ウィニー・プリティアとの出会い
皆様、お正月、いかがお過ごしですか?
お休みの方、お仕事の方、様々かと存じます。
私はと言えば、巣ごもり正月を決め込んだのをいい事に、『千文字縛りで悪役令嬢ものを書いてみよう!』と思い立ちまして、あれこれいじくり回しておりましたら……。
八話出来てしまいました……。な、何を言っているのか分からねーと思うが(略)
ちなみに転生物ではありません。乙女ゲームは直接関係ありません。破滅しません。追放ないです。ざまぁ要素もないです。
……これ、悪役令嬢ものと言って良いのかな……。
一話千文字以内なので、軽く読めると思います。お時間の隙間に読んでやってください。
私は公爵家令嬢、モリシャス・イール・テンペルド。
我が家は代々王家に仕え、その権力は王に次ぐと言われる格式高い家。
その公爵家の長女として、この世に生を受けた私もまた特別であるべきだ。
他の貴族を従え、平民共を顎で使う、それが上位貴族の当たり前だと思っていた。
そう、思っていたのだが……。
「あ、テンペルド様」
あぁー! 天使が、天使が舞い降りた!
「ご機嫌よう、ウィニー」
「ご機嫌よう、テンペルド様」
その微笑み! 愛らしい声! 神の福音だってここまで光り輝きはしないでしょう!
「……あの、テンペルド様、今日は、その、お昼に、お弁当を作って来たのですが……」
「まぁ、私の為に?」
「……はい……」
うわあああぁぁぁ! 最っ高! 何!? 今日は何かの記念日なの!?
「ありがとうウィニー。一緒に頂きましょう」
「あの、でも、公爵家令嬢のテンペルド様に、平民の私が作った物などお口に合うかどうか……」
「ウィニー」
私は意識的に声を鋭くする。怯えさせないように、でも真剣さが伝わるように。
「貴方は由緒正しいエイムハイン学園の生徒なのよ。ここに通う以上、平民も貴族も関係ない。あるのは真摯に学ぶ姿勢とその成果。……前にも言ったわね?」
「テンペルド様……」
「共に高みを目指すのよ。分かったらその昼食をちゃんと私に食べさせてね」
「分かりました!」
あああぁぁぁ! 後光が見える! 可愛い! 満面の笑みの破壊力が!
……私はこれにやられたのよねぇ。
入学初日、権力と策謀を駆使して学園を思いのままにしようと画策していた私。それがウィニーに会って、一撃。正に一撃。心臓を撃ち抜かれるってやつね。
余りの可愛らしさに声をかけようとしたら、周りから「平民風情が」との陰口が聞こえた。同じように聞こえたウィニーの笑顔が萎れたのを見て、私の頭に血が昇った。
「貴方達! 平民が何だというの! ここは由緒正しいエイムハイン学園! ここに通う以上、平民も貴族も関係ない! あるのは真摯に学ぶ姿勢とその成果よ! 彼女にその資格が無いと言うのなら、この学園そのものと戦う覚悟をなさい!」
……言っちゃった〜。言っちゃったよね〜。
公爵令嬢の演説は効果覿面で、平民への差別は憚られる空気になった。お陰で貴族の子息達からは裏切り者扱い。だけど。
「テンペルド様。今日も勉学に励みましょうね」
「えぇ」
この笑顔の為なら全然平気! 私は主人公になる為に生まれて来たようなウィニーを、支えていくと決めたんだから!
読了ありがとうございました。
はい、悪役令嬢はウィニーの光にやられて一話冒頭で死にました。サヨナラ!
どっかで見たことあるなーは胸の中にしまって置いてください。多分正解です。
こんなノリがお嫌いでなければ、イケメン王子が出る第二話もよろしくお願いします。