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~7~ 最後の幻想と思い出の切れ端

 


 突然だが、幼なじみであり同級生、西垣(にしがき) 日夏(にか)は可愛い。


 俺の通う高校の二年生は総勢253人。内、約130人の女子生徒がいてその中でダントツ、学校全体で見てもトップ3に入る程の人気の女子である。


 1ヶ月に1回は告白をされ、ラブレターが靴箱に入らない日はない(今時ラブレターとかあるんだね)。あげくそれを俺に見せつけ、片手に5枚持ちながら「決闘! ......はっ! やめて、四季のライフはもうゼロよ!」とか言い出す始末だ。書いたやつが見たら泣くぞ。

 それに登下校中に他校の男子生徒から声を掛けられる事も頻繁にある。今は無いが、多いときは告白待ちの列が発生することもあった。


 まあとにかく、愛嬌のある性格と誰とも壁を作らず分け隔てなく話せる所に、幼い頃からの男勝りな部分と美しい女性らしい顔立ちも絶妙なバランスで相まって、恐ろしいくらいに魅力的でモテる。


 そしてなぜそんな話をするのかと言うと、今まさにその麗しき美少女が目の前で南極よりも冷たい冷気の乗った視線を俺におくってきているからだ。なぜ睨まれているのか?


 その答えは未だにわからないが、大体約30分前の事、授業が終わりいそいそと帰る準備をしていると、急に声をかけられた。そして、その時の彼女の目には光が無く、心の底から恐怖したのを記憶している。


 ~30分前~


「ど、どうしたんだ?」

「あー、いやさ。 聞きたいことあるんだけど......一緒に帰ろうよ」

「か、帰るって、部活は? お前、部活あるだろ......」

「今日は休む。 はい、さっさと支度終わらせて~」

「......わかった。 けどちょっとトイレ寄らせてくれ」

「ああ、まあトイレくらいならいいか。 許可する」


 え、え?......何これ、ヤバいやつじゃね。だって今の会話おかしいでしょ。「トイレくらいならいいか」ってなに!?「許可する」ってなに!?いつから許可制に!?


「用意できた? 行くよー」

「ういっす......」


 もしかして、俺何かしたのか?何かあったか?約束......は、忘れたりして無いよな。誕生日だってちゃんと覚えてる、まだだし。けどこのハイライトの入ってない目をしている時は間違いなくキレてる。

 こいつ何が怖いってマジで目から光消えるからね。マンガとかアニメとかでハイライトの無い描写あるけど、リアルで再現するからね。ちなみにこれは妹も出来るんだよね。


「ねえ」


 ビクッ


「あ、はい」

「トイレ、ついたけど?」

「うっす......少々お待ちください」


 いや、この雰囲気これ逃げないと死ぬわ。ここ二階だけど、飛び降りるか。まあ、死ぬよりは骨折とかのが良いよね。命はひとつ。


「あ、トイレ行く前に言っとくけどさ。逃げたら家まで行って殺すからね」


 ......え、聞き間違え?いまころ......え。


「やだな、逃げる訳ないじゃないですか......なぜ逃げるとお思いで?」

「え、さっき口に出てたよ?」

「うっそ! マジで!?」

「嘘に決まってんじゃん」







 オワタ\(^o^)/





 そうして逃走する事も叶わず、今俺は日夏の家へと拉致されたのだった。うん、そうここ日夏の部屋なの。


 やはり女の子部屋と言うこともあり、綺麗にしてますな。最後に来たのは中学二年の時だったが、だいぶ変わったな。

 カーテンも花柄のオレンジ、ベッドも花柄......そういや向日葵好きだったよな。あとなんか良い匂いする、香水か?


 まあ、そんな感じで、彼女の部屋で延々と質問責めをされていたのだった......南乃の事について。昼間のお弁当の件について。


「ふーん。 で、特に絡みも無い南乃さんとお弁当を食べていたのね」

「いや、同じクラスだから、絡みはあるだろ」

「へー、やけに肩持つじゃん......好きなん?」

「......」


 こいつ、さっきから何かにつけて好きなの好きなのって......好きに決まってんだろ!嫁だぞ!と、言いたい。大声で叫びたい。けれどそれは出来ない、と言うか俺はしない。


 そうなってくると必然的に南乃が俺のネトゲ嫁、アリスであることを説明しないといけなくなる。


 日夏であるニカ、南乃であるアリス、二人は同じチームに所属している。うちのチームではリアルの詮索は基本御法度で、もともとの知り合いでも無い限り互いの素性をしる事はない。


 だからアリスとニカはお互い女の子だと言うことも知らないし、同じ学校の生徒でしかも同学年などとも知らない。


 だから俺は勝手にアリスの身バレなんてするわけにはいかない。


 何か、何とかして打開できないか......と、考えていたその時。


「......ん?」


 机の上にある写真立てが目に入った。あれ......なんで俺の写真が?

