表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/31

~4~ ネトゲのチーム



妹との風呂を堪能......じゃない。何このひどい言い間違え。

とにかく風呂からあがり、リビングで妹と二人さながら二匹のリスのようにアイスをガリガリ食べていると、父さんが起きた。


「ふんぐっ、ごおあああがががががっ......ふあーあっ」


歪な寝起きの咆哮をあげ、死体とも思えるような微動だにしなかった体をソファーからゆったりと起こす。まさにリビングデッドの呼び声。


「......う、ん? またソファーで寝ちまったか。 お前たち......お帰り。 ご飯は?」

「ただいま。 大丈夫だよ、俺が作るから」

「うちも手伝うよん~」

「ああ、悪いな四季、春......ふぅ」

「父さんも仕事で疲れてんだろ。 昨日も遅くまで......ゆっくり休んでろよ」

「ああ、ゆっくりと寝てたいんだが、そうも行かないんだよな。 締め切りが近くて......重ね重ね悪いが部屋籠るわ。 何かあったら呼んでくれ」

「ああ、わかった」

「お父さん、頑張ってね~」


疲労のせいかその体型のせいか、あるいは両方か。重そうな足取りで、二階の自室へと歩いてく父さん。その背に妹はひらひらと手を振っていた。


「......さてと、そいじゃ夕飯の用意すっかね」

「おー! うち、お肉が食べたいなあ」

「肉か......こないだ買ってきた鶏肉があるな」

「チキーン! やったぜ!!」


キッチンへと行き冷蔵庫を開ける。

確か~あと、あれが残っていたはず......あ、あった。




◆◇◆◇◆◇



~ラストファンタジア(グラハニアのカフェ)~


リク『おーい! いねえのかぁー?』


カイト『ダメだな。 もしかして、寝落ちか?』


カフェのテーブル、椅子に座り離席マークを出し呼び掛けても反応の無いナイトを囲むプレイヤー二人。

一人は黒い鎧を身に纏う、暗黒騎士。そしてもう一人は大きな赤い槍を背負う竜騎士。


リク『まあ、その可能性はあるけどな』

カイト『学校では伝えなかったのか? 今日のレイドの話』

リク『いやシキ倒れてたじゃんか。 知ってるっしょ? 同じクラスなんだし』

カイト『ああ、まあ、それで伝え忘れてたと......成る程な』


リク『スマホのメッセージも返って来ないなあ』

カイト『俺達はチームハウスに行こう。 ここでこうしていても仕方がない』

リク『そーだねえ。 メッセージも送ってるし見たら来るでしょ』


二人がテレポートの魔法でチームハウスへと消えた後、入れ替わるかのように一人、ウサギ耳ツインテールの女キャラクターがシキの元へと走ってきた。


ニカ『ん、あれ!?』


離席マークを見て驚愕する。

そのプレイヤーは詩人。弓を使い、歌を奏で戦う支援アタッカー。


ニカ『え、まだ居ないの!? あと十五分でレイドクエストが始まるんだが!』


シキとネームがついた騎士(ナイト)をターゲットしてなでなでと頭を撫でるアクションを繰り返す。

おーい、いないのー?と呼ぶように。


ニカ『星乃アリスちゃんの配信でもみてるのー?』


とチャット欄に打ち込んだ所で、ああ、今日はまだ始まってないやとニカは気がつく。

......そういえば今日寝不足だって言ってたな......寝落ちの可能性が高いかも?

それにしても......今朝は驚いたなあ。可愛いって言ってくれた時......あれはホントにびっくりした。......ふふ。

緩む口元、落ちる目尻、綻ぶ心。


――あ、もうチームハウス行かなきゃ。私も遅れちゃう!


テレポート魔法を起動させ彼女もまた消えていった。



◆◇◆◇◆◇



「ふう、腹いっぱいだー......」

「ねー! 幸せだーねぇ......」


夕食に作ったのは鶏肉いっぱいのカレー。沢山作って置いといたから父さんも母さんも食べるのに良いだろ。

カレー美味いし最強だよな。妹の隠し味が決め手の我が家特製カレー。

隠し味になに入れてるんだ?と聞いたことがあるんだが、その返答は「美味しくなあーれっ!って言う、お兄ちゃんへの想いと愛情だよ!」との事。いやいや、なに言ってんのこの子、可愛すぎか?あざといけど。


それはそれとして、携帯ゲー、ホースガールのTP(育成ポイント)がたまってる頃だな。

フラッシュを育成せねば......つかそろそろ新ガチャくるんじゃね?石貯まってたっけ?

