ネスティ・イルズ・テンペルドとの出会い
千文字制限悪役令嬢もの第三話です。
あなた…『覚悟して来てる人』…………ですよね
一話二話を「読んで」ここにいるって事は
この作品は「普通の悪役令嬢ものと違う」って事を既に『覚悟して来ている人』ってわけですよね…
黄金のような優しさでお読みいただければ幸いです。
「テンペルド様、今日は良い日でしたねぇ」
「そうね」
私とハンスにお弁当を褒められたのが余程嬉しかったのだろう。ウィニーの足取りは軽い。可愛い。
まぁ私にしたらウィニーといる毎日は全て良い日だし！？ 今日は手作りお弁当で更に良い日だし！？
「モリシャス」
「あらお兄様」
「ご、ご機嫌よう」
ウィニーが怯えたように一歩下がる。お兄様はもう少しご自分の目付きの悪さを自覚して頂きたいものですわ。
「大丈夫。こちら、私のお兄様」
「あ！ その、初めまして！ 私……」
「ウィニー・プリティアだな。知ってる」
「はい……」
にべもない態度。まったくお兄様はこういうところが良くないのよ！
「紹介するわね。兄のネスティ・イルズ・テンペルド。人見知りなの」
「お、おいモリシャス！」
「目付きが悪いのも家系だから、気にしないでね」
「あ、確かにお二人とも目元が似て……」
ウィニー、それは暗に私も目付き悪いって言ってない？ 自覚はあるけど。
「お前、それモリシャスも目付き悪いって言ってるぞ」
「ひゃあ！ あの、すみませんテンペルド様！ 私そんなつもりじゃ……」
「あっはっはっは！」
慌てるウィニーを見て笑い出すお兄様。釣られて私も笑い出す。
「あ、あの」
「良いのよウィニー。悪気が無いのは分かっているから」
「面白いなお前。平民が妹とつるんでるって聞いて、公爵家目当てのろくでなしなら痛い目遭わせるつもりだったが、心配ないな」
あれ？ もしかして？
「……お兄様、私を心配して？」
「ば、馬鹿！ 公爵家の嫡男として、家に降りかかる災厄を事前にだな！」
真っ赤になるお兄様に、今度はウィニーが笑い出す。押し殺した上品な笑い。あぁ可愛い。
「す、すみません。お優しいのですね」
「う、うるさい！ 俺はもう帰る！」
あらら、行っちゃった。背中が子どもみたい。
「ごめんなさいウィニー。驚いたでしょ」
「いえ、素敵なお兄様」
おや？ これはいい感じ？
王家には劣るが我がテンペルド公爵家も家柄としては十分。それにお兄様とくっつけば、晴れてウィニーは私の義姉！ 良いじゃない！
……まぁあの不器用さだから、あまり期待はしないけど。
「行きましょうか、テンペルド様」
あ、そうだ。この期に。
「ウィニー。兄と一緒の場でその呼び名は紛らわしいわ」
「あ、そうですね。でも」
「モリシャスと呼んで」
「え、でも」
「ね？」
「……はい。モリ、シャス、様……」
あ、死にそう。幸せ死にしそう。
お兄様、ありがとう！ 今日は最高の一日です！
読了ありがとうございました。
不器用兄ちゃん登場。おもしれー女って言う枠でしたが、字数食うので台詞普通になりました。ごめんね。
今度は女性キャラ追加！ サブ悪役令嬢、略してサブ役令嬢登場の第四話をよろしくお願いします。
