~29~ 光の方へ
「ありがとーございましたー」
疲れの見える店員さんの声を背に、俺はコンビニをでた。購入したものは、モンスターエネミー(エナジードリンク)、ポテチ(うすしお)、ゲームカード。
「さーて、だらだらクラフトでもしますかぁ!」
土曜、休日。今日は春がお泊まりで居ない。思えば妹が泊まりがけで出かけるのはこれが初めてじゃないか?
先日、春と一緒に行ったプール。そこにはカフェで出会った乃愛がいた。乃愛は春と一緒の年齢で、あの時仲良くなった......けれどまさかお泊まりする程になるとは、お兄ちゃんびっくり。
「兄離れが始まるのか......嬉しいけど、少しだけ寂しいかな?」
なんだかかもやもやするのは今まで一緒にいすぎたせいだろう。
「ん?」
帰り道の途中にある公園。そのブランコには見覚えのある女の子が座っていた。
うつむいたままの彼女は、それでいてスマホを見てるわけでもない。
? 何してるんだろ?
「南乃、か?」
「......あ、え? 四季くん?」
「何してるんだ?」
「今日、あつくて......少しくらくらしちゃって」
ああ、だから日陰にあたるこのブランコに座っていたのか。てか、少し顔が赤い。意識ははっきりしているけど、心配だ。
「南乃、ちょっと家くるか?」
「ふぇ」
「こっから近いからさ、少し涼んでいけば良いよ。 時間ある?」
「......」
とろんとした目付きで見上げてくる。そんな場合ではないのに、胸が高鳴りだす。可愛すぎだろ。
「......うん、ありがとう。 すこしだけ......いい」
「もちろん! 歩けるか?」
「うん」
二人はゆっくりと歩き始める。
◆◇◆◇◆◇
冷房をかけ、扇風機を総動員させる。おまえらー!これは重大任務である!全力で送風するんだ!!(いえっさー!!)
ソファーにぐったりと横になる南乃。
「......」
結構辛そうだな。これは様子をみて危なそうなら病院......かな。
「四季、くん」
「ん、どした?」
「......ありがとう」
「いいよ。 南乃が大丈夫なら、いつまでもゆっくりしてて良いからな。 今日親も仕事で地方行っててさ、帰らないから」
あ、そうか、今日って俺一人なんだな。いつもは妹が必ずいるから、こんな珍しい日は他に無かった。
「あ、汗、気持ち悪くなったらシャワーも使っていいぞ。 服も俺ので良ければ......」
そう言いながら、この二重の緊急事態にやっと気がつく。
これ、女連れ込んでる見たいじゃね?......やべえ、そんな場合じゃないのに緊張してきた。
無音のリビング、南乃の息づかいが微かに聞こえる。
......寝た?あ、そだ。冷えピタはっといてやろう。
冷蔵庫に入ってる冷えピタを取り出し、シートをめくる。起こさないように、おでこの髪をのける。
「......本当、綺麗な顔してるよな」
思わず出てしまった独り言。そっとおでこに冷えピタをはり、横の椅子へ座る。様子をみとかないと。
そして俺はカワカミを育成し始めたんですの。
このね、猫目がクソカワ。良いよね、特徴的なポイントがある美女。ストーリーも泣けたし。
あと貯めた石も殆んど消えて泣けた。
スマホの左上。時計を横目で見る。
11時になる。そろそろ飯でも作るかな......南乃も起きたら食べられられるように、おおめに作っとくか。
嫌いなものあるのかな。つーか、お弁当たくさん作ってくれてるし、お返しもかねて。
お返し......俺は、ネトゲでもたくさん助けられてる。いや、そうだ、ネトゲだけじゃない。絵師としても、四季という人間がこの南乃という女の子に。
何か、返せるもの。無いのか?
ふとリビングの壁へかけられてる俺が描いたイラストを眺める。妹や親が好きだと言ってくれて、飾ってある絵。
アリスのイラストで、絵画調のアクリルで描いたもの。
まだ、役に立てるのかな。俺は。
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