そんな感じでスマホを見ると、凄い数のメッセージが来ている事に気がついた。


「うおっ!? え?」


瞬時に何が起こっているか理解すると、まるで寝坊した朝、遅刻しそうな時のように機敏な動きで行動を開始する。急に動き出した俺に困惑する春を置いてけぼりにパソコンの前へと走った。


「うえ!? お、お兄ちゃん!? ......あ、またゲームか」



椅子に座り、ゲームチャットへと手早く文字を打ち込む。


シキ『ごmん! 今戻った!』


時間は、えっと......五分遅れか。遅刻してもーた。つか誤字ってる。


ニカ『お帰り!』

アユム『お、良かった来たか!』

ガクト『お疲れ様』

ミオ『今晩わ』

リク『すまねえ、レイドの話し言ってなくて!』

カイト『おお、おつかれー』

エーイチ『お疲れ様じゃよ』

ロア『お疲れ様あ~♪』

ノア『こんばんです』

カオリ『お帰り~。 誤字w』


一斉にチームメンバーからチャットが返ってくる。


シキ『皆、今晩は! お疲れ様! 今チームハウス行く』


と、その時テレポートで俺の前にチームの一人が現れた。詩人のウサミミツインテール、ニカがだ。わざわざ迎えに来てくれたのか、なんて優しい奴なんだ......有難い。

俺はパーティーの誘いを受け、認証する。一緒のパーティーとなったのを確認すると彼女はまた再度チームハウスへとテレポートした。


テレポートしとんできたチームハウスには嫁以外のメンバーが勢揃いしていた。総勢十一人。あと今居ないセイシュンという人と、ネトゲ嫁のアリスを入れればフルメンバーで十三人になる。

そしてメンバー内には同じ学校の人間が俺と嫁を含め七人いる。俺が知る範囲では。


リアルでは話したことも会ったこともない人が半数いるけど、皆良い人達でもう大体二年くらい一緒に過ごしている。もはや家族のような存在だ。こんな俺がまともに毎日頑張れているのはこの温かな人達がいてくれてるのも大きいと思う。本当に。


