~8~ 鈍感と夏みかん
前回のあらすじ!幼なじみと「負けたらお願いを1つ聞く」という賭け格ゲー(格闘ゲーム)に挑んだ俺。
ガムテープデスマッチよろしくお互いの手を繋ぎタオルを巻きつけ動かせなくした状態での戦いだったため、大会制覇したこともある格ゲーガチ勢の日夏相手なのに何故か俺は勝機があると思ってしまった。
結果は勿論余裕の惨敗。勝機も正気も無かったと言う結果が残ったのだった。
そして俺は幼なじみの願いであるデートの約束をしてしまう事に......なんであの条件で勝負したんだ俺。マジで。
そして俺は日夏の家を出て帰り道を歩いていた。どうしよう......俺には南乃が居るのに。なんて説明したら良いんだこれ。
でも、日夏、今までのあれは本気で言ってたのか......好きとか付き合ってとか。
だとしたら、今まであいつに沢山ひどい事してきちゃったな、俺。
俺は基本的に自分に自信がない......しかもクラスでは陰キャ判定、オタ判定をくらっているカースト最底辺。一時期のアダ名は陰キャ馬オタク。
対して日夏は可愛らしくて愛嬌もあり友達だって多いカースト上位の人間だ。影で呼ばれていたアダ名は天使の幼顔 (......なんか冷静に考えたらセンスなくね?誰つけたんだこのアダ名)
まさかそんな人が俺に好意を寄せてくれていたなんて......普通、そんな事思わないし思えないだろ。
ふと記憶の端にかかる一枚の写真。日夏の机の上に置かれていたあれは格ゲーの大会で優勝した時の物だ。俺もその会場にいて記念に二人で撮ったんだっけ。
俺は当時、中学生でありながらゲーセンで50連勝という記録を打ち立てる彼女を見て、その尋常じゃない格ゲーセンスがホンモノだと確信した。
あの頃の俺は日夏の向かう道が未来がどこまで続いているのかとワクワクしていた。
そしてそれから数日後、幼なじみから大会にでるとの話を聞かされる事になる。
どうしても彼女の活躍を見たかった俺は彼女のご両親にお願いして連れていって貰うことに成功した。
彼女はその大会で見事に優勝、まさかの女性プレイヤー、しかも中学生が大会を制した事もあって会場は怒号のような歓声で沸いていた。
――わああああああー!!
「――し、四季! みた!? みてくれた!? あたし、やったよ!!」
「見たよ! お前、マジですげーよ!」
「やったあ! ありがとう!! 嬉しい!」
そう言いながら満面の喜びを体全部で伝えてくる。俺は顔を胸に包み込むように抱きしめられた。
「わぷっ!? ちょ、苦し」
その当時、日夏は中学生にしては出るとこが出ていて、俺が呼吸困難に陥るくらいに山であった。まあ、途中で成長がとまってしまったんだが。それでも結構な大きさである。
「あ、ごめん! そだ、写真! 記念写真撮りたい!」
「おお、良いね!」
「お父さん、撮ってー!」
「ん? え、あ? 俺とか」
「当たり前でしょ! はい四季、ピースして、ピース!」
「あ、お、おお......ピース」
カシャッ!
