与えた我々を崇めてくれた。
皆もさっきの墜落が嘘のように、にこやかに出口に向かっていく。
クジラの口を出ると、太陽よりも眩しい光に照らされた。
そして次の瞬間、短い破裂音と共にリーダーの血液が私の体に飛び散った。
残ったクルーは71人。そして人類は70億人いるらしい。
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