ロア『聞いたけど、今日のレイドの話し聞いてなかったみたいねえ? それじゃあ仕方ないんじゃなあい?』


派手な衣服を纏う赤魔導師、ロアがオカマ口調で言う。続いて寡黙な黒魔導師が一言。


ノア『そうだね』


そしてそれに続きもう一人の老齢な容姿の黒魔導師エーイチが言う。


エーイチ『そうじゃな。 気にするでないぞい』


リアルでは夫婦だと言っていたアユム、ミオもフォローをいれてくれる。


アユム『そうだね。 仕方ない仕方ない』

ミオ『そうね。 そんなこともあるわよ』


するとうちの学校のクラスメイトでイケメン、カースト上位者でもあるチームマスター暗黒騎士、カイトがまとめ始める。


カイト『さて、ナイトも来てくれた事だし今回のレイドメンバーを決めようか』

エーイチ『ふむ、人数も多いようだしわしは今回留守番でもしとるかの』

ノア『え、行かないの。 僕、ヒーラー(回復役)やるけど』

エーイチ『いやいや、わしはわしでやることがあるからの。 すまんの』

ノア『わかった』

カオリ『私も今回はシーズナルイベントをやるから抜けるわ。 また今度誘って』

カイト『わかった』

ロア『それじゃあ、ワタシは今回赤魔導師じゃなくてヒーラーでもしようかしらん♪』

リク『マジ!? 皆すげーなー。 俺竜騎士一ジョブで精一杯なんだけど』

アユム『いやあ、俺も侍だけで手一杯だよ。 リクくん、近接ツートップで頑張ってやろうぜ!』

ミオ『ふふっ、うちの近接組は火力高いから、召喚士の私も頑張らなくちゃですねえ』

アユム・リク『『いやいや! 火力の鬼が何を言っとるんすか!』』


近接ツートップの突っ込みが夫婦(妻)に入ったところで、師匠、ガクトが言った。


ガクト『ふむ、しかしメンバーがまだ多いな。 では今回は俺もパスさせて貰おう』

シキ『え、ヒーラーいなくなるだろ』


と俺が言うと、師匠は指を指した。


ガクト『ニカ、君が今回のヒーラーだ。 前々から練習しているのを僕は知っている』

ニカ『え、えええ!?』


画面越しでも日夏が驚きふためいてるのが分かる。確かにヒーラーが足りないけれど、今回のレイドはゼロ色と言う難易度が高いモノだ。

大丈夫か?パーティーメンバーは優秀で多分被弾も少ないが、回復役のヒーラーは結構難しいぞ?


ガクト『出来るだろ?』


と、師匠の言葉に対し詩人の幼なじみは頷くアクションをした。


ニカ『わかったよ。 頑張る! やってみる!』

ガクト『ふ......良い心意気だ。 君ならやれるさ』

ニカ『ありがとう!』


ジョブチェンジした幼なじみはヒーラーの医学者になっていた。成る程、おそらく師匠に医学者を習っていたのか。

なんか師匠が師匠してんな。さっきのやり取りもかっけーし。本当に年下なのかよ師匠。


カイト『さて、決まったな! 食事アイテムや薬も忘れずに持ったか? 行くぞ!』


皆がおー!と手を天向けつき出す。いつの間にかこれがこのチームでレイドに出る前、繰り出すアクションになっていた。

良いよな。気合いが入る。


そして俺達はレイドへと繰り出していった。




◆◇◆◇◆◇




――ふう、終わったあああああ!!!


計五回戦を経てバトルフィールドから戻ってきた俺達。


リク『いやあーやっぱり緊張感あんねー! スキル回し外れかけてあせったー!』


竜騎士のセリフに対し暗黒騎士が言う。


カイト『? いや、良い感じだったろ。 お前は余裕があると逆にミスるからな。 このくらいが丁度良い』

リク『!? な、なん......ノーミスだったからってコノヤロー!』

『『『www』』』


チャット欄にwww(笑い)を生やす他メンバー。この二人、竜騎士と暗黒騎士は同じクラスの二人だが、クラスでは別グループに居ることが多くこうやってじゃれあって遊ぶ姿を見るのは結構レアだ。かくいう俺もクラスでは地味な陰キャだから竜騎士はともかく、クラスカースト上位にいる暗黒騎士と絡むことはあまりない。


ネットゲーム上での関係性、けれどそれ故に不必要な人間関係やカーストも存在しない。

だからこそ、このデータで構築された世界に確かに絆は存在するのだと思う。

今までのチームの皆との思い出がそれを肯定している。

俺達の絆はきっとかなり強い。皆、いろいろな事を乗り越えてきたから。


何も持たない俺の宝物の一つがこの温かく居心地の良い、チーム。

この世界と出会えて本当に良かった。


――あ、そろそろか。



シキ『ごめん、配信の時間だ! 一旦放置するから反応無かったら察してくれ』


皆がおっけー、わかったと口々に返事をしてくれた。そして俺は別窓で動画サイトを開き配信を待つ。


「あ、珈琲いれてくるか......」


彼女が、星乃アリスが南乃だと言うことを知ってからの初めての配信。いつもと違う妙な緊張がある。


大丈夫かな。何だか心配だ......南乃は本来は陰キャタイプ。人前で喋るのはおろか一対一でもキョドるような線の細い女の子だ。

勿論、これまで数多の配信を成功させてきた彼女だそんな心配なんて実のところ不毛の極みなのだろう。

けれど、一人の女の子としては普通のメンタルなのだと俺は知っている。だから......。


俺は少しでも彼女の力になりたい。携帯の連絡先を開き、宛名を南乃へと指定し、メッセージを綴る。


『アリス、配信頑張ってな! 応援してる』


っと、これでよし。


ポーン!と、直ぐ様メッセージの着信が来た音が鳴る。


『ありがとう! 嬉しい! これでめっちゃ頑張れるよ!』



俺の大切な人、遠くて近いVTuber星乃アリスの配信が始まる。






もし、「面白い!」や「続きが気になる!」と思って頂けたなら、下にある☆を★押して評価して貰えると嬉しいです!

ブックマークもかなり喜びます!φ(゜゜)ノ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