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わざわいたおし  作者: 森羅秋
――久しぶりの親父殿――
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親の心、子迷惑⑥

 食事が粗方終わると談話が始まる。話の中心はあたしの昨晩の行動であった。


 リアの森まで採取していたと告げたら、クルトが吃驚してキラキラとした目を向けてきた。にやにや笑っていたのが長殿、微笑むネフェ殿。そして異様なモノをみる目つきでこっちをみているリヒト。


 クルトから『どうやって行ったのか』、『何を取ってきたのか』などの質問が沢山飛んでくるので一つ一つ答えた。

 デザートすら食べる暇がないほどである。


「すごい……モノノフってこんなにすごいんだ……」


 クルトは感激したように目をキラキラさせている。

 やっと質問が終わったのでデザートを食べよう。果物の果肉を混ぜたゼリーだ。美味しい。


 他のみんなは食べ終わっているが、ゆっくり味わって食べさせてもらおう。


 のんびりとデザートを楽しんでいる最中、長殿が「そうそう」と話を切り出した。


「リヒト、クルト、二人にお使いを頼もうと思っている」


 リヒトとクルトの背筋が伸びた。リヒトはお茶を飲むのをやめて、クルトは口の中に入っていたゼリーを急いで飲みこんだ。「なんでしょう」と二人の声が重なる。


「昨日の集会で知ったんだが東側の海岸に妖獣が出没したらしい。二人で退治に行ってくれないか?」


「妖獣?」


 リヒトが眉を潜めながら繰り返すと、長殿はにこやかに笑った。


「巨大なタコだって」


「俺だけならクルトが来る意味が………。ああ。クルトがメインで俺がサブですか」


 長殿が頷く。


「クルトもそろそろタコの妖獣くらい一人で倒してもらいたいと思ってね。君は万が一の保険。クルトが危険だと判断したら手を出してあげて」


 長殿の目がクルトに向かう。


「クルト、君に退治を任せる」


「わ、わかりました! 必ずや達成してみます!」


 緊張した面持ちでクルトが力強く返事をしてから、バッと横を向いてリヒトに頭を下げた。


「兄上、お手数でしょうがサポートをよろしくお願いします」


 リヒトは分かったと短い返事をする。


「出没目的時間が昼前だから、まぁ、朝食を食べてから出発したらいいんじゃないかな?」


 長殿の言葉に二人は頷く。


 んー。軽い口調で提案してるけど海洋生物系の妖獣って結構強いんだよな。


 水が舞台だから相手の独壇場になるし。足場もない、水中呼吸できない人間だと引きずり込まれただけでアウト。タコとか親父殿もわりと嫌がるやつ。

 アニマドゥクスだからあたし達とは違う戦い方なんだろうな。


「村に出没する妖獣は子供達の修行相手だ。手練の指導の下、戦闘経験値をあげていく。まぁお前のところも同じだ。ことらは遠距離攻撃で確実に殺せる。海の妖獣に後れを取ることも少ない」


 リヒトが小声でボソッと教えてくれた。

 あたしも小声で応える。


「なるほど。こっちは奥義か弓矢がメインだから水という壁があると威力が落ちる。里のやつらあんまりやりたがらないんだよ」


「お前はできるのか?」


「ある程度は出来るって知ってるだろ。でも極力水中は避けたいね。空中の方がまだ楽だ」


「なら今度は水中と空中でやってみるか」


「ちょっ。人の苦手フィールドに引きずり込もうとするなんて人でなしか」


「フィールド変更は俺も修行になる」


「そうじゃねぇよ。水中も空中もあんたの方が得意だろう?」


「だから提案してる」


「この野郎……」


 こそこそと言い合いをしていると、クルトから困惑した視線が飛んできた。

 おおう、邪魔したみたいだ。

 あたしがすぐに口を閉じると、リヒトは話に戻った。


「わかりました。食事のあとすぐに出発します」


「美味しそうなら持って帰ってね」


 ネフェ殿がすかさず主張する。うん、タコ美味しいからね。分かる。


「わかりました。鮮度を落とさず倒します」


 クルトがまだ緊張した面持ちで返事をする。

 これは戦闘に緊張しているのか、鮮度を落とすとネフェ殿が怖いから緊張しているのか、どっちなんだろうな。


 硬くなったクルトの表情をみた長殿が笑いだした。


「今から緊張していたらヘトヘトになってしまいますよ。緊張は現場に到着してから。それ以外は肩の力を抜いて。リヒトがいるんだから気負わずにやってみなさい」


「は、はい!」


 クルトはびしっと背筋を伸ばして大きく返事をした。

 初々しい反応に長殿とネフェ殿は苦笑してリヒトは失笑した。

 馴染みのある光景だったのであたしは「ふふ」と小さく笑ってしまう。


 こうして和やかに食事が終わった。

 入浴を済ませて部屋に戻ってきたあたしは、布団にもぐって目を瞑った。


 リヒトとクルトは退治に、ネフェ殿は買い物なので、明日の午前中は長殿だけだな。紋の書物を借りにいくのを忘れないようにしないと。


 それにしても親父殿は相変わらずだ。二週間後に会えると思うと嬉しさがこみあげて「ふふ」と笑いがこぼれる。


 修行してもらえるのも約一年ぶりだ。腕が落ちていると言われないといいんだけど。


 スートラータエリアに行くなら修行付けにならないといけないが、でも一日くらいは家族でのんびり話したりご飯食べたりしたいな。親父殿に雪玉ぶつけたいし。


 早く時間がすぎないかなと思っていると凄く興奮してしまって、その夜はなかなか眠りに落ちなかった。



読んでいただき有難うございました!

次回更新は木曜日です。

物語が好みでしたら何か反応していただけると創作意欲の糧になります。

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