表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が死ぬかは君次第  作者: 司馬えい
1/6

第1話 割れ物の信用

小説って書くの難しいですね。


ゥウウウウゥゥゥゥ……


 雪がしんしんと降り厳しい寒さが身に染みる12月の夜。救急車のサイレンが赤い蛍光灯と共に、町中を震わさんばかりに響いている。



ーー俺、何してんだっけ?ーー


 何かを囲む集団の中に俺、滝島翔はいた。


ーー…ていうかすごい人混みだな。何かイベントでもやってんのか?ーー


 俺は何かを囲む人混みをかき分けると、そこには一台の救急車が止まっていた。

 ちょうどバックドアが閉まるところだった。


ーー誰か怪我でもしたのか?ーー


 と様子を見ていると、救急車から少し離れたところで薄く積もる雪が真っ赤に染まっていて付近には抉れた雪。そして何人もの警察官が忙しく動き回っている。


ーうわぁっ。、、、これは事故でもあったのか?ー


「やばくない?人が轢かれたんだって」


 野次馬の中からそんな声が聞こえた。

 しばらくその声に耳を傾けているとどうやらここで男の人が子供を庇い、車に轢かれたらしい。


ーー大変だな…ーー


 俺はまるで他人事のようにそう思った。


ーーまあ、実際他人事だしな。ってこんな事してる場合じゃねぇ!ーー


 俺は大事な用事を思い出した。


 今日は1年前から付き合っている彼女、鷺ノ宮美梨の誕生日なのだ。

 彼女と言っても俺らはまだ高校生。俺と美梨は清い交際をしているつもりだ。俺はね。


 自分で言うのもなんだが、俺はヘタレだ。

 キスも交際したての頃にしただけ。しかも軽いフレンチキスを一回。その先なんてとんでもない。

 いつしかヘタレを優しさと勘違いする日々が続いていた。

 そんな俺でも、何も不満を漏らさず毎日一緒にいてくれる、そんな彼女が大好きだった。


ーーでもそんな俺だから…だよな…ーー


 俺今にも胸が張り裂けそうな気持ちになる。


ーーいや、彼女を信じよう。そしてこれを…ーー


 先週買っておいた彼女へのプレゼントがポケットに入ってるかを確認し、目的地へと急いだ。




***

 



 それから1時間後、俺は彼女の家をその近くの電柱の後ろから伺っていた。

 傍から見たら、俺の行動は不審者に見えるかもしれない。でもこれにはしっかりとした理由がある。

 

ーー杞憂だったらいいんだけどな、本当に…ーー


 俺はプレゼントをポケット越しに軽く触れる。


 というのも先週、美梨の誕生日に一緒に過ごそうと彼女とデートの約束していた。

 しかし、デートを楽しみにしていた俺に、昨日の夜、いきなり彼女からメールが届いた。



『ほんと直前でごめんねー!ただの風邪みたいだから安静にしてれば問題なしっ!お父さんいるから心配しないでー!だからまた今度デートしよっ!』


 すぐに彼女の体調を気遣うメールを送り返したが、


ーー美梨、頼むから浮気が俺の気のせいであってくれ…ーー


 この一回で彼女の浮気を疑うのは彼氏としてどうなんだと思うかもしれない。

 しかし俺はここ最近、デートをするたびに断られている。

 先月の付き合って1周年記念日とか、先週の俺の誕生日とか……流石に酷いと思わないか?


ーー学校で一緒にいてもあいつずっとぼんやりしてんもんなーー



 ここ最近彼女は、俺と一緒にいてもいつも他の何かに気を取られているのか、ぽわぁとした顔をしていた。


 

 例えば先月、彼女と昼休みに一緒に昼食をとっている時、彼女は俺のことを忘れているかのようにずっと校庭を見ていた。

 彼女の視線の先ではうちの学校のサッカー部が昼休みの時間を使ってサッカーの練習をというより遊んでいた。

 俺がぼうっとしてるけど大丈夫か。と聞いても彼女から返ってくるのはやはりぽわぁどした返事だけ。



ーー今考えてみればあの時からだったのかなーー



 そしてさらに例えば先月のことだ。

 彼女に一緒に帰ろうと言っても用事があると断られた。何を思ったのだろうか、俺は帰ったと見せかけて彼女を驚かしてやろうと校門で彼女が出てくるまで待った。

 しかしなんと彼女はサッカー部のエースの宮田悠太と一緒に笑顔で談笑しながら下校していた。

 その時、俺は驚いて思わず近くの電柱の後ろに隠れてしまった。

 あれ?俺、彼氏だよな?



ーーでもなんであの時宮田と……やっぱそうなのか美梨…あーっくそっ!ーー



 俺は、イライラするあまり思わず暴言を吐いてしまう。



ーー美梨はあの時からぼうっと校庭を見てたけど、あれって、宮田だったのか……でも結衣は信じてやれって……ーー



 結衣は俺の幼馴染みだ。それも幼稚園時代から14年も続く。彼女は俺が困った時はいつもそばにいてくれた。優しくて、凛々しくて、頼り甲斐もあって、俺は彼女のことを姉のように慕っていた。

 実際、ここ最近の美梨についても相談していて、結衣はこう言っていた。



「翔、とりあえず美梨を信じてみて。それでもし、ほんとにそうなら、遠慮なく私に相談していいから。これが、うちわたしのけじめ」



 と言ってくれた。



「わ、わかったけど、結衣なりのけじめって?」



「うっ、いや…なんでもないっ!とにかくそういうことだからっ!」



 最後の言葉の意味は結局分からずじまい。


 でも結衣のおかげで今も俺の心が保っていると言っても過言ではない。



ーーあぁ美梨、本当に好きなのに…それでも信じきれていない自分がいるーー



 最初に告白したのは美梨だ。


「滝島くん、ずっと前から好きでした。私と付き合ってください。」



 その時俺は特に付き合っている人はおらず、断る理由もないためその場の流れで彼女と付き合うことになった。


 その時俺は気にしていなかったが、美梨は贔屓目抜きに、可愛くて、愛想が良くて、スタイルも抜群で、でも少し我儘。

 でもそれを引いてもあまりが来るくらいに彼女は魅力的だった。


 そして付き合っているうちに俺は彼女に惹かれ始めたのも事実だ。

 学校のある日はほぼ毎日一緒にいてくれた。それを返すように俺が美梨にできることはしてあげたつもりだ。


 だから誤解であって欲しい。



ーーもしも、美梨の浮気が俺の誤解だったら、俺が疑ってたことを正直に話そう。そして謝って、このプレゼントを渡す。でももし…ーー



 そう思いながら、俺は無意識にプレゼントをポケット越しに握っていた手に力が入った。


 そんな俺の覚悟を見届けたかのように、大雪も大分収まっていた。



***



 それから1時間が寒さと格闘しながら待っていると、ついに美梨の家の玄関が開いた。



 そこからまず美梨が出てきた。

 そしてどうやら彼女に続く誰かがいるらしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 怖いながらも、その結果を追求せざるを得ない!さて次回どのような事実が現れるのか?非常に楽しみで、予想にふるえて待ってますから!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