~26~ 花咲無能
純白の鎧に身を包む猫耳の男が1人。荒野の高台にある大岩に背を預け座っていた彼の名前はセイシュン。
ノア『やほー』
セイシュン『こんばんは』
僕は近づき呼び掛ける。
ああ、男キャラだったのか、穂四春ちゃん。......すごいイケメンに作ったな。でもなんか見たこともあるよーな。
ノア『って、あれ!?』
セイシュン『?』
ノア『セイシュンって、うちのチームのセイシュンだったのか!』
セイシュン『え、あ!』
......嘘、まじでか。これは、びっくりだ。うちのチームにも同じキャラクターネームの人いたなあって思っていたら、その人だった。
これは......楽しくなる、予感が!って、あれ?なんでオフライン表示なの?
あ、だからいつも居ないように見えてたんだ。間違えて設定かえちゃったのかな?
セイシュン『そうか、君がノアだったのか。 よろしく』
ノア『うん、よろしく!』
このままじゃチームの皆に気がつかれなくてイベントにも誘われない。教えてあげ......って、あああああ!!?
そ、その武器は!!ドロップ率1/4096のレジェンドウェポン!!クロスヴェノムソード!!!
ノア『すごいね! 武器、超レアなやつじゃん!!』
セイシュン『む? これか......これは結構頑張った』
ノア『良いなー!』
セイシュン『ノアは、キャラクターも銀髪なんだね』
僕のキャラクターはリアルと同じく銀髪の碧眼。違うのはこの狐耳と、ふさふさのしっぽ。着ているこのローブはおじいちゃんのおさがりで、黒魔法の破壊力を上げてくれるお手製装備。
ノア『うん。 セイシュンは男の子なんだね。 カッコいいねー』
セイシュン『ふっふっふ。 これは家のお兄ちゃんをモデルに作ったのだよ』
ノア『あー! 確かに似てる!』
セイシュン『でしょ?』
ノア『上手く出来たね!』
セイシュン『ふふん。 この虚ろな眼差し、意外と整っている顔と、うちの一番好きなポイントである唇!! 完璧でしょ!?』
なんか火がついたように喋りだしたんだけども......あ、でもお兄ちゃんの事好きって言ってたしな。
こんなに好意を爆発させて、可愛いねえ、穂四春ちゃん。ふふ。
セイシュン『......――でね、四季ってばお漏らししちゃったのよ? 小学生だから仕方ないけれど、まあ、ね? あの時の涙を流して謝る四季は可愛かったわ。 それだけで全てが許される。 そう、その可愛さに戦争や紛争は勿論、環境問題に至る全てが......』
いや、何聞かされてるの僕!?
突然、穂四春ちゃんが四季くんの恥ずかしい過去を暴露し始めたんだけど!?
いいの!?僕、聞いていいのこれ!?
するとセイシュンが察してチャットが止まった。
あ、良かった......終わったみたいだ。
こちらをチラッと見たセイシュン。何故か得意気な表情で、頷いた。
セイシュン『でね、中学生にあがった四季は......』
え!?まだ続くの!?
ちょっと失礼しますが、ブラコン過ぎるでしょう穂四春ちゃん!
ノア『うん、わかった! もちつけ』
セイシュン『もち?』
ノア『あ、ちがう。 おちつけ!』
セイシュン『おもち好きなのかと思った』
ノア『もちはきなこ餅が好き』
セイシュン『うちはよもぎもちが好き』
ノア『よもぎもちか......うちのカフェには無いなあ』
セイシュン『え、きなこ餅ならあるの?』
ノア『あるよー。 今度食べにおいでよ』
セイシュン『良いねえ、きなこ餅』
うちの抹茶おもちセットは絶品だぜ!って、あれ?何か言い忘れてるような......。
セイシュン『てか、クエストでも行こうか』
ノア『あ、うん』
まあ、いっか。
◇◆◇◆◇◆
アリス『やほやほ』
シキ『よ! アリス』
アリス『今日も暑かったねえ~』
シキ『だな。 その分プールが気持ちよかったな』
アリス『ね! 凄く気持ちよかった。 そういえば、シキくんスライダー苦手なの?』
シキ『え、あ!? そ、そんな事は......』
アリス『あー! 嘘つくんだ?』
シキ『いや! 嘘、では』
アリス『ふーん?』
シキ『すみません。 怖いです』
アリス『正直者! 偉いねえ』
なでなで( *´д)/(´д`)
シキ『ところで』
アリス『ん?』
シキ『アリス、今日調子悪かったのか?』
アリス『え、なんで? 悪くなかったよ?』
シキ『いや、様子が。 まあ、気のせいだったんならいいんだけど』
アリス『ん~? あー!』
アリス『単純にシキくんに水着みられんの恥ずかしくてさ』
シキ『え、ああ、そういう事か! なるほど』
アリス『あんな偶然に会うなんて思って無かったから、心の準備が出来てなくてね』
シキ『うん、そうだな。 あ、凄い似合ってたぞ。 水着のアリスも綺麗だった』
(o・ω・o)<3
アリス『そ、そっか。 ありがとう』
シキ『うん』
アリス『でもさ』
シキ『ん?』
アリス『今度は二人きりが良いな』
アリス『二人の思い出を沢山つくりたいなって』
シキ『そうだな』
アリス『うんうん』
シキ『次は......』
次は?
アリス『お祭りとかかな?』
シキ『神社祭か』
アリス『それ! 毎年、花火がすっごく綺麗だよね』
シキ『確かに。 百発だっけ?』
アリス『え、そんなに打ち上がるんだ!? すごっ!』
シキ『うん。 確かそんくらいあるはず』
花火は毎年綺麗に打ち上がる
咲き誇るその花々は一瞬の命で闇に消えて行き
無になる。そう思っていた......これまでは。
能書きを垂れながら、俺は南乃の言葉の裏に思いを馳せる。
この好意に応えても良いのだろうか。今までの自分がしてきた、好きになって貰う為の、必要とされる為の俺で無くても......無くなっても、あの花火のようにただの綺麗な思い出として終わってしまわないか?
確かにあるもう1つの道は暗闇でみえやしない。
その先にホンモノがあるのだろうか......。
......あの頃、先生が先生だとわかる前、ネトゲで彼女は言った。お前は母親に呪いをかけられている、と。
それは自力では解けないし、解こうとすればする程お前を苦しめるよ、と。
じゃあどうすれば良い?と俺は聞いた。
彼女は笑って答えた。
『ネトゲでもリアルでも良い。信じられる仲間を沢山作りなさい』
『別に自分を作ってもいい。 それがリアルと違っても良い』
『そうすればいつかお前の望むそれは手に入る。 呪いも解ける』
『私がそうだったようにね』
アリス『花火、もう楽しみになってきちゃった』
シキ『早いな。笑』
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