~25~ 鏡に映る
「南乃って......大丈夫だったのか? 毎日忙しいんじゃ」
「うん。 たまには遊ばないとね。 ほら、話のネタにもなるし......それに」
南乃は日夏をチラッと見る。
「せっかく出来た友達だし......誘ってくれたの嬉しかったから」
「なるほど」
「四季くんは、今日はネトゲしてると思ってた」
「あー、まあ、春に言われなかったらしてたな」
「ふふ。 春ちゃんの事大切なんだねえ」
「まあ、妹だしな」
話しながら考えていた。俺はあの日、この人を裏切って......。
日夏は俺の裏切りをずっと秘密にしていてくれるのだろうか......日夏の中の俺は、今どういう状態なのだろう。
俺は全てを失わずにいられるのか?最近、何だか春の様子もおかしいし。
嫌だ。誰も......逃がさない。
「――四季くん......四季くん?」
「あ、ご、ごめん......」
「......大丈夫?」
「ちょっと考え事してた......すまん」
心配そうに覗いてくる。......そうか、心配してくれてるのか。
「そういえば四季くん」
「ん?」
「あと少しで一周年なんだよね。 星乃アリス」
「ああ、そうだな」
そう、もうすぐ一周年。逆に言うとまだ一年も経っていないのにVTuber界トップクラスのレベルに達してしまった。今、この星乃アリスはあの時の底辺絵師をどう思っているのか。
わんちゃん、ざまあとか思っているのだろうか?ざまあ系が始まっているのか?
人気でそうかもな......【底辺VTuberの成り上がり】~生意気絵師にお前なんか人気でねーよと言われたけど、気がつけばトップレベルVになっていました。今更媚びてももう遅い~......こんな感じ?いや、タイトルセンスねーなこれ。
「私ね、楽しみなんだよね。 初めての聖誕祭でさ、今まで応援してくれた人達に思いっきりお礼するんだ」
「おお、それは皆喜ぶな。 南乃が楽しそうに配信で喋っているのを観ているのが一番の恩返しだろうからな」
「うん! ありがとう。 四季くんもずーっと応援してくれて」
「いえいえ」
「てか、四季くん......」
む。なんだ、南乃のこの真剣な雰囲気は......?
「覗いててごめんなんだけど、それ......ちゃんと編成した方が良いよ? 強い子メンバー外れてる時あるから」
「え? ......あ、本当だ!! なんでBが外れてCが......つーか、ダートこの子いれた方が良いじゃねえか!!」
「ね、ちゃんと見ないとダメだよ~。 ふひひ」
「南乃もホースガールやってるのな」
「やっぱりさー、配信で話題とか出るでしょ? それについていくにはやっといた方が良いからね......あ、でもホースガール好きだよ? 面白いよね!」
「ああ、面白いな。 南乃誰好き?」
「ヘイロー」
「いいね!」
「物凄いがんばり屋さんだから。 皆がんばり屋さんだけどね」
「ああ、でも......言いたいことはわかるよ」
「四季くんは?」
「俺は、灰被りの怪物かな」
「あー、漫画が面白いって言うよね。 読んだこと無いけど、可愛いよね」
「うん」
田舎の底辺から這い上がる、灰被り娘。まるで、南乃のようだ。
◇◆◇◆◇◆
甘い香りの店内で二人珈琲を飲む。時間は16時過ぎ。
ひとしきりプールで遊んだ俺と春は皆とわかれて、クレープ専門店へと来ていた。
「うんまあああああい!! やっぱり抹茶クリームだよね!!」
「それは良かった」
春のご機嫌な様子を見てホッとする。本当にクレープ好きなんだな。
「そういえば、春。 乃愛ちゃんとは仲良くなったのか?」
あの後ずっと一緒に遊んでいた二人は、俺の目から見れば姉妹のように見えた。
発育が良く、容姿が高校生の妹、春。一見小学生のように見える天使、乃愛ちゃん。二人とも中学生だ。
きっと二人とも周囲とは違うその容姿に悩まされる事があるのだろう、実際、春がそんな事を言っていたし。
だからこそ、仲良くなれれば良いなと俺は思っている。支えは一つでも多い方が良い。
春は危うい所があるし、乃愛ちゃんにはそんな存在になってくれればと思う。勝手な願いだが。
「乃愛ちゃん、良い子だったよ。 今度遊ぶ約束もしたし」
「おお、マジか!」
「妙に嬉しそうだな、お兄ちゃん」
「そりゃ、お前に友達できたなら嬉しいだろーよ」
「......まあ、いっか」
?
「乃愛ちゃんネトゲやってるみたいなんだよ。 今度それで一緒に遊ぶんだ」
「え、ネトゲするのか乃愛ちゃん!」
「うん」
「あ、でも聞いたら永一さんもネトゲしてたしな。 それでかな」
あの日、永一さんと乃愛ちゃん二人に出会ったカフェで流れていた曲は、俺のやっているネトゲの大切な場所、アーラインカフェに流れるBGMだった。
今日プールで聞いてみた所、南乃と話していた通りで、やはり永一さんもラストファンタジアプレイヤーだったのだ。しかし、そうか、乃愛ちゃんもプレイヤーだったのか。
「おじいちゃんもネトゲやるんだねえ。 すごいね」
「ああ。 いろんな人がいるな」
「ところでお兄ちゃん。 美七冬ちゃんは彼女なの?」
ぶふっ!!!
俺は口に含んだ珈琲を吹き出した。
「おわっ! 何してるのさ!?」
「ぐふっ、おま、お前が変な事急に言うからだろ」
「も~。 ふかないと......」
「あ、いや、汚いから! 俺が拭くって!」
「何が汚いのさ。 うちお兄ちゃんのげろも処理したことあるのに......任せんしゃい」
「......う、む。 すまん。 ありがとう」
昔から、そう。支えは多い方が良いと言ったが、俺は......。
確かに日夏にも海斗にも陸にも支えて貰っているが、一番の理解者でありずっと側に居てくれたのは、春なんだよな。
どんなに辛い時も悲しい時も俺の側に居てくれたし、寄り添ってくれていた。
俺は......もしかすると春となら。全てを乗り越えられるのかもしれない。
実際、俺が捨てられた日。春は家族として受け入れてくれて、兄と妹と言う絆を与えてくれた。
ひとりぼっちではないと、言ってくれた。
春は特別なんだ。俺は......春も失いたくない。
「南乃は......その」
「いーよ。 無理に言わなくて」
「......」
「でも、ここはお兄ちゃんのおごりだからね?」
「それは勿論......すまん」
「なに暗い顔してんのさ。 さ、珈琲飲んで帰ろ?」
「あ、ああ......うん。 そうだな」
「今日、夕食何にするの?」
「あー、冷蔵庫なにあったかなぁ」
でも......最後は、うちが勝つよ。四季。
もし、「面白い!」や「続きが気になる!」と思って頂けたなら、広告の下にある☆を押して応援して貰えると、めーっちゃくちゃ嬉しいです!
ブックマークも頂けると凄くモチベになります!φ(゜゜)ノ