 正しくは俺と幼なじみの二人でVサインしている写真。中学生の時に撮った奴だな。記憶にある。


 相変わらず俺は眠そうな顔してるな。目は死んだ魚みたいだし......つーか、そんな俺となんかよく楽しそうに写真に写れるよな日夏も。あ、言ってて悲しくなってきた。

 いやまて、今の問題は何故そのツーショット写真があんな可愛らしいハート形の写真立てに入れられ飾られているか......どういうことだ。

 ※今の本当の問題は幼なじみに拘束されている事です。


 何故......ハート、ツーショット。ふーむ......ん、え?いや、まさかだけど、これは......もしかして、ひょっとして......


 ある推測への答えにたどり着きかけた時、日夏が俺の視線の先にある写真に気がついた。その瞬間、彼女は目を見開いていた。


 ザ・ワールド











 時間が停止した










 そして時は動き出す



「うああああああああああ!!!!!!!」

「うおっ!?」


 びっくりした!何で急に発狂しだしたの!?


「ち、ちちち違うの! これは、そう! 違うの!!」

「わ、わかった。 わかったから落ち着け! その右手に持っている振り上げた写真立てを置け!」


 日夏は尋常ではない素早いで写真立てを取り上げ、あたかも殺人を犯す前の犯人ような雰囲気を漂わせていた。

 いやだから目が怖いんだよ、目が!!


「......ブツブツ......どうしよう......記憶、消す? いや......ころ、いや......ブツブツ」

「ころ!? ころって何!?」

「ん!? い、いや気にしないで......そう、そうだよ。 落ち着いて......むしろ私は......知って欲しい......そうでしょ? ......ブツブツ」

「いや気にするなは無理!!」


 すげーぶつぶつ言ってるんだけど!俺、一体どうなるんだ......不安が積もる事山の如しなんだが。

 そして日夏は何かを閃いたように「......は、そうか!」と、言い考えが纏まったらしく、こちらへ向き直った。


「そーだ! ゲーム! 四季、ゲームしない?」


 は、え、ゲーム!?何で急にゲーム!?情緒不安定すぎだろ!!今さっきまでテンパってたのに!?怖すぎる!!


「......わ、わかったから、それ置いてくれない?」

「置いたらする?」

「する! するから......」


 いや......ま、まあ、撲殺される気配は無くなったし、ひとまず良かったか......?

 とにかく機嫌を損ねる訳にはいかない......つか、この人ときたまこういうバーサク状態になるんだけど、何なんだろうな。普段は可愛くて気の利く素敵な幼なじみなのに......。


「......なんのゲームするんだよ?」

「えとね、これ」

「む、これは......!」

「懐かしいでしょ?」

「格闘ゲームの王道、《ストリートバトル》!」

「昔よくやったよね。 でもあんたが全然家に来なくなってさ」

「ああ......まあ、な」

「だから久しぶりに! 遊ぼう!」

「わかった......やるか、久しぶりに!」


 何でキレられていたか全然わからんけど機嫌が治ったようでマジで良かった。先ほどの危うい雰囲気も消えている。


 まあ、久しぶりの格闘ゲームで気分転換もいいな。ずっとネトゲかスマホゲーしかしてなかったし。

 日夏も学校やクラスではゲーマーだなんて知ってるやつは少ない。対戦出来なくて鬱憤がたまっていたのかな?......って、んん?


 日夏は近くにあった通学用のカバンからタオルをおもむろに取り出した。日夏は運動部なので多分それ用の物だろう。


「......俺の左手を?」

「あたしの右手と繋ぎまして......」


 ちょ、無駄にドキドキするからやめろ。何で恋人繋ぎで手を握られてるの?またからかってるの?

 混乱に頭を回しながら、その繋いだ手を見ているとあっという間にカバンから出したタオルでぐるぐる巻きに固定されてしまった。


「?、?......え」

「......なにさ」


 いや可愛いんですけど!むすっと膨れっ面だが照れている顔が可愛い過ぎる!!――じゃねえよ、何でこんな妙な拘束されたんだよ。

 こんなの俺以外の奴なら、あれ?これ俺の事好きなのか?マジで!やったー!!って勘違いしちゃうぞ!

 ここは叱っとかないとな。こうやって弄んだ後々相手がやっかいなストーカーとかになりかねない。言うてこいつも俺の大切な人にかわりない......こういうイタズラを他の人に気軽にやらないようにきちんと注意しておこう。


「お前さ、どういうつもりか知らないけどこう言うこと他の男にしない方が良いぞ」

「え、あたし、こんなこと四季以外になんてしないし」

「あ、ああ、なら良いんだが......ちゃんと好きな人と恋人繋ぎはしなさいよ?」

「......いや、だから、あんたとしかしないってば」

「ああ、すまん......え?」


 ......ん?