懐かしいな。あの時はまさか優勝までするとは思ってなかったからめちゃくちゃ驚いた。って言っても日夏が勝つ事を信じていたし、それだけの努力をしていた事も知っていたんだが。
ただ、大会予選が始まる時にあいつ手が震えていたから......大丈夫かな?と心配していたのだ。まあ、杞憂に終わったんだが。
何でだろう。俺、人に好かれる部分なんて......無い気がするんだけど。だからこそ俺はネトゲで生まれ変わってあの世界へ入り浸っている。
あそこでなら俺はイケメンだしプレイスキルだってまあまああるし、だから仲間だってできた、そして......何より強くあれる。
そう、ネトゲの中での話ならわかるんだ。俺の事好きでいてくれている理由が思い付く。
だから南乃がリアルで彼女のような事をしてくれたのも驚いたし、信じられなかった。しかしその反面、とてつもなく嬉しかったけれど。
でも、今思えば......日夏も、ずっと言葉や態度で示し続けてくれていたのか。
あれは中学二年生のとき、彼女は髪を染め化粧をするようになっていた。
彼氏でも出来たのかな?なんて思って、俺は側に居るときっと邪魔になるだろうなと思い、だんだんと日夏と遊ぶ頻度を落としていった。
あれは......そういう事だったのか。バカだな、俺は。
でも俺は「俺という人間」が好かれる理由がわからない。わからないんだ。
◆◇◆◇◆◇
翌日、朝の通学路。考えの纏まらない頭で歩いていると後ろから声をかけられた。
「よお、四季」
「ん、あ......珍しいな、海斗」
この俺より少し高い身長、整った顔立ち、明るく染まった頭髪の簡単に言えばイケメンと呼ばれる男は我がクラスのNo.1イケメンとされ、全校生徒1男前生徒とも名高い。
名前は白石 海斗。
クラスカースト最上位にあたる男だ。そんな奴が何故底辺中の底辺の俺に話しかけてきたか?理由は簡単。
「お前、昨日のレイド......動き悪かったな? スイッチのタイミングおかしかっただろ」
「ああ、すまん。 ちょっとな......」
「ナイトのお前は俺のパートナー、前も言ったがMTのお前とSTの俺は二人で一つだ。 悩みがあるなら話せよ」
「あー、まあ......」
俺達はネトゲ、ラストファンジアの中で同じチームなのだ。海斗はチームマスターである暗黒騎士。ネトゲのキャラクター名はカイト。
「MT」「ST」と言うのは、ゲームでのボスレイド戦において敵の攻撃を引き受ける役。
MTがボスの攻撃を引き受け続け、タイミングを見てSTと入れ替わる。入れ替わる理由は様々で、敵の攻撃が二回目を受ければ死ぬだとか、ヒーラーの負担を減らすとか、そんな感じだ。
けれどメイン、サブと一応なっているが、どちらもメインもサブも出来る。
「まあ......なんだよ? 俺にも言えないのか? 別に全部話せとは言わない。 大体の内容でも良い......何か力になれるかもしれないだろ」
「お前って、マジでイケメンだな。 イケメンだけど」
「俺はイケメンなんかじゃない。 お前の方が......いや、そんな事は今はどうでも良い。 話せよ」
? まあ良いか。このままじゃあ気持ちの整理もつかないと思うし。
リア充グループだけれど俺をネタにして遊んだりしたことは無い。クラスでもイジメがあったときには率先して解決を試みた事もあるような奴だし、なによりネトゲで長い時間を共に過ごした仲間だ。それらを鑑みると海斗は信用できる。
俺は相手の名前や誰かを特定出来ないよう配慮して大体の事を話した。
「――ふむ、成る程......」
海斗は顎に手を当て考え込んでいた。結構色々と伏せて話したからちょっと訳のわからない話になっているかもな。
ってか、俺が二人の女の子に好かれているだなんて......今更だけど話したの間違いかもしれない。
きっと頭のなかで「――ふむ。 成る程......精神がやられてしまっているな。 紹介できる病院は、と」とか考えているに違いない。
俺が海斗の立場なら多分思う。
「それ、答えなくても良いんだが、南乃と西垣の事だろ?」
「へっ」
当てられるとは思ってなかった俺は驚き答えを表情に出してしまった。......やべ。
「はははっ、見てたらわかるよ。 そうか、成る程な」
「意味わからんだろ? 俺のどこを好きになったんだよ......」
海斗は静かに首を横へ振る。
「お前はわからんかもしれないが、理由がなければ人は人を好きにはならないぞ」
「......まあ、そうだよな」
「俺らのチーム、皆仲良いよな。 あれは皆で色んなクエストをクリアし、レイドボスを倒し、辛い事も楽しい事も乗り越え、多くの時間を共にしてきた結果だと思うんだよ」
確かにな。苦楽を共にして歩んできたからこその絆だと思う。俺もチームの皆は信用しているし、好きだ。
「お前の事を好きになるって事は、それだけの理由がある。 そこは事実だよ」
「......事実」
海斗は悩む俺を見てフッと笑い、こう言った。
「俺がお前の事を好きな理由はな、そういう真面目な所だな。 あとは努力家で根性もあるしな」
「は!? 急になに言ってるんだ!?」
「ははっ、まあ自信持てよ。 お前、自分が思っている以上にカッコいいぞ」
「......からかうなよ」
海斗はにこにことこちらを眺めている。や、やだ本当に惚れちゃう!
