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わざわいたおし  作者: 森羅秋
――ドエゴウ町の不審死――
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かたより伝播①

<情報収集も楽じゃない>


 軽く空腹を覚えた状態で宿に戻ったが、食堂がなかったことに気づき軽く舌打ちをする。

 外に買物に出るにはもう遅い時間だ。

 酒場は営業しているだろうが、ルイスの事もあり今晩はもう外へ出たくなかった。


 万が一にでも遭遇したら、先ほどの態度で話しかけてしまったら、反射的に殴ってしまいそうだ。せめて一晩時間を空けて、精神を落ち着かせてからにしたい。

 仕方なく、今日の晩御飯は携帯食料になった。


「ふぅ……」


 パサパサして、口の中の水分を一気に持っていく、スティック状の小麦パンを食べながら、沸かしたお茶を飲む。

 気分一転するために今日のお茶は潤い飴だ。

 穴に引きずり込まれて焦げたり、イソギンチャク魔王の出で立ちとか、あんまり良い記憶がないが。

 香りと味が良いので気分転換する時に重宝する。


「しかし、減ったなぁ~」


 残念な事にあと三パックしか残っていない。大切に飲まなくては。

 

 小腹が満たされた所で、ドアからノックが聞こえた。


 

「はいはい」


 腰を上げて来客に応じる。

 食堂がない宿や一日顔を合わせない日とかは、大体このくらいの時間に向こうからやって近況報告会をする。


 ほんとマメな奴。


 あたしは鍵を外してドアを開けると、案の定リヒトが立って居た。


 風呂上りで来たのか、髪の毛が若干湿っている。部屋は温度調節がされているが、廊下は外気温のままで、濡れた髪では少し肌寒いだろう。


 

「長話なら中に入るか?」


 親指で示すと、彼はゆっくり頭を左右に振った。


「いや、いい。明日は一日聞き込をして、晩は町の中で異変がないか探索だ。って言いに来ただけだ」


「ああ、その件の段取りか。明日の晩から夜明けに事件が起こるだろうって言ってたな。うろうろしてみるか」


「そうだ。待ち合わせは宿のフロント。夕方の鐘が鳴るころ」


 「了解」と短く返事をしてドアを閉めつつ、あたしは明日の予定を考える。


 役所はこいつが行くだろうから、茶店で聞き込みをしつつ、早い時間だが酒場にも行こうかな。

 ルイスからシゴラエ村の火事の犯人がこの町に居るって聞いたし、そうだな、浮浪者から詳しい事情を聞いて回るのを中心に……



 ダンっ!

 

 閉まる直前、突然ドアの隙間に四本指がかかった。


「んな!?」


 慌ててドアを開く。


「おい! 指詰めてないよな!?」


 いや、あたしの指じゃないから別に詰めてても良いんだけど。

 リヒトの顔を見ると涼しい表情だったので、セーフのようだ。ちょっとホッとした。


「なんだよ。指より声だせよ! ゆっくり閉じたからセーフだったけど、タイミング悪いと指挟むぞ! 痛いんだぞ指は!」


 指を詰めた時の痛さを思い出して身悶えすると、冷静な声が頭上から降ってきた。


「言い忘れてた」

 

「おや珍しい。何だ?」


 リヒトはドアから手を離した。


「焼失した村の事は俺が調べる。お前は別の噂がないかを確かめろ」


「ほう? いいけど、なんでまた?」


 聞き返すと、苦々しそうに「チッ」と舌打ちをされた。


「分からないか? この町の範囲は狭いし、噂もそこまで多くなさそうだ。だったらネタが被る率を少なくして効率をあげる為には、違う内容を追ったほうが良いだろう?」


「確かに。分かった、そうしよう」


 あたしは納得して頷きながら、もう何か忘れたことはないかと嫌味っぽく尋ねた。リヒトは無言で去った。もう話すことはないと態度で分かりやすい。


 最初はムカついたが、慣れてしまえばなんとも思わないものだな。


 なんだか自分自身に感心しながらドアを閉めて鍵を掛ける。

 

 よぉし。入浴してゆっくり休もう。

 明日は不足分の携帯食料とお茶を買いに朝から動くぞ!


 それなりに柔らかいベッドで横になり、瞼を閉じて眠りについた。



次回更新予定は木曜日です。

面白かったら次回も読んでみてください。

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