迷子らの盗賊捻り③
三日目、まだヂヒギ村へ続く道に到着していないが、川を発見したので方向は正しい。あとは歩いて道に出るだけだ。
鬱蒼と茂る森を延々と歩いていると、
「見つけたぞおおおおお!!」
盗賊風貌の人間が三人、武器を手に持ち勢いよく茂みから飛び出してきた。
怒気が強かったので獣かと思ったら人間だった。
盗賊はどれも皆薄汚れて、擦り傷や打撲による内出血が酷かった。
「おぅおぅ! この前はよくもやってくれたな!」
中央に立っている中年の、この中ではリーダー格っぽいおっさんが、ロングソードをあたし達に向けつつ牙をむいた。
「おかげでこっちは仲間と合流できてないんだ!」
「今度は命をいただくぜ! 覚悟しろ!」
おっさんの言葉に続いて、薄汚れた中年と、この中では若い中年が声を張り上げ、武器を振り上げながら攻撃を仕掛けてくる。
あたしは頭を掻いて、それから近眼のようにじぃぃぃぃと凝視した。
「誰だっけ?」
どっか出会ったかな?
「どりゃあああああ!」
思い出す前に、雄叫びを上げて切り込んできたので、かわして鎧の上から拳を叩き込んだ。
「ぐは!」
闘気術・風波の一手。
闘気で振動を与えて内部の臓器に影響を及ぼす、母殿の得意技だ。
刀を抜けない場合、動きを止めるだけの場合、あと命を奪う必要のない場合はこれが使い勝手は良いんだよな。
頭部に当てれば脳震盪、下手したら脳血管破裂するから危険だけど。
「が!」
「うご!」
残り二人も同じ手で倒した。
「うーん」と呟き悶絶している三人を上から見下ろす。見覚えがあるような、ないような。全然思い出せないなぁ。
「まあいいか。出で立ちからすると盗賊だし、慰謝料にお金くすねとくか」
「お前………まぁ好きにすれば?」
リヒトは呆れながらも同意しつつ、倒れている中年の一人を踏みつけて前に進む。
あたしは懐から財布袋を見つけて銅貨十枚を取り出し、跨いで先に進んだ。
銅貨十枚で慰謝料になるんだから安い物である。
鬱蒼と茂る森をまた延々と歩いていると、誰かが茂みから飛び出してきた。
今度は五名。男女入り乱れたパーティーだ。
否、盗賊か。先ほど遭った盗賊と同じようにボロボロである。
「見つけたぞ! 死ねええええええ!」
「よくもやってくれたわね!」
「先手必勝!」
「死体にしてから金品奪ってやるぜ!」
「覚悟しな! ナイフの餌食にしてやる!」
問答無用で一斉に襲ってきた。
今度は人数がちょっと多いので、拳ではなく、鞘に入れたままの刀で応戦した。
武器を振り上げる盗賊の脇をすり抜けながら、胴に衝撃を与える。あたしが盗賊達を通り抜けると、全員が白目を向き、地面に沈んで悶絶した。
五人全員戦闘不能にした所で、あたしはまたマジマジと顔を確認した。
覚えてないや。でもなんか見覚えはある。
「うーん。やっぱり見覚えあるんだけど、誰なんだろう?」
「……」
「まあいいか。戦利品頂こう」
盗賊の懐を漁って銅貨十五枚を入手すると、リヒトは呆れたような視線を向けてきただけで、何も言わなかった。
鬱蒼と茂る森をまだまだ延々と歩いていると、誰かが茂みから飛び出してきた。
盗賊は三人。
全員、どっかで見たような姿をしている。
「またこのパターンか!」
思わず叫びながら、盗賊たちが飛び出した瞬間に懐に駆け寄り、鞘に入れたまま刀を旋回させ顎にヒットさせた。
「が、え?」
「あ?」
「ぐ」
セリフを言う前に、男性一人と女性二人が背中から地面に倒れ気絶した。
あたしはしゃがんで彼らを確認する。同じ人間が同じ行動を繰り返しているのかと思ったが、人間が違うのでループではない。
盗賊の装備は似ているので、出遭った盗賊は仲間だと推測できる。仲間の敵討ちで次々現れるのだろうか。
だとしたら、妖獣と同じだな。
「もしや。ここは同じような行動パターンをとってしまう魔性の森か」
「違う」
「そうか」
頷きながら振り向くと、リヒトが関わり合いになりたくないと距離を取った。
「なんだよ」
「お前の記憶能力は鳥頭レベルだとドン引きしている所だ」
「なんだよそれ。喧嘩売ってるのか?」
「喧嘩は売っていない、事実だ」
リヒトから悪意は感じない。それどころかお前大丈夫かという憐れみが感じられる。
対応しにくいな。
「なんだよそれ。まぁいいか。戦利品は、っと」
あたしは盗賊の懐から銅貨五枚の迷惑料をいただいて、先に進んだ。
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