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~30~ 月夜に咲く (南乃視点)

 


 ――......お母さんの


 声が聞こえる。


 産まなければ良かった。確かにそう言った......でも、うん。


 私も生まれたく無かったよ。なんで私を生んだの?


 意味の無い命。


 私が生まれた意味、無いんだよね。だから赤ちゃんだった私を睨み付けたんだよね。



 冷たい......あなたの眼。暗闇に置かれてるランプのように憎しみで燃えていた。静かにゆらゆらと。



 どうして私はここにいるんだろう。





「――はっ」


 眼が覚めると私は知らない家にいた。


「? え、どこ......ここ」


 確か、私、買い物に行く途中で公園の日陰になっていたブランコで休んでいて、それで......それで、どうしたんだっけ?

 記憶が曖昧だ。あんな昔の記憶は思い出してしまうのに......。


 電気がついてなくて暗いけど、外の月明かりで家の中だと言うことはわかる。でも私の家ではない。どこなんだろう......。


「――......っ」


 ん?何か聞こえる......?ふと横の方を見ると、そこには腕組みをして座る四季くんがいた。こくりこくりと、首をかくんかくんさせ眠っているようだった。


 え!?と、叫びそうになる私。しかし、起こしてしまうと思いすんでのところで口に手を当てた。......セーフ!


 そっか。そうだった。私、四季くんに助けられたんだ......熱中症になりかけていたところ、家に連れてきてくれて介抱してくれたんだ。


 ふとおでこに貼ってある冷えピタに気がき、そっと触れる。


 な、なんだろう......口許が緩む。にまにましてしまう。


 えと、どうしよう。これは四季くん起こした方が良いかな?でも疲れてそうだし......ていうか、この座った状態で眠ってるのは辛くないのかな?首痛そう。

 せめて横に倒して寝せてあげた方が良いよね......うん。


 起こさないようゆっくりと四季の上半身を自分の体に寄せて倒していく。体重をゆっくりと移動させて......


「あっ」


 ......。


 横に寝かせる事には成功したが、男の四季の体は予想以上に重たく、上手く体を抜く事が出来なかった。とてんと座り込んでしまった南乃の膝に四季の頭が乗っかってしまう。


「......ま、まあ、仕方ないよ。 うん」


 昼間倒れた時のように顔が赤くなってるんだろうけど、暗くて良かった。

 でも、これ四季くん起きたらびっくりしちゃうよね。うーむ......む?っていうか、私、汗大丈夫かな!?そっちのがヤバくない!?ど、どどどどど、どーしよう......汗臭いとか思われたら死ねるんだけど!!!


 うううう......う?なに、あれ?


 ふと顔をあげると、そこには月明かりが照らし出した一枚の「絵」があった。


 それは「私」の絵。アリスだ。


 一人空を見上げたたずむアリスは月を見上げている。



「......凄い。 これ、誰が描いたんだろう」


 まるでそこに存在しているかのような迫力。暗い部屋に月明かりひとつで照らされているのにも関わらず、その絵の美しさがわかる。


「四季くんの家族の人が描いた? ていうか......もしかして、四季くんだったり?」


 なんて心を引き込む絵だろう。こんなに絵を美しく思ったのは久しぶりだ......この感じ、前にも......あ、そうだ!確かアリスのVTuberモデルが完成して、見たときと同じだ!


 こんな絵が描ける人が、あの人以外にもいたんだ......。



 スッと頬を涙が伝った。



「ふえ!? あ、あれ」



 何故か溢れ出す涙。一人たたずむアリスは誰かに似ていた。そう、あれは私だ。私の心を切り取ったかのような絵。


 心が、不思議とみたされていく。


「もしかして......」


 これを描いた人が......あの人なのかな。




 もう一度あってお礼を言いたい。あなたのおかげで私は生きている。

 意味を......こんな無意味な命に生きる意味をつくれた。



 四季の眠る横顔に心で問いかけた。



 ......あなたなの、四季くん。







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