「けれど、お前はどちらかを選ばなければならない。 それも事実だ。 二人には向き合わなければならない......何か困ったら俺に言え。 話は以上だ」
「ういっす、マスター」
本当、頼りになるチームマスターだな。本当にカッコいい。これは男にも人気があるのがわかる。でもこの人、隠れ......。
「おーい! 四季ー!」
海斗と話をしながら歩いていると、また後方から元気よく声がかかる。彼はその明るい性格から友達も多く、雰囲気もそこまでリア充してないので......いや友達多いのはリア充!リア充でしたわ!でも彼の雰囲気のせいか俺でも話しやすい。短めの髪で猫目のお調子者気質。
名前は篠崎 陸。ネトゲのキャラクター名はリク。竜騎士だ。
「お? 海斗も一緒とか珍しいじゃんか。 なに話してたの?」
「別に大したことじゃない。 昨日のレイドで四季の動きが少し変だったからその事についてな」
「ああ、そうそう。 俺もそれ聞きたかったんだ......お前、ネトゲ嫁となんかあった? もしか西垣とか」
そう、そうなのだ。こいつは勘が鋭い。前も俺がネトゲ嫁とケンカしていたのを見抜いて相談まで乗ってくれた事があった。いや、まてよ?海斗も一発で勘づいたよな。もしかして俺が隠しきれてない、分かりやすいってだけか?ううむ。
「大体の事で良いなら。 けど、あんまり......詳しくは話したくないな。 まだ」
数少ない男友達でたった二人の男友達の海斗と陸は、ほぼほぼゲームでの繋がりではあるが、信用のできる二人である。
「うーん、じゃあ良いよ。 話さなくても」
あっさりと引き下がる陸。俺はこいつのこう言う所も好きだ。踏み込んで来てほしくない所には決して入ってこない。
空気を読むのが得意なのだろう。これはリア充ですわ。
「そっか、まあ、気軽にな~。 あんま深く考えた所で大体の場合、答えは結局最初から決まってたりするからな」
結局、決まってる......か。
「ふ、お前みたいな思考回路だと皆が幸せになれるんだがな......しかし今のは一利ある。 結局の所答えなど最初から決まっている事の方が多い」
「海斗、お前はなんでそう一言多いんだ? 結局同じ意見なら普通に賛同しろよ!」
「すまん、お前がまともな事言っていたからつい何となく反発したくなった......なんか、こうイラッとしてしまった。 すまない」
「てめえ......!」
「ぷっ......はは」
「「!?」」
俺は二人の会話でつい吹き出してしまった。
「なに笑ってんだよ」
「お前の話なんだぞ?」
「いやいや、論点がくだらないと思って......ははっ」
「「このやろう!!」」
俺は気持ちが軽くなった気がした。
答えは本当はもう見えている。そうか、確かに。俺はそれを見ないようにあれやこれやと理由をつけて先伸ばしにしようとしているんだ。
「選ばないと、か」
選ぶ。俺なんかが。......でも日夏はそれを待っている。
だったら......真剣に向き合う為に、俺は俺の事を話さなければ。あいつの知らない、俺の話を。
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