「じゃあ、ゲームのルール説明するから」


 ......ん??


「名付けてお互い片手しか使えない、ガムテープデスマッチならぬ格ゲーデスマッチ......固定するハンドル無いから、お互いの手で固定しました」


 ......ん???


「3戦して先に2勝した方の勝ち。 何でも1つ言うことを聞くこと......」


 唐突に何か始まってるんだけど!?あまりの衝撃で何か重要な事を聞いた気がするがスッポリ頭から抜けてしまった。

 ていうか何でも1つ言うことを聞く?いや、ダメだろ!

 こいつ格ゲー強いし!てか、この人デカい大会とか優勝した経験あるコアゲーマーだぞ。フェアもハンデも血も涙もねえルール......これはノーだ、断固拒否だ!


「じゃあ始めるね。 キャラ選択して」

「いや、まてまてまて! そんなルールつけるなんて聞いてねえ! 拒否だ拒否!」

「......何でさ」

「お前が勝つ可能性の高いゲームで勝利報酬が何でも1つ言うことを聞くは無いだろ!」

「大丈夫、安心して。 あたしのお願い命には関わらない事だからさ」

「関わってたまるか!」

「......ふっ、く......あはははは!」


 なにわろてんねん!!なにこの天真爛漫という言葉がピッタリハマりそうな笑顔、恋に落ちそう。幼顔でこんな性格と髪型だから時々中学生っぽく見えるし......年下好きは更にヤバそうだよな。


「でもさ、四季が私に勝てれば何でも1つ言うこと聞かせられるんだよ? ......な、何でもだよ?」

「何でも......」


 上目遣いでこちらを見てくる。ああ、俺でなきゃ確実に落ちてるね!恋に。

 いや、まてよ?何でも......と言うことは、さっきからしつこく追及されていた南乃との関係性の話をやめてもらえるのか?

 ......それが可能なら、やる価値はあるか。あんまりフェアじゃないし負ける可能性も多分高い。けれど、お互い片手という縛りがあるなら、しかも日夏の方は利き手ではない左手でのプレイだ。もしかしたら......!


「......わかった」

「え、マジ? やた!」

「ただし俺が勝ったらちゃんと願いは聞いてもらうぞ!」

「......うっ。 わ、わかった。 でもあれだよ? あんまりエッチなのは、ね?」


 ? 何言ってるんだ?まあ良いさ、お互い了承した。俺の本気魅せてやるよ。

 頬を赤らめる日夏をよそにキャラクターを選択する。よし、これなら......!

 俺の選択とほぼ同時に日夏もキャラ選択を終える。そして、互いの雰囲気が変わる。

 真剣勝負......譲れない願いの為。


『ラウンドワン! ファイト!!!』


「よし、いくぞ!!」

「あたしも! 負けないっ!!」


 互いの精神を削りコマンドを打ち込む。凄まじい攻防の応酬。


「――なっ! ......や、やるじゃん! 四季!!」

「――ははっ! お前もな! 日夏!!」











 ~約20分後~











「はい、じゃあお願い事言いまーす!」

「......あ、はい」


 俺は1勝も出来ずに負けた。それどころか2勝先行された時に、俺が気の毒そうに見えたのか、「このラスト1本、四季が取れたらあたしの負けで良いよ」と言われ挑んだが、結果は見事にボロクソに負けました。

 いやー、マジで一方的にボコられて終わった。


「あたしのお願いはね」

「......」

「来月のお休みにデート」

「......?」

「あれ、聞いてる?」

「いや、聞いてるが。 来月にあるお前と彼氏のデートがどうした?」

「ち、違うよ! あんたとあたしのデート......!」

「は? ......え、お、俺!?」


 どういう事?何かの罠か?リア充仲間皆で影から俺の恥ずかしくて面白い行動を見て楽しむとかそういう企画?

 うーわ、最悪じゃん。......あ、いや日夏に限ってそんな悪趣味な遊びはしないか......え、じゃ、じゃあどんな裏があるんだ?


「あのー、それは、どう言う遊びなの? また俺をからかってるの?」

「はあ? からかってるって......からかった事ないし!」

「いやいや、たまに好きだのあたしを彼女にすれば?とか言ってからかって......」


 そう良いながら幼なじみの目の色が変わるのを見た。真剣な眼差し。俺はそれ以上何も言えなくなってしまった。

 それと同時に理解する。


「......あたし、四季をからかった事、1度もないよ?」

「え......あ、ああ......」





「デート、良いよね?」






「......わかった」





 この選択が、正解か間違いか。痛烈な痛みを伴うその答えを知るのはまだ先の事だった。



 そして俺達は青春の幻想へと落ちて行く。








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