表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わざわいたおし  作者: 森羅秋
――ドエゴウ町の不審死――
83/279

かたより伝播②


 早朝、本日も快晴だった。

 

 簡単に身支度を整え、装備を終えてから食事処へ繰り出した。

 昨晩は簡単な食事だったので、今朝はガッツリいきたい。


 早い時間でも営業しているか歩いて探そうと思ったが、案外すぐに見つかった。一件や二件じゃなく、営業している食事処が結構多い。この町は早朝から勤労者が多いのかもしれない。

 少々迷ったが、一番おいしそうな匂いがする食事処にした。


「席空いてる?」


 開き戸を開けて店内に入ると、八つある四人掛けのテーブルのイス席がまばらに埋まっていた。働き盛りの男性が多く、女性は一人、二人くらい座っている。


「どうぞ、お好きな席へ」


 店員が会釈して空いているテーブルをいくつか指し示す。端っこが空いていたので、そこに座った。


 よし! 朝飯はすこし豪華に!


 と決意していたので、日替わり定食の大盛を頼んでしばし待つ。

 

 あちこちから飯の良い香りが鼻腔をくすぐる。店内はお一人様の客ばかりだったので会話がなく、咀嚼音や汁を啜る音が店に響き渡って、余計にあたしのお腹が減った。

 待つこと十分くらい。


 「おまたせしました! 日替わり定食大盛です!」


 中央の大皿に揚げたチキンがありサラダが敷かれている。固めのパンが6枚とソースが三種類。あとはコーンスープと紅茶がある。チキンはパンに挟んで食べるようで、切れ目が入っていた。


 サクサクパンにチキンとサラダを挟んで、ソースを好みで垂らしサンドして、被り付いた。

 口の中でチキンとソースが絡み合い、その肉汁をパンが吸い込んでしっとりとし、サクサクからホクホクな触感になる。

 甘辛い! スパイシー! あっさり! の三種類の味が堪能できる。


 スープで時々口の中を潤し、最後の紅茶で口の中を整えてから、ホッと一息ついた。

 

 やっぱり熱々作りたては美味しいなぁ!


 ほっこりして、少しだけ余韻を味わってから、あたしは会計に向かった。


「美味しかった! また食べにくる!」


 勘定を払いながら若い男性店員に伝えると、彼は愛想笑いを浮かべた。


「有難うございます」


「そうだ。ちょっと聞きたいんだけど、災いの噂って耳にした事ある?」


「んー? そうですねぇ。焼失した村に災いが出て、もう去ったと聞きますけど、それ以外は知らないです」


 言いながら、少し年上の女性店員にアイコンタクトを送ると、彼女も分からないと言いたげに首を左右に振った。


 どうやら変死事件は災いと思われていないようである。もしかしたら、一部の人しか知らない情報だったのかもしれない。


「そっか。ありがとう、ご馳走様」


 あたしは食事処を後にして食料店に向かった。


 開店してすぐに入ったはずだが女性客が多かった。棚には旬の野菜や果物やパンや穀物などがあり種類が豊富だ。凍氷石が使われているようで店内が若干ひんやりしている。鮮度は良さそうだ。


 携帯食を購入して外へ出ると、店の傍に荷卸しをしている中年女性がいた。腰を叩いて背伸びをし、重たそうに箱の上に座る。休憩するようだ。

 丁度いい、話しかけてみよう。


「おはよう。聞きたいことがあるんだが、今は大丈夫か?」


「おや? 可愛い旅人さんだね。少しならいいよ、なんだい?」


 汗を拭きながら女性はにっこりと笑った。


「この辺で災いが出たとか、噂とか聞いたことある?」


「噂ねぇ。火事で焼失した村以外だよね?」


「ああ」


 女性は腕組みをしながら「うーん」と唸る。


 「あたいはこの町から出ないから、それ以外だとわかんない。でも町長の家に行けば分かると思うよ。自警団や業務とかは町長が全部管理してるからね。あっちなら詳しい事がわかると思う」


 「わかった。町長宅はどう行けばいい?」


 女性はどっこらしょっと重い腰をあげて、二時の方向を指し示した。広大な畑が広がって、ぽつんぽつんと小さな民家がある。


「あっちの畑の向こうだよ。町の中心から少し離れたら大きな家が見える。それさ」


「ありがとう」


「いやいや、災いは近寄らないのが一番だからね」


 豪快に笑った女性に軽く会釈を返して、あたしはその足で町長の家に向かった。



ブクマ&評価有難うございました!

大変励みになります!


次回更新は木曜日を予定しています。

面白いと思ったらまた読みに来てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